天空の陽の下で

天空の陽の下で

小説(駄文)2




――――――さてさて皆様、ある1つの古いお話を致しましょう。あるお城にお妃様を先に亡くした王女が住んでいました。王女の歳は15、6で、もうどこかの国の王子と結婚してもいい年頃です。王様は求婚してくる王子をいつまでも丁重に断っている王女がとても心配で仕方ありません。そこで、王様は考えました。考えた結果、町中にお触れを出したのです。
 そのお触れとは――――――

「オーイ、あのお触れ見たか? 王様が王女の結婚相手を探してるってよ。しかも、金持ちの王子だけじゃなくて優秀な奴なら考えてやるってよ」
 と、走ってきた子ギャル風のペルシャ猫(雄)が息せき切って言いました。この国では、人間だけでなく動物も人間同様に生活しているのです。
「本当か? おい、どうする?」
「そうだな、到底俺らには無理だぜ」
「へ? なんで?」
「あの~、俺他のとこ行くからもう行くな。じゃあ、ばいび」
「ああ、ばいび。だって考えて見ろよ。俺らに一体何が出来るって言うんだ? あるっつったら畑仕事だけだぜ」
「それもそうだよなぁ。王女は美人でとってもゴオオオオオオオオオオジャスなK姉妹に匹敵するくらい綺麗だけど雲の上の人だしな。しかし、おまえって案外現実主義者だったんだな」
「ほっとけ。それより仕事しようぜ」
「だな。仕事、仕事」
 といいながら農夫たちは畑仕事を始めました。
 ところで、もう気付いた方もいるでしょう。そうです。王様が出したお触れとは、

『次の者に王女の夫となる権利を与える。
  1 王女の出す問題に答えられた者に王子の称号を与える
  1 己を優秀と思う者であれば、貴族も農民も何もない無礼講である
  1 予選会で最後まで残った者だけに権利がある
明朝、城の門で受付を済ませてから中庭に集まれ。
そこで予選会を行う。                    以 上』

 というものでした。お触書を見た農民や動物は、自信のある者は畑仕事をほっぽって城に向かって疾走していきます。自信のない者は諦めて仕事に戻っていきました。
 さてさて、どんな人が王女の問題に答えられて、王子の称号を貰い、夫となる事が出来るのでしょうか。

 そのころの城では、王女が王様に抗議しておりました。
「お父様、どうしてあのようなお触書を出したのでございますか? 私は今誰とも結婚したくありません」
 王女は自分の意見を聞かずに勝手にお触書が出た事が許せませんでした。
「しかし王女よ、もう15歳だぞ。他の国の王女たちは結婚しているのにお前は何故したくないのか?」
 他国では、15歳になった王女はみんな結婚していることはわかっていました。それでも王女は結婚したくなかったのです。
「それは、はっきりしません。でも、もう一度あの人に逢うまでは、どうしてもしたくないのです。わかった下さい」
「あの人? あの人とは誰のことだ?」
「名前までははっきりとは覚えていませんが、小さい頃に会った人です。・・・・・それより!」
 王様をごまかすように王女は必死に訴えています。
「あのお触書を取り消してください」
「駄目なものは駄目だ。明朝、予選会を行うことになっておる。今更取り消すなんてことは出来ん」
「お父様の権力で何とか・・・・」
「ならぬ!」
「そんな・・・・」
 けれど王様は、本当に結婚を嫌がっている王女が不憫に思えてきました。そこで、
「そんなに嫌ならば、誰も答えられないような問題を出すがいい。そうすれば、お前の夫になる人はいないであろう」
 と提案したのです。王女に笑顔が戻りました。
「お父様、ありがとう。じゃあ、うんと難しい問題を考えるわ。そして、誰も私の夫になる人はいなくなるの」
 王女は王様の、王様は王女の罠に引っかかってしまいました。あのように提案しなければ王女は「絶対、お触書を取り消してっ」といいます。そこで、まずは、王女に予選会実行を賛成させ、王女が参加者にどんな難題を出しても答えがわかるようにしようというのです。王様は、王女を不憫に思ってはいても内心はやはり結婚して欲しいのです。頭のいい王女は王様の本心を見抜いていました。そこには、二人の見えない攻防戦が繰り広げられているようでした。しかし、どんな人々が集まっているかは王様も王女も知りません。すべては明日から始まるのです。

 農村と街との境にあるバー『デジャヴ』に、みすぼらしい格好をした熊のような男が入ってきました。その瞬間、店にいたバーテンはもちろん客までもが、はっと息をのみました。
「熊みたいで怖いわね」「普通あんな格好で来るか?」などという声がひそひそと聞こえてきます。聞こえているはずなのにまるで聞こえていないかのように、その男はカウンターに座ると
「ヘネシーのVSOPを水割りで」
 と言いました。そういわれてもそこにいたバーテンは、新人なのか、どの酒かわからない様子です。困り果てた末、ベテランのバーテンを呼びました。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: