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MURDEROUS PLOT
ケ・セラ・セラ【続・不二夢】
そう 幸せの 基準は何処にあるのか なんて
例えば 空を飛ぶ鳥みたいに 全ての柵から開放されたら どんなに素敵だろう
例えば 海原を泳ぐ人魚みたいに 優しくなれたら どんなに素敵だろう
例えば 例えば 例えば…。
例え話は話し出したらキリが無い…けど だけど
人生は薔薇色じゃない でも やっぱりそれなりに幸せだから
夢に見た自分に 少し近づいたり 新しい 恋を見つけたり
――――ねぇ?そうでしょう?
ケ・セラ・セラ
私は、ベッドの上に草臥れた体を投げ出した。ぼふっという擬音を立ててベッドは軋む。
――あぁ、これが小説ならば、もっと綺麗に今の情景も描かれるのだろうに。
例えば、こんな感じに。
『少女は、その四肢をベッドに投げ出した。ベッドのスプリングが、ギシリと音を立てる。彼女は、「ほぅ」と可愛らしげに小さく溜息をつくと、ベッドの目の前にある机を見遣った。―――…というより、実は、その机の上にある金平糖の入った瓶を眺めていたのだけれど』
そう考えて、私はまた大きく溜息をついた。本日15回目の溜息だ。
金平糖。お星様のレプリカ。
私は、ベッドから体を起こし、机へと手を一生懸命伸ばす。やっと瓶のフタに触れられたと思ったら、瓶はごとりと地面に落ちてしまった。
―――あーああ。お母さん、1階でカンカンだろうなぁ。どうしよう。
暫く思案した後、「知ったことではない」という結論へと辿り着く。別に良いか。誰がどうしていようと、私に大して害は無い。まぁ、後でお小言はくらうだろうが、それはどうってことはない程度だと思う。
何せ私は天才少女。母親のどんな言葉にも、欠点を探し出してしまう女なのだ。母親も、大層なことを言って「その言葉、どんな意味かわかって使ってるの?」と私に問われるのが嫌らしく、最近ではお小言は、文字通り「小さな言い方」でしか無くなってしまったのだ。
だけど、そんな私でも、少し心に迷いが起きていた。
…。謎の先輩のせいで。
それはそれは冷たくて、そして温かい手を持つ人。
そこまで思い、自らの持っている瓶を見つめる。
瓶自体は先輩のくれたモノではないが、その中身の金平糖は先輩から受け取ったもの。
小さな星が、私を見てくれと言わんばかりに瓶の中でころころと転がる。かちゃかちゃ音を立てる。星も生きているんだ。…なんちゃって。
「あーああ。どうしちゃったんだろう、私。」
大げさにそう一人ごちて溜息をまたついた。本日16回目。数えている自分も凄いと思う。
――…今までに感じた事の無い、変な感覚が体全体を支配する。
むずむずする。大声で叫びたい。だけどそのくせじっとしていたい。走り回りたい。ジャンプしたい。ピアノを高速で弾き鳴らしたい。
この気持ちは…何?
自分に幾ら問いかけても、答えは返ってこない。謎は深まるばかり。
一体なんだというのだろう。あの先輩は、私の何を変えたというの?
さっぱりわからず、諦めて眠りについた。
何が違う 何が足りないと問いかけても
きりが無いよね ぐるぐるまわりだと 思うけど
あの人は言ったんだ。「また逢えたら良いな、」って。そして私の名前を呼んだんだ。
そして私は不覚にも、その言葉に心の何処かで同意していたんだ。
――――私も、また逢えたら良いって………。
――…“ちゅんちゅん”という、小鳥の囀りを目覚ましにして私は身を起こす。真っ白な天井に少し圧迫感を覚えるが、それはいつものことなので放っておくことにする。
スリッパを履いて、荷物を持って1階へと向かう。階段を歩く時のトントンという音が結構お気に入り。だから『小気味良く階段を下りれたら、今日1日はツイている』と定義づけてしまった。でも…それから、一体どれだけの月日が流れたというのだろう。定義づけてからずっと履いているスリッパも、もうボロボロになってしまったというのに、私はまだそれを止めようとしない。それは、自分が安心して1日を過ごせるようにという、余りにも勝手な理由から作られたモノなのに。
そう考えながら下りていたせいだろうか。私は残り1段ある階段を見事にすっ飛ばしてしまい、大きく尻餅をついてしまった。お尻がヒリヒリする。「自業自得だ」、と嘲った。
…今日はなんだか憂鬱だ。フォローのしようも無い程最悪であるが故の憂鬱。英語で言うとベリーブルー。決してブルーベリーではない。
