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MURDEROUS PLOT
金平糖【不二夢】
手に入れたくて どうしても手に入れたくて 駄々をこねたりした位。
だけど 手に入れることは出来なった。
星は 手に入れることが出来ない物なのだと悟った。
だけどね。今は 星を手に入れる方法を知ったの。
それは 何処かで見かけた小噺みたいに お空に手を翳して 星を掴もうとすることじゃなくて。
それはね。 ―――それは。
金平糖
屋上で、授業をサボダージュしようと思ったのは随分と前のこと。
多分、お腹が鳴っていたからお昼近く…。思い出した、4時間目の時だ。
頭が禿げかけて、頭が油でテカッテイル某先生のお話は、私の耳にタコどころかタコさんウインナーまで作ってしまう勢いだった。ま、用はつまらなかったということだ。
「そんなつまらない話する位なら、油取り紙使って油取ってた方が先生には良いと思うな」なんて考えながら、今日の給食は何かなぁなんて考えていた私。おぉ、なんて器用なんだ。と自分を褒め称えるのは此処までにしておいて。
こんな経路で、私は只今屋上に居ます。勿論お昼ご飯は丁重に頂きましたとも。
屋上には、普通の中学校なら鍵がかかっているのだろうけど、そこは私立。「公共の施設なのだから、全ての場所を開放しましょう」なんて校長先生のお達しで、屋上にも鍵はかかっていないのだ。ううん。ナイスよ校長先生。校長先生絶好調…なんちて。
使い古されたギャグは何処か別の場所に置いといて、私は早速昼寝をすることにした。ご丁寧に給水塔の上で。此処は屋上へと続くドアを開けて一生懸命空を見上げても、給水等が手伝ってくれて上で寝ている人間を隠してくれるという、なんとも素敵無敵な場所なのだ。此処は多分私位しか知らないだろう。だって他の生徒はほとんど真面目に授業をしている。流石は親の金で此処に来てるだけはあるよね。私は親のコネとかそんなのは最初から無くて、実力一本で此処・青春学園に入学したから、学費は免除されているのである。勿論、普通に受験して受かっただけなら、学費なんか免除されないだろうけどねぇ、私の場合は、全国から「是非とも青春学園で生活をしたい」という受験生が集う此処の入試で、見事にトップを飾ってしまったのである。この学校の入試に関するパンフレットには、こう書かれてあった。
「入試で1位を取った者には、本人が希望した場合学費を免除する」
…普通、学費が免除されるのに希望しないお馬鹿さんは何処にも居ないと思うけど。
という訳で、私も「普通」の例から漏れることなく、学費を免除して頂いた次第なのです。
ま、そんな御託は放っておいて、兎にも角にも昼寝をします。
上杉智香、寝ます!!!
思うが早いか行動するが早いか、私は目を閉じて舟を漕ぎはじめた。
キーンコーンカーンコーン。嗚呼無情。折角深い眠りについたところだったのに。不覚!!チャイムごときに起こされてしまった!!!
しぶしぶ頭を持ち上げると、目の前には見たこともない人が居た。
「こんにちは」
にっこりと、至極綺麗に微笑まれて、優しくそう言われて、私は思わず萎縮してしまう。それにしてもなんて綺麗な人なんだろう。まるで硝子細工のようで、脆そうで、そして儚くて。
やっとのことで口から出た言葉は鸚鵡返しとも取れる「こんにちは」。
目の前の人はそんな私の返事というか挨拶というかに満足してくれたらしく、またもやにっこりと微笑んでくれた。またもや鸚鵡返しのようににっこりと微笑んでみた。
「あの、貴方は何処の何方でしょう」
そう尋ねると、目の前の人は「この中学校の3年生だよ。」と答えてくれた。そして同時に「君は?」とその形の良い唇が動いて見えた。今度はさして悩むこともなく「この中学校に入ったばかりの新米です」と答えた。彼は成る程というように頷いて、またもや微笑んでくれた。ああもう、微笑みバーゲン出来ちゃいそうですよ貴方。目の前の先輩はマクドナルドで働いた方が良いような気がした。
「ごめんね、僕も此処で昼寝をしようと思って来てみたんだ」と、目の前の先輩は言った。
私は、自分以外にも此処の素晴らしさを知っている人が居たのだと感激し、「こちらこそ」などと訳のわからないことを口走りながら先輩が寝ることが出来る位のスペースを空けた。
私が空けたスペースに、なんとか入り込んだ先輩は「君も此処によく来るの?」と私の顔をじっと眺めて言った。
「はい。両手で数えたりない位来てます」
