MURDEROUS PLOT

MURDEROUS PLOT

心地よい空間【比乃夢】



「…館脇、すまないが、放課後に体育館倉庫の整理を手伝ってくれないか。」
「は、はい!!!」
担任の森先生に頼まれ、私は放課後に、体育館倉庫へと向かうことになった。どうやら、もうすぐ体育館倉庫が改築されるらしい。
備品を、一時職員室に置いておくことに決まったので、その手伝いとして、私が見事に指名されてしまったのである。
「…でも、どうして私なんだろ。」
私は、超がつく程のおっちょこちょいで、はっきり言って、先生の役に立つというよりは、邪魔をしてしまうと思う。
それなのに、どうして、私なんだろう。腕組みをして、一応は悩む人のポーズをとってみるが、さっぱり答えは見つからない。
「ま、いっかー。」
どうせ、私は部活に入ってないし、いつも放課後は暇を持て余していたし、丁度良い暇つぶしになるだろう。
一人ごちた後、私は次の授業の教室へと移動した。



そうして、あっという間に放課後になった。空は、不気味なまでに真っ暗で、少し嫌な予感がした。
「…うー、怖いなぁ。」
荷物を持って、体育館倉庫へと走る。倉庫の前には、森先生が立っていた。
「早かったな、館脇。」
森先生は、爽やか系スポーツマンみたいな人で、結構学校中の女子から人気だ。
私は、皆みたいに彼に熱をあげている訳ではないけれど、優しくて良い先生だと思う。人気になるのも無理はない気がする。
「いえ。そんな。」
えへへ、と一応照れてみる。先生は、私に、“備品の動かし方の注意点”を告げ、そして、もう一つ重要なことを告げた。
「そうそう、お前一人では大変だろうから、野球部から男子を一人借りてきたぞ。」
「…ふぇ?」
先生は、「そろそろ来るだろう。」と言って、グラウンドを指さした。私もつられてそちらを見遣る。
すると、物凄いスピードで、何かがこちらへと向かってくるのが見て取れた。
「…。」
じっと見つめていると、それは段々と近づいてくる。よく見ていると、とても小さな男の子だ。
「やーっほー。」
私の目の前に来ると、男の子は、その真っ赤な瞳に私を映し、にっこりと笑った。私も笑う。
「…可愛いなぁ」と思った。でも、口には出さないでおこうと思う。
「彼は、兎丸比乃と言うんだ。」
「えへへ-、宜しくねー☆」
頬の下の逆三角のペインティングが、何を意味しているのか疑問に思いながら、「宜しくね」と返した。そして眼鏡を一回、人さし指で押し上げる。
「それじゃあ、先生は用事があるから一旦職員室へ戻るが、何かあったらいつでも呼んでくれ。」
先生はそう言い残すと、小走りで職員室へと戻っていった。私は、彼とふたりきりの状態になる。
「ねぇねぇ、君の名前は何て言うの?」
兎丸君は、仕事をしようとする私を呼び止め、名前を聞いてきた。「館脇まもる」と告げると、「じゃ、“まもるちゃん”って呼ぶね!!」と嬉しそうに言った。
「うん。じゃあ、私も、兎丸君って呼ぶね。」
「えー、比乃君で良いよー。」
その後、彼が何回もブーイングをした結果、“兎丸君”ではなく“比乃君”と呼ぶことになった。

