そこで、目標金額との差をどう補うかが次の課題となります。年間収支のプラスの積み上がりでその差分を埋められれば良いのですが、そうでなければ、収支を改善して、定年時の資産を目標金額に近づける必要があります。例えば、共働きを検討したり、積極的なキャリアプランを実行することで収入増に繋げられますし、定年後の再雇用、再就職も大切な収入源となります。また、子供の教育費やマイホーム計画など将来の大きな支出を再検討することで将来の収支を改善することもできます。
収支改善の結果として得られた資金の一部を積立商品に振り向けることも目標の達成には効果的です。先ほどの例で考えると、(減債基金係数表から)5%の利回りであれば約27,000円、8%の利回りでは約8,000円を毎月積み立てることで、定年時の目標金額に到達することが想定されます。さて、積み立てを始めるのであれば、確定拠出年金(個人型)への加入を優先的に検討したいところです。確定拠出年金は非課税の貯蓄・投資優遇制度で、運用期間中の運用益が非課税となるうえ、受け取る積立金も控除の対象となります。さらに、個人型の場合、毎月の掛け金が全額、課税所得から控除されることから、その節税効果は無視できない大きさとなります(毎月の掛け金の上限は、自営業者などの第1号被保険者で月額68,000円、第2号被保険者で23,000円、年額ではそれぞれ816,000円、276,000円)。
確定拠出年金のような非課税の恩恵は得られないものの、投信積立もひとつの方法でしょう。利用者の中には、ノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬も安いインデックス型投信を中心に組み入れるケースが多くみられるようです。保有期間中に継続して差し引かれる信託報酬はマイナスの複利効果を伴いながら確実にファンドの収益率を劣化させます。老後資金準備のような長期の資産形成の手段として投資信託を考えるのであれば、より保有コストの低いインデックスファンドを軸に据えたいところです。
最後に、ポートフォリオの構築では、世界の株式市場に広く分散されたインデックスファンドを中心に置くと、投資機会を広く捉えることができます。TOPIX(東証株価指数)とMSCIコクサイ(日本を除く主要先進国22ヶ国で構成される外国株式指数)の組み合わせは日本の機関投資家がグローバル株式投資のベンチマークとして長く利用しています。さらに新興国株式指数を加えてよりカバレッジの広いベンチマークとするのも最近の傾向です。それらの指数を連動対象とするインデックスファンドやETFを組み合わせたポートフォリオを資産の中核に据えることは、投資機会の拡大とコスト抑制の観点から合理的な判断といえるでしょう。
最近では、厚生年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げる案が公式な場で議論されるようになりました。個人の自助努力による老後資金準備の必要性はさらに高まってきており、早期に着手する必要があります。
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ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社
ファンドマネージャー 相川雅宏
(楽天マネーニュース[株・投資]第107号 2011年10月28日発行より) ==========================================================
皆様に長きにわたりお楽しみいただいておりました「楽天マネーニュース」ですが、勝手ながら、今回の2011年10月28日号をもって終了させていただくことになりました。これまで「楽天マネーニュース」をご愛顧いただいた皆様に厚く御礼申し上げますとともに、引き続き楽天グループのサービスをお楽しみいただけますよう努めてまいります
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