先輩の目力に負けるまいと必死に見つめ返しながら私は答えた。
「そっか、僕は全身のありとあらゆる指を使っても数えたりない位は来たかな。」と先輩は先程までの微笑みとは違った、嘲笑みたいな感じで笑って言った。やっぱり年齢の違いだ。来る回数も先輩に勝てる訳が無い。御見それいたしました、と口に出さずに思った。
突然現れた名も知らないというか聞こうとは思わない先輩に、私は少なからず親近感とか愛着とか、まぁ結構良い感情が芽生えていた。好きか嫌いかと尋ねられたならば、15分位悩んで「好き」と答えられる位の。ほんのちょっぴり、と言った方が早い感情。
だからだろうか。人と交わろうとしない私なのに、この時だけは精一杯の勇気を込めて、笑われるのを覚悟でこんなことを言ったのは。
「先輩は、小さい頃、真っ黒い空にぷかぷか浮かぶお星様を手に入れたいと思ったことはありませんでしたか?」
言った瞬間、私の顔はつい最近まで使っていたランドセルよりも真っ赤になっていたんじゃなかろうか。
先輩は、決して笑おうともしなかったし、哂おうともしなかった。ただ、腕を組んで、私の問いかけに対する最善の答えを必死に探しているようだった。
どれだけ待ったのだろう。しばらくして、先輩はぽつりと消え入りそうな声で「あるよ」と言った。私は少し嬉しくなった。すると、先輩は今度ははっきりとした声で「あるよ。僕も昔、よく思っていた。」と私の目を見据えて言ってくれた。この先輩は、きっと嘘をつけない先輩なんじゃないかなと思う。例えばそれがどんなに嫌な相手であっても、好きな相手であっても、自分を偽ることはしないんじゃないかな、と思う。―――なら。
「先輩。」
「何?」
もう、恥ずかしさなんて何処にも無かった。
「私、今でもお星様を手に入れたいって思います。だけど、無理だってわかっています。先輩はこんな私を、馬鹿だと笑いますか?」
そう、問うた。先輩は、びっくりして目を丸くしていた。自然な反応だと思う。初対面の人間に、ほんの少し会話しただけで、心の内を語られたりしたら、私だってきっと困る。
だけど、先輩は、ふんわりと…今まで見せてくれたそれとは違う笑顔で、言った。
「それは、決して馬鹿だとは思えないよ。限界を知っていて、尚もそれに挑もうとすることは、決して馬鹿な行為とは思えないし、僕にはそう言う資格はない。限界を知らずにそれに挑もうとしているのなら、愚かだと哂っていただろうけど」
そう言いながら、先輩は言葉を続ける。
「そういえば、有名な話であるよね。歌にもなっている、とても愚かなお話。」
「どんな話ですか?」
「聞きたい?」
「はい。」
即答すると、先輩はゆったりと、その歌を歌い始めた。
「昔ギリシアのイカロスは 蝋で固めた鳥の羽 両手に持って飛び立った 雲より高くまだ遠く 勇気一つを友にして
丘はぐんぐん遠ざかり 下に広がる青い海 両手の羽を羽ばたかせ 太陽目指し飛んでいく 勇気一つを友にして
赤く燃え立つ太陽に 蝋で固めた鳥の羽 みるみる融けて舞い散った 翼奪われイカロスは 落ちて命を失った」
透き通るような声とあまりにも残酷なその歌詞は、流れるように私の耳元へと届いた。
彼は、私に言葉を挟ませないようにと、次の言葉を紡いだ。
「イカロスは、父親と共に身を追われていた。原因は父親にあったんだけど、この話はパスしようか。…そして、父親は蝋で固めた羽を作った。それで遠くの国へと二人で逃げようと思ったんだ。その羽を二人は背負った。二人ともまるで天使のような格好になって、父親は息子に飛び方と注意を教えた。『高く飛んでいくと、背中の羽が壊れてしまうよ。落ちてしまうからね』と。息子は、その言葉をしっかり聞いて空へと飛び立った。後ろには父親がついて。初めて空を飛んだイカロスは、舞い上がっていた。楽しかったんだ。そして、禁忌を犯してしまった。『高く飛んでしまった』んだよ。背中の羽を固めていた蝋は容易く剥がれた。父親は、息子を助けることが出来なかった。息子は、海へとまっさかさま。死んでしまったんだ。」
此処に来て、私はようやく口を挟むことを許された。
「それが、愚かな話ですか?」
「うん。だって、そうだと思わない?彼は、父親から話を聞いていたにも関わらず、限界を知らなかったんだ。あれ程言ってくれたのに。」
そう言うと、彼は盛大な溜息をついた。私はその様子をじっと見守る。
「だからね。きちんと物事の限界を知っている君は、物事を把握しきれなかったイカロスと同類には出来ないと思うんだ。僕はね。」