森先生から手渡された体育館倉庫の鍵を使い、扉を開け、私と比乃君は中に入った。ちょっと動くだけで埃が舞い落ちる。
「けほけほ」思わず咳き込んでしまう。私はぜんそくの気があるのだ。とっとと備品を職員室へ運ばなくちゃ。
そう思った時、「あ、まもるちゃんの足元に段差があるよ。」という比乃君の注意がかかった。しかし、一足遅かったようだ。
私は既に、段差に躓いていたのである。地面と正面衝突してしまう刹那、慌てて手を地面に置いてそれを免れた。
しかし、その衝撃で、眼鏡が何処かへはじかれてしまった。途端に、周囲がぼやけ出す。比乃君は何処?眼鏡は何処?
「比乃君…。眼鏡は何処だろう。」
手で周囲を触り、四つん這いになって眼鏡を探すが、全く見つからないため、比乃君に助けを求める。
「あ、もしかしてまもるちゃん、前が見えない??」
彼は、私の様子を察してくれたらしい。雰囲気だけでしかわからないが、慌てて眼鏡を探していてくれているようだ。
「ごめんね、比乃君。余計な仕事までさせちゃって。」
彼の雰囲気のする方向へ話しかけると「気にしなくて良いよ。」と、温かみのある声が返ってきた。優しい人だなぁ、と思う。
普通なら、ちょっとは声がイライラした感じになったりとか、冷めたりするものだけれど、彼はそんな風では無い。有難いなぁ。
「ありがとう。比乃君。」
そう言うと「どういたしまして」と、またもや温かみのある声が返ってきた。やっぱり良い人だ。
暫くして「はい、どうぞ。」と眼鏡らしき硬いものと、温かい比乃君の手が、私の掌に触れた。私は、比乃君の手からそれを受け取ると、目元へと持っていく。
すると、ようやっと彼の顔を見ることが出来た。嬉しかった。人の顔が見られるということは、本当に幸せだな、と改めて強く思う。
「じゃ、仕事の続きでもしようか。」
そう言うと「うん!!」と元気な声。早速、今度こそ仕事に取り掛かる。
「これって、職員室に持って行くんだよね?」と比乃君が尋ねる。私は「うん。」と、やや短めに返事をする。
そんな遣り取りが続き、そして2時間後…。
「終わったー!!!」
「終わったね!」
体育館倉庫は、荷物も無くなり、私が掃除をしたために、綺麗さっぱりとしている。やっと終わったのだ。備品整理が。
「比乃君のおかげだよー!!!」
「ううん!!まもるちゃんのおかげだよ!!!」
お互いがお互いを褒めつつ、体育館倉庫を出ようとして、扉を開ける。
外は、もう夜の景色になっていて、雷がゴロゴロ鳴っている。雨が土砂降りだ。私は慌てて扉を閉めた。兎丸君が怪訝そうな顔をする。
「…??何かあったの??」
「外がマズイことになってるの。見てご覧?」
兎丸君が扉を開けて外を見ると、慌ててこちらへと戻ってきた。「これじゃあ、外に出たら危ないよ。」
大雨、雷のため、外に出る訳にもいかず、私達は倉庫に待機することになった。…大変なことになってしまった。
「兎丸君、お家は大丈夫なの??連絡しなくて。」
「うー。ちょっとマズイけど…。外に出たらもっとマズイしねー…。」
「携帯でも持っていれば、家族と連絡が取れるけれど、私は持ってないなぁ…。兎丸君は…?」
スポーツバッグをごそごそ漁った後、兎丸君は「ゴメン…今日は持ってきてない…。」と肩をすくめた。
密室に、男女がふたりきり…。その構図が、まさに今。とても怪しい…。恥ずかしい…。ドキドキしてしまう。
あんまり男の子とふたりきりになったこともないし、免疫とやらが無いため、何とか気を紛らわせようと話かけた。
「兎丸君、昨日何かテレビ見た?」
「あ、うん。“佐藤家の食卓”とか。」
「あ、私も見たよーそれ。“大発見”のコーナーのゲーム、面白いよね。」
「うん!!!!まもるちゃんも見てるんだー!!!!アレ、面白いよね!!!」
良かった。このままなんとかやり過ごしていけるかな。ほっとして溜息をついた、その時―――………

ごろごろ…どーん!!!!!!!!!

凄まじい音が辺りに響く。私は、恐れていた音を耳にして、思わず身を縮こまらせる。耳を塞いで、ふるふると震える。
早くどっか行ってください、雷さん!!!
隣に居る比乃君が、私が震えているのを見て「雷、怖いの?」と尋ねてきた。……バレちゃったよ…。
「う…うん…」
ああ恥ずかしい。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。もう高校生なのに、雷が怖い、だなんて。
そう思って、さらに震えていると、比乃君がそっと私の眼鏡に手をかけた。そして、それは引っ張られ、私の視界はまたぼやけ始める。
「…え??」
前が見えない。兎丸君の意図も見えない。私は、周囲に手を動かす。兎丸君が見えない。何処??
すると、私の耳を、兎丸君の手(だと思われる)が塞いだ。彼は私の耳元で「こうすれば、音が聞こえないよ。」と言った。
「あと、見えない方がリラックスできて良いんじゃないかな。」また、あの優しい声。後ろに気配を感じた。後ろから、おんぶをする時のような格好になって、
彼が耳を塞いでくれているのだと瞬時にわかった。背中から、温かさが伝わってくる。彼の温かさが、私を楽な状態にしてくれる。
「兎丸君、ありがとう。」
やっぱり彼は優しい。ちょっと前に出会ったばかりだけど、私にはわかる。彼は根っからの善人なのだ。
「どーいたしまして!!!」
そしてやっぱり、彼は可愛らしい声で、そう返してくれるのだ。


「止んだみたい!」
兎丸君の声。そっと耳から離れる、彼の手の温度。返される眼鏡。それをかけて、扉へと向かう。がらりと開ける。空は青々として、綺麗だった。
「本当だ。綺麗だね。」
ほのぼのとした空間がそこに出来上がった。うっとりと、空を眺め、そして「じゃ、帰ろうか。」と兎丸君に言う。
「うん。」
少し寂しげな兎丸君の声。…一体どうしたんだろう。
「まもるちゃん。今日、とっても楽しかったよ。ありがとね!!」
…ああ。私と別れるのが、寂しいんだ。それがわかって、私はにっこりと兎丸君に笑いかける。
「こちらこそ、楽しかったよ。色々助かったしね。ありがとう。」
そう言うと、彼の頭に手を乗せる。私よりも頭一つ分位低い彼は、にこにこと笑うと、スポーツバッグを持って外へと飛び出した。
「じゃあね。」
「じゃあね。兎丸君。」
それが、別れの合図。兎丸君は、現れた時と同じくらいのスピードで、校門へと走り去っていった。



ふたりだけのいごごちのわるかったくうかんは

いつのまにか、とてもやすらげるくうかんにかわっていた。


こんなこと、はじめて。




また、あえるといいな。







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製作時間は…大体2時間?? 



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