MURDEROUS PLOT

MURDEROUS PLOT

蟲と眼球とテディベア…ある意味ドリーム




3時間目の後の休み時間。

私―早乙女 乙姫(さおとめ おとひめ)―は、同じクラスの眼球 抉子ちゃんに話しかけた。

けれど彼女は、あっさりとそう言って、眉間に皺を寄せた。そして視線を反らすと、制服のポケットからスプーンを取り出してそれを弄んでいる。


もう、これで5日連続(話しかけた回数でいうと13回)、会話の拒否をされている。

彼女は私に心を開く気は無いのかもしれない。



転校生だから、中々クラスに馴染めないでいるのか、彼女は殆ど孤立している。

時折、鈴音ちゃんと一緒に居るのを見かけるけれど、彼女と私以外は抉子ちゃんに近寄らない。


そもそも、名前が変わっている。「眼球」が名字。

しかも名前が「抉」る「子」なのだ。

しかも、話しかける度に鬱陶しげに「眼球えぐっちゃうぞ。」と、のたまうのだ。


私は特にそういうことを気にしていないけど、人によっては大層気にしているらしくて、彼女についての噂は転校4日目で、既に45個を超えていた。

例えば、「眼球 抉子という名前は偽名で、本当の名前が存在する」とか。

(名前についてまで言及したがる位、皆は彼女の不思議な雰囲気に圧倒されているのだ。)
(でもまぁ確かに、仮に抉子は良いにしていも、眼球っていう名字はちょっとおかしい気がする。)


ただ、その事実の有無すら噂で聞く程度なので、若しかしたら初めから、何の噂も流れていないのかもしれないのだが。


私は、まるで銃みたいに鋭利な輝きを宿した彼女の目を覗き込むのが好きなのだけれど、皆はその目を畏怖している(らしい、と人づてに聞いた)。

話しかける人間が少ないのも、彼女の粗暴な行動以外に、そんなところに理由があるようだ。


あ、あと、愚龍先生の授業でずっと寝ているっていうところも、皆からすると恐ろしく信じられない、まるで摩訶不思議な行動に見えるのだそうだ。

私は、別に彼の授業を聞くのも聞かないのもその人の自由だと思うのだけど、皆に言わせるとこうなる。

「賢木先生の授業を受けないなんて、生きる価値無いよね!」

「ちょっと一人の生徒に愛注ぎすぎなのを除けば、授業は分かりやすいし良い先生だと思うから、寝ちゃうってのはちょっと凄いなぁって思う。」

…。確かに、彼はとっても格好良いし、うっかり惚れてしまって授業に集中する生徒も多い。

でも、彼の授業は鈴音ちゃんに聞かせるためだけに専ら存在するのであって、私達は偶然その恩恵を受けることが出来た、ある種の「幸せ者」なのである。

だから、惚れた腫れたという次元で彼を見つめることはあまりにも無駄で無意味なことなのだけど、それにしたって「そういう目」で彼を見ない抉子ちゃんは、確かに女生徒としては異端の位置に存在したと言っても良いだろう。

まぁ、かくいう私も、彼のことは大して崇拝していないし、憧れも持ってはいない。(授業は分かりやすいかな、とは思っているけど)

だからかな。なんとなく、抉子ちゃんは構ってあげたくなる。

自分を鏡に映した時の、向こう側の女の子みたいだから、つい。

まるで、私をもう少しストレートに表現したみたいな女の子。それが、彼女―眼球 抉子ちゃん―なのだ。


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