MURDEROUS PLOT

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蝉の声 泡沫の夢 聴こえけり【オリヂ】



この暑さは何だ。そう思い、顔を顰めた。ヒートアイランド現象の所為ならばこれは自業自得というヤツだが、それにしても暑すぎる。裁判で訴えれば勝訴できそうだ(ただし、アメリカでの話だけれども。アメリカは訴訟大国だから、きっとこのくらいのネタでも勝訴できるだろう)。…いや、誰を訴えればいいのかわからないから、結局はアメリカへ行っても無駄かもしれない。
暑さで蕩けそうになりながらも、必死に理性を保とうと努力する。これだから夏は嫌いだ。苦々しげにそう吐き捨てて、団扇をパタパタと扇ぐ。エアコンは使わないでおく。(下手に使いすぎるとヒートアイランド現象を進行させてしまいそうだから。わーお。私ってば地球に優しすぎるかもね。)

しゃわしゃわ。しゃわしゃわ。じー。じー。みーん。みーん。つくつくほーし。つくつくほーし。

今思うと、こんなに暑く感じるのは、蝉の所為だ。よし、これでアメリカで訴訟を起こせる。…裁判官は私に問うだろう。「どうして、蝉を訴えるのか」と。私はこう返す。「蝉の鳴き声は、聞くだけで暑さを私の心に連想させます。蝉の鳴き声のせいで、体感温度は2度上昇し、何をする気も起きなくなります。そしてその結果私の大切な一日の半分の時間が奪われました。これは訴えるに値するものだと思ったのです。」…う~ん。グレイト。

しゃわしゃわ。しゃわしゃわ。じー。じー。みーん。みーん。つくつくほーし。つくつくほーし。

そう云えば。
はたとあることを思い出し、私は必死に使い物にならない脳を動かす。中枢神経が幾分か衰えているような気がする。これもきっと蝉の鳴き声の所為。
蝉は、確か一週間しか外界で過ごせない。その癖人生(…いや、蝉の場合は蝉生か…)のほとんどは寝ている。地中で。随分と阿呆らしい蝉生だ。というより蝉自体が阿呆だ。ただ子孫繁栄のために一週間のみの自らの時間を費やし、更に私達人間の体感温度を増長させるなんて。自らの為に何かをしようとは思わないのか。全く、実に馬鹿馬鹿しい。
私が蝉だったなら、きっと交尾に勤しむことなどないだろう。外界で、人間の為(?)に鳴くこともしないだろう。ただ、空を飛び続ける。自分のやりたいことをやり続ける。

ってそれじゃあ蝉とは言えないか。
此処まで考えて、私は自らの意見を翻してみることにした。まるで、蝉の弁護人のように。
私は自分勝手だからそう思うけれど、やはり蝉も幾分か大変なんだろうな、と思えた。子孫を残すのは、やっぱり自分の為なのだろうか?鳴くのは、自分という存在を誰かに覚えていて欲しいから?だったらそれは、きっと意味のある行為だ。


しゃわしゃわ。しゃわしゃわ。じー。じー。みーん。みーん。つくつくほーし。つくつくほーし。


「私は此処に居る」と自己主張をすべく鳴く蝉達の声を背景に、夕涼みでもしようかと。





とりあえず、蝉を訴えるのはまだ止めておこう。


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