また、ふんわりと微笑んで、彼は私の頭を撫でた。とても温かくて、そして少し冷たい手。
「そうだ。君に良い物をあげるね。星はあげられないけれど、これで許してくれないかな?」
両手を出して、と彼は私に告げた。私は言われるままに両手を出す。お椀型にして、と彼は私に言った。私は先程と同じく言われるままに両手をお椀型にした。頭の上にあった手が離れた。そして、先輩はその手を自らのポケットへと突っ込んだ。手は、小さな小瓶を引き出して、キャップを開けて私の手の中へとナニかを流し込んだ。まじまじと見つめると。
「金平糖ですね。」
「うん。金平糖。」
彼は、元々細い目を更に細めてそう言った。唇が緩やかな弧を描いている。
「知ってる?金平糖はね、ポルトガルの人が、星をどうしても手に入れたくて、でも手に入れられないから作った、云わば『星のレプリカ』なんだって。」
私は、その言葉を聞いて、この先輩は物知りだなぁと思った。先程から様々な知識を余すところなく披露しているからだ。
「お星様…。」
ひっそりと、だけど力強く私は呟いた。…力強い呟きなんてあるのかな、なんて自分にツッこんでみながら。
「ありがとうございます、先輩。」
ずっと欲しかったお星様が、手の中にある。譲れない光は、この手にあるよ。
ずっとずっとね、誰でも良いけれど見せたいものがあったの。それを一人集めて背負いたかった。私が見たかったのは、肩越しに見える未来。見せたかったのは、譲れない光。
どうしても、欲しかった。それは、私にとってかけがえの無い光。
ありがとう。先輩。私は、この光を大切にします。
先輩は、私の笑顔を見て、ふんわりと微笑んだ。
「じゃあね。もう行かなきゃ。また逢えたら良いな、上杉さん」
そう言って、先輩は給水塔から降りた。私はその背中を見送る。
手の中には、空に浮かぶお星様。私の心には、一つばかりの謎。
「そういえば、どうして名前を知ってたんだろう?」
END(強制終了)
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
えっとですね。話が本当に訳わかんないと思うので、説明します。
あれですね。最初の出だしは、私の意見っつーか。昔、私めは星が欲しかったのであります。はい。ですから「主人公にもこの考えを定着させてしまいましょう」と思いました。んで、お星様を手に入れたかった主人公(もとい私)は、今でも実はお星様が欲しかったという。でもそれを隠して毎日を過ごしている。そんな中で現れたのが、謎の先輩こと不二周助。ごめんなさい、先輩の名前、出しませんでした。敢えて彼の持つ独特なミステリアス的な雰囲気を醸し出すだめの策でした。でも、先輩は主人公のことを知っていたようですね。…はて?
そして、イカロスの話。これ、無茶苦茶私の好きな歌なんですが、皆様は知っていらっしゃるでしょうか。いえ、この際それはどちらでも良いのです。
不二先輩は、無知こそが愚かしいと言いました。それはまたもや私の意見なのです。何も知らないということは、前後不覚という状況に居ること。例えば霧の中を彷徨っていたとしましょう。そんな人間が、目の前に家のようなものが見えて、それを「自分の家だ」と勘違いしてその家に入り込んで行くことは、とても愚かしい行為だと思うのですよ。
何も知らないということは、知識が少ないということであり、知識が少ないということは、他人に迷惑をかけやすいという点で「愚かしい」ということに繋がる。
えっと、ごめんなさい。もう疲れました。
あのですね、なんでこんなに妙な敬語使ったかっていうとですね、今「乙一」さんの小説の「ZOO」を読んでいた訳です。
その小説とか、あとは「片山恭一」さんの「きみの知らないところで世界は動く」という小説に感化されてしまった訳なのです。そういう小説の中で、無茶苦茶頭の良い人が出てきたから、なんだかそれに感化されて、あまり意味のわからない単語とかも使ってしまったということなのでした。
後半の詩的な文章は、「Cocco」さんの歌「もくまおう」から拝借。
これは2003年11月16日の1時頃に大体の話を書き終えまして、後半の方は2003年11月16日12時18分に書き終わりました。
よって、読んだ小説が『ZOO』や『きみの知らないところで世界は動く』など、ほんの少々古い本なのです。
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