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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.10.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
ご愛読頂いているこのメルマガは、残念ながら、今回と次回をもって配信が終了する。そろそろ最後を意識して、読者の記憶に残って、長く役に立つ内容をお伝えしたい。今回は、お金の運用を行う上で重要な心得を五つお伝えしよう。

その一、「よく分からないものは決して買わない」

金融商品は数が多い。しかも、その数が今も増えつつある。今後も増えるだろう。こうした環境でお金を運用する場合、最も大切なことは、自分が完全に内容を分かっているもの以外には大切なお金を投じないことだ。

完全に分かっているとは、商品の内容を曖昧な点なく他人に対して説明できてどんな質問にも答えることが出来るくらい理解していることだ。どのような時に、どのような利回りになり、どんなリスクがあって、売り手は実質的にどれだけ手数料を取っているか、といったことが、金融商品を購入する前にはクリアに分かっていなければならない。

商品の内容をクリアに理解していること、且つその条件に納得できることが、金融商品を購入してもいい必要十分条件だ。

その二、「セールスを断っても自分は損をしないことを知る」

多くの金融商品は、顧客が自分で探して見つけることよりも、金融業者のセールスによって、その存在を知ることが多いだろう。

しかし、セールスマンから商品の紹介・説明を受けると、「自分は話を理解した」ということを示したくて、時間を使ってくれたセールスマンに恩義を感じて、あるいは、「今の機会にこの商品を買わないと損をする」といった心境に陥って、商品を買わないと悪いとか、勿体ないとかいった気持ちになることが多い。だが、これらの感情は、いずれも、セールスマンがそのように仕向ける意図を持ってプロフェッショナルな努力をした結果生じるものだ。

しかし、金融商品は、株式市場、債券・金利市場、為替市場といったフェアなマーケットから「素材」を持ってきて売り手の利潤を実質的な手数料として乗せて売っているものだ。その時にセールスを断ったからといって、マーケット変動による結果論的な損は将来あり得ても、これを確実に予測できる市場参加者は(ほぼ)いないのであって、その行為自体が「意思決定として損」だということはあり得ない。

つまり、申込期間限定で売っている商品であっても、このセールスを断った時に、その時点では顧客の側は意思決定として損をしない。確実に損をするのは、時間と手間を掛けたセールスマンだけだ。

付け加えると、金融商品を購入する顧客は、セールスを断った他の客にセールスマンが費やした時間と努力の対価も支払わなければならない仕組みになっている。

もう一歩踏み込んで言うと、そもそも対面営業のセールスマンの話を聞くこと自体が、時間の無駄であり、愚かなのだ。「自分で調べて、ネットで注文する」という行動を強く推奨する。

その三、「金融商品は実質的な手数料で選ぶ」

中身の性質が似た金融商品を購入する時(たとえば「国内株式」の投資信託を買う時)、商品の優劣を決める際に最も重要な要素は、商品の「実質的な手数料」だ。手数料は「確実な(基本的にリスク・ゼロの)マイナス・リターン」だ。

前述のように、運用の中身はフェアなマーケットで行われるものだ。プロといえども他のプレーヤーの平均に勝つことは簡単ではないし、それが高い確度で可能な情報や判断力を持っているなら、自分のためにその情報なり判断力を使うはずだ。

少なくとも同じアセット・クラスの商品に投資する場合、最重要な要素は、商品の実質的な手数料であり、過去の運用実績や、商品や運用会社のブランドなどではない。結果に影響するものであって、自分が影響を及ぼすことができる要素に集中しよう。それは、「実質的な手数料」に他ならない。

たとえば、今のところ、株式で運用する商品であれば、手数料差を考えると、インデックス・ファンド以外の選択肢は考えにくい。

その四、「分散投資のメリットを知る」

分散投資でリスクが低下することは広く知られている。分散投資は、投資家自身の努力によってポートフォリオを改善する手段であり、これを利用しないのは「もったいない」。ここでも、自分が影響を及ぼすことができる要素に集中することが大事だ。

結果論だけで見ると、集中投資こそが投資の醍醐味であり効率性も高いかのように思いがちだが、いかんせん将来は不確実だ。分散投資の効用を軽視しない方がいい。

但し、分散投資は、投資の中身が実質的に分散されていることが大事なのであって、同じような中身の金融商品を複数持つような分散は無用だ。たとえば、MSCI-KOKUSAIに投資する外国株のインデックス・ファンドに投資すれば、一つの商品に対する投資で、実質的に20カ国以上に先進国の株式に投資できる。

その五、「自分の買値に拘らない」

筆者が長年投資家の行動を観察していて、投資家が合理的な投資行動から遠ざかる最も大きな理由は、投資家が「自分の買値」に拘る傾向だ。

1,000円で買った株式が900円の時、あるいは、1万円で買った投信が9千円に値下がりした時、人はしばしば「今売ると損が出るから売れない」と言う。

筆者は、決して頻繁な売買を推奨する訳ではないが、自分の買値に拘ることで、リスク資産への投資を減らしたいのにそれが出来なかったり、お金が必要なのに保有している金融商品を売却できなかったりする人が多いことには疑問を感じる。

お金の運用で(実は人生全般で)重要なのは、過去に起こったことではなく、これから起こりうることのみに意識を集中して意思決定することだ。この際に、邪魔になるのが、自分の「買値」ではあるが、これを無視して、将来に向かって何がベストかを考えることが重要だと申し上げておく。

初心者向けの心得のつもりで選んだのだが、自分の買値への拘りは、プロでも捨てられない場合が多い。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第106号 2011年10月11日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.10.17 09:19:49


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