”名も知れぬ人たちへ”・【転2】

・・・これがホントの家族・・・

三人でそばを食べてから,今度はお世話になった人たちにささやかな贈り物をと思いムーブを走らせた。
8月中旬であっため美味しいと言われるトウキミとメロンを求めて,市内から30分くらい走っただろうか。

ロードの右左に果物などを陳列している農家が目だってきた。
あまり遠くへ行くと妻の体に障るため右手に見えてきた販売所に寄った。
中から麦藁帽子をかぶったおばちゃんが出できた。
「どうだい,このキミ美味いよ。自慢のキミだよ」と得意げに話す。
たしかに大きく立派なキミ,この地では結構人気のある種類。
そのキミを10本づつ箱につめたが余白があるためメロンで埋めた。
その箱を3つこしらえて,宅急便で送る手続きをした。

私の両親(男鹿)と妹(千葉)そして生みの親に送った。
妻は本当に律儀で必ずお返しやお祝いなど漏らすことがなかった。
”人ができている”というが,まあ,当たり前と言えばそれまでだが,礼儀はしっかりしていた。こんな病気をしてまでも周りの人たちに気を使う。私は感心するばかりだった。

「それこそ,退院おめでとう。良くがんばったね」
「これからも,大変だけどがんばろーな」ってバックミラーで妻の顔を見ながら言った。
いつもの席で生暖かい風を浴び,長い髪をたなびかせながら
「うん,そうだね」と返事。少し疲れたようだった。目を閉じながら深呼吸していた。
「まだ,時間かかるからゆっくり寝てていいよ」
「・・・」うなづく。

・・・退院おめでとう・・・
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