それはきっと、私の定義を守ることが出来なかったから。世の中ってそう甘くは無いんだなぁ。
リビングへと辿り着き、母親の作る玉子焼きの匂いを嗅ぐ。やっぱり玉子焼きはソースに限る。世の中は醤油がメジャーと言われているらしいが、私は断固ソース。こればっかりは譲れない。
「ご馳走様でした!」
そう言ってテーブルに箸を置く。かたん、といすから立ち上がる音がリビング内に響く。
慌てて洗面所へと走って、歯ブラシを取り出す。しゃこしゃこと歯を磨く音に包まれながら、私は鏡に顔を向ける。にっこり、微笑みの練習なんかしてみたり。
「…先輩みたく笑えるようになりたいなぁ…。」
あのスマイル。絶対にマクドナルドで使える。あのスマイルになら、ゼロ円ではなくて、きちんとしたお金を払ってしまいたいとさえ、思える。私も習得したいものだ。
「行ってきます★」
制服を整えて、カバンを持って慌てて家を飛び出す。自転車をこぎ始めた。
爽やかな風が、頬を掠める。風が目に入り、思わずそれを細める。視界が、歪む。ぐにゃり。ぐにゃり。
「うわあ!?」
視界が悪い所為でバランスを崩した私は、横にある電柱に激突しそうになる。…アーメン。
「大丈夫?」
聞き覚えのある声がして、私の体の傾きが止まった。ふんわり、と良い匂いがした。
「先輩!?」…そう、紛れもない、あの先輩が、私がコケるのを未然に防いでくれたのだ。
「もう少しで、それとキスしちゃう所だったね。」
『あはは』と笑いながら先輩は、真ん前で私が来るのを今か今かと待ち構えている電柱を指差した。私は恥ずかしくなって赤面する。
「ありがとうございました。」
ごにょごにょと、いつもの私には考えられない程の小さな声で、先輩に返事をする。
「気をつけてね。」
あ。また、あの微笑みだ。
先輩のそれを見て、自らの唇が少しだけ弧を描くのを、私は止めることが出来なかった。
先輩の後姿を追いながら、私は自転車を漕ぐ速さを少しずつ上げていく。
結局、私はいつもなら30分かかる道程を、ものの15分で学校に辿り着いた。
「ねぇ、この気持ちって一体何て言えば良いの?」
私の今の摩訶不思議な気持ちについて、隣の席の唯一無二の友人、沙羅に尋ねる。彼女は何かにつけて、よく悩みを聞いてくれる良い友達だ。
「…それは…」
彼女は、言葉に詰まる様子を見せる。頭を抱える仕草からすると、何と言えば良いのかわからない、といった感じだ。
「私にもわかんないな。」
語尾に「☆」マークが付きそうな程に明るく返した沙羅は、「私、用があるからさ!!」とこれまた明るい声で言い、急に方向転換をする。そして「おーい!!」と言い、遠くの席の友達の元へと去っていった…。
「あ、本当は知ってるんでしょ、沙羅のバカー!!!!」
彼女の背中に野次をとばしながら、私は仕方なしに自力でこの気持ちの正体を探り始める。
……。でも、さっぱりわからない。どうして、沙羅はわかっているのに教えてくれなかったんだろう。
頭に疑問符を乗っけながら、その日一日、私は授業に出席する羽目になった。
全ての授業のチャイムが鳴り終わる。私は、それを待ち望んでいた。
その感情の答えを、全ての原因である、先輩自身に尋ねてみようと思った。
教室から飛び出し、昇降口で靴を履き替える。そして、超特急で、テニス部のコートへと走り寄る。そして「すみませんー!!!」と大声をかけた。
「あ、上杉さんだ。」
“どうしたの?”と、丁度私が探していた先輩から声をかけられた。そのことに喜びを感じつつ「先輩、ちょっと付き合ってくれません?」とお誘いをかける。
「うん。良いよ。」
あまりにもあっさりと返されて、驚きを隠せずにいると、「今、不味いお茶を飲まされそうなところだったんだ。」と微笑みながら彼は言った。
すぅ。大きく一息を吸い込むと、先輩は「乾―!!!ちょっと呼び出しかかったから今日はパスねー!!!」と、逆光眼鏡の先輩に、にこやかに声をかけていた。逆光眼鏡の先輩は、「ち。」と舌打ちをして、手に持っていた奇妙な色の飲み物(多分アレが“お茶”なのだろう。)を、その辺に居た人に飲ませたようだった。私はそこまで見て、先輩とほぼ同時にくるりと踵を返した。小さな悲鳴が、背中越しに聞こえるのがわかった。
「いやー、助かったよ、上杉さん。」
「いえいえ。不二先輩のお役に立てたのなら、光栄です。」
社交辞令とも言えるような会話に、私は思わず苦笑する。そして、ぺこりと頭を下げた。
「そういえば、僕を呼び出したのは、何のためかな?」
不二先輩の直球は、私のハートのど真ん中にヒットした。ストライク!!
