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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.05.27
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お金の運用全般を解説する本を久しぶりに書いた。『 お金の教室 』(NHK出版)というタイトルで5月下旬に発売される。

ここのところ、内外のインデックス・ファンドを組み合わせて投資する方法を解説するような、「こう投資すればいい」という結論を説明する入門書を書いてきたが(『 超簡単お金の運用術 』、水瀬ケンイチ氏と共著の『 ほったらかし投資術 』。共に朝日新書)、『お金の教室』は、お金を扱う考え方一般を説明する、マニュアルあるいは教科書というよりは、副読本型の本だ。

タイトルに含まれる「教室」という言葉にも表れているが、筆者が、獨協大学で学部の学生(2年生から4年生が対象)を相手に講義している「金融資産運用論」の授業内容を生かして書いてみた。

大学生を相手にお金の運用について授業をしてみると、リターンとリスクから始めて、投資の理論を一通り説明し、アセットアロケーションから個別の資産の運用方法に至るという通常の投資テキストの流れ(証券アナリスト試験用のテキストがほぼこの流れだ)では、学生にとって必要以上に難しく感じられるらしいことが分かった。これは、多分、一般の大人を相手にする投資教育でも同じなのだろう、と思われた。

そこで、授業では、まず、学生が新社会人になった時点くらいを想定して、個々の金融商品(「預金」、「株式」、「生命保険」といった大まかなくくりで)の主な性質と扱い方の注意を説明して、実用的な関心の下で、金融商品をイメージしてもらうことから始めることにした。

次に、お金の問題を考える上で不可欠な「基本的な考え方」について、具体的な例をあげながら「なるほど!」と理解してもらい、最後に、まとめとして運用計画の作り方を考えるという構成が分かりやすいのではないか、というのが、まだまだ試行錯誤中ではあるが、現時点での授業(半年、約15回でワンセット)の構成案だ。

この中で、お金の問題を扱う上での「基本的な考え方」を、実感を伴って理解してもらうための副読本的なテキストがあると便利だと思うようになり、これは一般向けにも役に立つのではないかと考えた。これが、『お金の教室』を執筆する動機となった。

お金を扱う上でのいわば「基本思想」として筆者が重要だと考えたのは、以下の5点だ。
(1) 損得の計算
(2) 時点が異なる価値の比較方法
(3) 「市場」というものの性質
(4) ビジネスとしての運用の構造
(5) リスクとの付き合い方

まず、お金には扱い方によって厳然と損得があり、取引にあっては、相手が儲けると自分が損をするという関係がある。従って、お金の損得に敏感になり、正確に計算する習慣が重要だ。

次に、たとえば「家を買うのが得か、借りるのが得か?」といった人生における重要な経済選択では、異時点の価値を評価する方法を知ることが重要であり、きっちり結論が出ることを知らなければならない。

また、市場には参加者の行動を通じて情報が反映し、誰にとっても市場で「うまいことをやる」のは難しい一方で、市場が常に正しいわけでもない、といった「厳しくも、しかし、いい加減でもある」という市場の「感じ」(敢えて言葉を当てはめると「機微」)を知っておくと、お金の運用だけでなく、経済の理解も深まる。

加えて、運用や金融の世界は「ビジネス」として営まれていて、顧客としての投資家は手強いビジネス主体である金融業者の側が何を考えているかを知らなければならないし、敢えて言えば、「金融マーケティングを解毒する」予防接種が必要だ。

最後に、不確実性が大きな金融の世界でお金を現実的に扱うためには、リスクがあることを自覚して、どこまでなら「無難か」という見当を付けながら、効率性を追求する加減を学ぶことができれば、この投資家は、自分でお金の運用の問題を解決することができるだろう。

住宅ローンの話や、株式投資入門、バブルの解説や、退職金の運用、といった例であれこれ説明してみたが、今回の本の「思想」を要約すると、以上の5点だ。これらについて、具体的によく分かるし、他人にも説明できるくらい分かる、という人は本書を読む必要はない。

一方、上記の中の一つでも、もう少しスッキリ分かりたい、と思われる点がある方は、ぜひ、書店で本書を手に取って見て欲しい。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第97号 2011年5月27日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2011.06.16 12:32:11


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