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(前日より続く)
再生不良性貧血
と診断された我が子は早速無菌室へ入院となりました。
病院側からは、まだ6歳なので保護者も付き添ってほしいと言われました。
無菌室の個室では保護者も 白衣と帽子にマスク
という状態で、今我が子がどれだけ免疫力が下がっているのかが分かりました。
少しして担当の先生からお話があるのでと呼び出されました。
先生は、お子さんは今とても危険な状態ですと言われました。
そして治療の方法を2つ提案したのです。
1つは今までこの病気にかかった多くの患者さんに行ってきた治療方法。この治療法は沢山の人に使われたという実績があり安全な方法ではあると言われました。ただし効果が出てくるまでが長く、それまで体がもつのかという心配があるということ。
もう1つは最新の治療方法でまだ人体には使われてない 新薬
を使う方法。
動物テストでは確実な効果が出た治療方法であるが、まだこの薬を使った人はいないとの事。
人体ではどんな 副作用
が出るか分からないが、もしこの方法で治療したいというのなら一刻も早く始めたほうが良い。ご主人と相談してどちらの治療方法にするのか決めてほしいと言われたのです。
私は急いで廊下の公衆電話に走りました。
仕事に行っている主人とは中々連絡がつかず、1秒でも 早く決断しなければ
という気持ちになっている私を苛立たせました。
ようやく電話がつながり、さっき先生から言われた事を主人に伝えました。
主人もかなり悩んでいるようでした。安全な方法をとるか新しい方法に賭けるか...
結果は、早く効かない方法では体が持たないかも知れないなら新しいものに賭けてみようという事になったのです。
私は先生のところへ急ぎました。
先生に新しい方法でお願いしますと伝えると、早速誓約書を書くように言われました。
誓約書の内容は治療をした結果、最悪の事態になっても病院に迷惑をかけないという内容がこと細かに書かれているよくあるものです。
しかしいざ署名欄に自分の名前を記入するとなると、すでに決まった事なのに『本当にこの方法を選んで良かったのか、もし副作用でもっと苦しい目にあわせてしまったら私のせいだ...万が一亡くなるような事態になったらやはり 私のせいだ
...』と悩んでしまいました。
さらに前の事まで思い出し『何故隣の子は掛かりつけの小児科に連れて行ってあげたのに、我が子は近所の内科で済ませようと考えてしまったんだろう、何故初めから掛かりつけの小児科に連れて行かなかったんだろう...』と自分を責める気持ちでいっぱいになりました。署名することで我が子の人生に大きく影響を与えるのだと思うと怖さから手が震え始めました。
手に力も入らないままやっとの思いで署名しました...
そしてただちに治療が始まったのです。
本当にこの方法を選んで良かったと思えるようになりますように... 心の中で祈りました
新薬の治療結果はデータとして細かに記録されていきました。体の変調はほんのわずかな事ももらさずに記入されていきました。
すでに輸血もしていましたが緊急時に備え子供の友達のお母さん方に病気の話をして、輸血のお願いもしておきました。
幸い皆さんとても快く引き受けて下さり、改めて人の縁の有難さを噛締めました。
先生から、もし緊急状態になったらこの病気も骨髄移植で治る確率が高くなるので HLA (ヒト白血球型抗原=白血球の血液型といわれるもの)の型が適合する ドナーを 探した方が良いと言われました。
兄弟間で4人いれば1人合うかも知れない、他人だったら星の数ほどいる人の中から1人を見つけ出すのがやっとと言われ、とりあえず3歳上の子の HLA の型を調べることに。
その結果ピッタリ適合することが判明したのです。 上の子もまだ9歳で骨髄液を採るのは可哀想ですが緊急時の安全策はとりあえず確保する事ができました。
治療を始めて3日目になると、あれほど続いた熱が下がり始め、ご飯も少ずつ食べる量が増えていきました。
ただ副作用なのか発疹が増えてきました。
先生は外来も診ているので忙しい方なのですが、少しでも手があくと必ず病室にきてくれて細かに様子をチェックしてくれました。
病状は少しずつ良くなっているのに毎日がとても長く感じられ、トイレに行く度に涙が流れました。
その涙も病室に戻るまでにすっかり拭っておかなければなりません。
我が子には重症であることを気づかれてはいけないから...
何度か背中の骨髄液の状態を見る為に、特大の針がついた注射器を腰の骨に刺すという検査が行われた事がありました。我が子は6歳にもかかわらず痛くて泣きたいのを必死に我慢して耐えていました。
本当は大きな声で泣きたかったと思いますが親の私を心配させまいとして我慢していたんだと思います。(涙)
1週間を過ぎたあたりから検査結果が飛躍的に良くなりました!
先生も大変驚き喜んでくれました。発疹も目立たなくなってきました。
それからは毎日の検査結果が待ち遠しく、体力のついてきた我が子はだいぶ起きて動ける時間も増え、これなら必ず治ると確信しました!
それからも毎日毎日先生の細かいチェックは続きました。
そして入院してから1か月が過ぎ...
先生から検査の結果血球数は正常な範囲の一番下ではあるけど、普通の生活に戻っても大丈夫でしょう。定期的に通院はしてもらうけど退院してもいいよという言葉を頂きました!
もう本当に嬉しくて嬉しくて!
本当に夢のようでした(涙)
我が子が又小学校に通えるようになった事が本当に嬉しかった!
普通に家でご飯を食べられる事が、こんなに幸せなことだなんて...
我が子の治療に全力を尽くして下さった 先生と看護師の皆様に本当に感謝の気持ちでいっぱいでした
。
その後、我が子が使った新薬は先生がデータを基に学会で発表されと聞きました。
全国の同じ病気に掛かった人達に使用して着実に効果が出ているよと通院のたびに教えられました。
通院は中学校に入る頃まで続きましたが、幸い再発することもなく成人する事が出来ました。
その子は今...
市内の総合病院で 看護師
として働いています。
自分が受けた恩を多くの患者様にお返しするために...
最後まで読んで頂き本当に有難うございました。
皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。