いきなり本題に入られて、私は慌てて手を横に振る。あまり意味の無い動作だけれど。
「あの、ちょっとわからない感情があるんです。その感情の“名前”を教えて頂きたくて。」
「?」
先輩の顔を見て、更に恥ずかしくなる。どうしてだろう。何故だか体温が上昇して、視線が宙を泳いでしまう。
「あの…。そのですね。」
「うん。」
ごくり、と唾を飲み、私は先輩をじっと見つめる。しかし、数秒後には沈黙に耐えられなくなって、視線を反らした。
「先輩のことを考えたり、先輩を目にすると、どうにもぼわーっとしてしまうんです。」
彼は、呆気に取られたような顔をして、微動だにしない。
「あの、具体的に言いますと、先輩のことを考えると、何故かピアノを高速で弾きたくなったり、大声で喚きたくなったり、なのにその癖黙っていたかったり、むず痒くなるんです。先輩を見ていると、何故だか幸せな気分になって、顔が緩むのが止められないんです。」
――これって、どうしてなんですか?
全てを正直に話すと、先輩は自分の頬に片手を添えて、何故か頬を朱に染める。
「…。それは…。」
聞き取れるか聞き取れないかの狭間の声色で、先輩は囁くように言葉を続ける。
「多分、それは…」
彼の声は、もう聞こえなかった。…いや、聞く程の余裕を、彼は私に与えてはくれなかった、と言った方が正しいだろう。
私達は、繋がっていた。瞬間の出来事だったけれど、それで彼の言いたいことが全て飲み込めた。
暫くの間を置いて、彼は先程までの照れた表情は何処へ消えたと言うのか、一転して何処か裏のあるようなすっきりとした笑顔でこう言ったのである。
「もう、その気持ちの正体、わかるよね。さ、言ってご覧?」
答えを再確認させようとする彼は、私の知っている彼とはまた違って格好良かった。
――…ただ、意地が悪い人だ、という点さえ除けば、完璧に格好良かっただろうに。
「あ…あの…その…」
「うん。」
意地が悪くて、更に私の答えを急かそうとしない所がまた、タチが悪い。
「私は、不二先輩のことが好き…で…す…?」
「疑問系にしないで。はっきり言ってくれないかな。」
――…やっぱり意地悪だ!!!そう思い、心の中で私は地団駄を踏む。
「―――…好きです。」
観念して、私は白旗を揚げている気分で、彼にたった今無理矢理わからされた感情を伝える。すると、彼は心底嬉しそうに微笑んで「それで良し。」と頭を撫でてくれた。冷たくて、でも何処か温かみのある手で。
「さ、どうする?このまま僕は部活に戻った方が良いかな?それとも…」
先輩は、何処か威圧感のある微笑みを維持したまま、私に問いかけた。
「君が僕の家に来る?」
「え?」
特に先輩の言った内容の真底がわからず、思ったままの言葉を返す。先輩は、急に威圧感のある微笑みを解除して「冗談だよ。」と笑った。今度は優しい微笑みだ。
何処がどう『冗談』で、何処がどう『本気』なのか、まだまだ中学1年生の私には理解出来ないけれど、それでも、彼は優しく笑ってくれるから。
――…きっと、何とかなる。
そう思って、先輩の服の裾をキュッと握る。先程までの柔らかい微笑みが、少しだけ硬くなっているみたいだ。
「あの、先輩のお家、行ってみたいです。」
そう言って、にっこりと微笑んだ。その瞬間、先輩はまた頬を朱に染めた。どうやら、不意打ちに弱いらしい。新たな一面を知って、何だかとても嬉しくなる。
先輩は、私の手をギュッと握り、道案内を買って出てくれた。
きっとこの先、何が在ろうとも
――…ケ・セラ・セラ。なるように、なるさ。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
反省文。もといごめんなさい文。蛇足。補足。
うー。なんだかほんのりR指定に挑戦(我が家のパソ子は、一発変換すると 挑戦 → 朝鮮 と出ます。何故?)してみました。でも挫折です。眠い眠い。実は今までドリーム小説サイトを巡ってただなんてとてもじゃないけど言えやしないです。ふふ(言ってる言ってる)
きちんと自分を確立出来ていたなら、私はきっと何処へ出てもグラつかなかっただろうけれど、駄目なんですよこれが。気もきかないし、勘も鈍いし、はっきり言って自分大嫌―い。ゴミ箱に捨ててきたいのですよ。うー世の中に段々希望を無くしていく自分が更に嫌です。ああ、これじゃあまたぶっちゃけ大会です!!!
きっと皆はたくましい想像力で、私のつたない文章をカバーしてくれてると思うのですけども。あのね、不二先輩は、主人公のこと、ずっと前から好きだったんですよ。主人公が好きになるずっと前から。
これを書き終えたのは、2004年3月12日(金)AM0:42です。
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