”名も知れぬ人たちへ”・・・【承9】

・・・聞く勇気を持たない。・・・
検査の日・・・
血液検査・レントゲン・CT・MRIなど諸々の検査がある。
妻の病室から車イスで各検査室を回る。
看護婦さんが一緒に回る。

車イスを押しながら看護婦さんが妻へ,首を斜めにし聞こえるように言った。
「だんなさんに愛されているんですね。こんなに心配してもらえて・・・」。
妻も私も顔が赤くなってしまった。"なっ,なんてことを言う人なんだ"。
『愛』 という言葉を私は久々に聞いた。

"そう,確かに私は妻を愛している"。
付き合い始めてからだと,もう19年が経とうとしている。この年月にいろいろな人と出会っているが(女性ですが)妻がやはり一番。
私の携帯電話の待ち受けは"妻と娘"の写真だ。
"愛している"とは面と向かって言えない,そんな世代の私だ。

妻は輸血して大分体力を回復させていたとはいえ,何種類もの検査を受けていると「疲れたーぁ」と一息ついた。立ったり座ったりの繰り返し,各検査室の移動など激務かもしれない。
私ですら,こんな検査を受けたことがない。

やはり,"まずい病気なんだなぁー"と再度認識した。
一緒の看護婦さんに「この結果はいつでるのかなー」ってさりげなく聞いてみた。
もちろん,妻が検査している間に。
「私もわかならいですけど,たぶん来週いっぱいかかるのかな」と。

・・・検査の結果がこわい・・・
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