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2011.03.11
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カテゴリ: カテゴリ未分類


個別株への関心の低下には、いくつかもっともな理由がある。

一つには、投資信託、特に手数料コストの安いインデックス・ファンドが普及した。この中には、ETF(上場型投資信託)の発達も含まれる。インデックス・ファンドの手数料は、現在競争の過程にあり、今後も低下しそうだ。加えて、数年前まで信託報酬が高いアクティブ・ファンドばかりだった外国株式でも手数料コストの低いインデックスファンドが登場したことが大きい。個人投資家は、インデックス・ファンドを利用することによって、手軽に分散投資の効果を享受して、機関投資家に多く劣らない運用ができるようになった。

また、投資信託の影響はインデックス・ファンドの影響ばかりではない。毎月分配型ファンドや通貨選択型ファンドのように、分配金を強調して売ることができる投資信託は、投資家に売りやすいことに加えて、個別の株式よりも手数料を稼ぎやすい。対面型の営業を行う証券会社のセールスマンにとって、今や、株式ではなく、こうした「手数料の稼げる」投資信託が主力商品だ。

加えて、個別株への関心が盛り上がらないもう一つの理由は、株価の形成に当たって、外国人投資家のウェイトが大きくなったことだろう。彼らは、流動性の高い時価総額の大きな銘柄に広範な注文を出し、目下の市場では株価の決定力が大きい。かつてのように、日本の投資家が市場のテーマを決めたり、セクター毎に物色傾向を定めたり、といったことがない、いわば無機質なマーケットになって来たので、日本の投資家にとって株式投資が馴染みにくいものになった。

また、約定スピードが上がった東証の新システムは、注文の「板」を見ながら行う、いわゆる「1カイ、2ヤリ」的な個別株トレーディングを難しくした。この影響は、個人投資家もさることながら、中小証券会社の株式トレーダーの仕事を苦しくしているようだが、個人投資家のチャンスが減っているように見える要因になっている。

しかし、以上のような要因は、いずれも、株式をポートフォリオで保有して長期投資を行うオーソドックスな投資家にとっては、大きな問題になっていないように思われる。

低コストなインデックス・ファンドがあること自体は、個別株式の株価形成にとって大きく影響する原因ではない。かつての日経平均採用の品薄銘柄のように、インデックス運用資金の拡大で株価形成が歪むなら、これは、アクティブ運用を行う投資家にとって、むしろチャンスというべきだ。外国人の売買にしても、彼らが個別銘柄をよく知らずに投資しているのであれば、アクティブ運用者にとってはチャンスの広がりを意味するはずだ。

現状は、個別株投資家が新しい株価形成の中で、どのような戦略を取ることができるかを見つけ切れていないに過ぎないのではないか。

一方、長期投資を行おうとする投資家の側でも、自分のポートフォリオの管理がどの程度できるのかという点について、問題がないわけではない。自分のポートフォリオのリスクの大きさを数値で知っている投資家はほとんどいないだろうし、投資する銘柄やウェイトを変化させたときに、これがどう変化するのかを把握しながら運用できる投資家はもっと少ないだろう。

ポートフォリオのリスクの把握が十分でない場合、自分で自信のないまま個別株のポートフォリオを作るよりも、インデックス・ファンドに投資しておく方が無難であり、運用全体が管理しやすい、ということになる。

従って、今、個人投資家に必要なのは、ポートフォリオのリスクを測ることを中心とした、ポートフォリオの管理ツールだろう。ポートフォリオの管理ツールがあれば、かなりの程度安心して株式ポートフォリオを持つことができる。ある程度長期間にわたって株式を保有するような運用スタイルであれば、東証のシステムが高速すぎて、画面に見えている板が正確でないといったことは、何ら問題にならない。

加えて、インデックス・ファンドにも弱点がないわけではない。銘柄の入れ替えや、ウェイト付けの変更の際に、市場参加者にこれを利用されることによるインデックス自体のパフォーマンス低下の影響の心配は完全に払拭されたわけではない。インデックス・ファンドとアクティブ・ファンドの手数料の差を埋めるほどの大きさではないようだが、現場のインデックス運用者に聞くと、これらの悪影響は今も存在している。

ツールやアイデアが少々補強されたなら、という条件付きでだが、個別銘柄を自分で選んでポートフォリオを組んで運用する株式投資は、今後、十分復活し、普及する可能性がある。付け加えると、この運用スタイルを上手くハンドリングすることができれば、効率が良く、可能性があるだけでなく、「面白い!」という長所がある。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第94号 2011年3月11日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.03.11 16:40:07


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