旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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フリック.ストーリー


ドロンの≪フリック.ストーリー≫

ジャン=ルイ.トランテイニアンフアンの皆様、
特に若妻ポン太さん、
お待たせしました....
今夜は彼がドロン様と競演します。

戦前から戦後にかけてパリで36人も殺した兇悪犯、
エミール.ピソン....

そして、567人も犯人を逮捕したパリ国家警察の
スーパーデカ、ロジェ.ボルニシュ。

1947年から三年間に渡って、
ロジェ.ポルニシェがピソンを追い詰め、逮捕するまでの
壮絶な闘いを描いた。

これは1973年にボルニシュ本人がこの逮捕劇を小説として
発表し、フランスに大センセーションを巻き起こしたのだそうです。
この原作を読んで感動したドロンが自ら、映画化権を獲得して
スーパーデカ...ボルニシュを主人公とする刑事物語を
作ったのです。

凶悪犯にトランテイニアンを据えて。
まさに国際スター二人の競演です。

トランテイニアンはアル中の親に盗みを教えられて育った
まじめな生き方を知らない、そして冷酷非情に人を殺す。
ギャングの仲間の裏切り、密告者を容赦なく殺るのは
もちろんのこと、襲った先でも簡単に人を殺す。

にこりともしない。その仲間達や仲間でもある兄たちとの
共謀した犯罪の中で、孤独と闘いながら、
どうして追い詰められていくか...
トランテイニアンの≪男と女≫以来の
代表作ともなりうる作品だと思います。

孤独の中にも、また教養が無いにも関わらず、
新聞はフイガロ紙を読む。ムショで尊敬されるからだそうだ。
そしてエデイット.ピアフの唄をこよなく愛す、
哀愁を漂わせた役をジャンが好演しています。

ドロンの役のスーパー.デカ ロジェ.ボルニシュはと言えば、
スーパーはつくが、決しておごったところは無く、
むしろ温かい人間性を漂わせ、上司にも適当に歯向かいながらも
うまくやっている..もうすぐ係長になれる。
そしたら同棲しているカトりーヌと結婚しようと思っている、
国家警察のサラリーマン刑事.

珍しく温和な役ですが、ここでもひたむきにまっしぐら。
寝ても起きてもピソン、ピソンと彼、逮捕のことばかり
考えています。

一度も面識の無いピソンに、最後に向き合ったときに
感動すら覚えるロジェ。
逮捕後は予審判事からの依頼でロジェが一年に渡って取調べを
することになる。
何セ選りすぐっただけで36件もあるから、そのくらいかかるのだ。

二人の間には友情と言うと大げさだが妙な共感が沸く。
逮捕も彼の仲間を説得したロジェの策略に引っかかったわけだが、
さすがのピソンも悔しかったらしい。仲間の裏切りに
電気のこぎりで奴の首をゆっくりと切ってやりたいと。。。
一度だけ本音を吐いたがそれ以外はゆったりとすわったままの
ピソンに不敵な、大胆さを感じたとロジェは結んでいる。

スーパー刑事の仕事の裏で
平凡な家庭生活を送るドロンの役にしては
珍しい一面が見えました。

犯罪者の取調べにに対しても、残虐な拷問で取調べをするのは
虫けら以下の悪質な行為だと、部下をたしなめる
信念とやさしさを持つ...が、結構ドジなところもあって、
ふと笑えるドロンも見れます。

(笑ったのは、一度目の張り込みで夜明けの踏み込みを
狙うのだが、相手が先に気づき、
窓から屋根に飛び降りて逃げるが、
ピソンはうまく飛び降りて、隣の屋根裏に降りることが出来た。
ロジェは窓から隣の屋根に飛び降りるがバウンドして、
下に転げ落ちる。
上司はロジェに激しく言う。”着地でもピソンに負けおって!”と。
でも、黙々と、加えタバコで始末書をタイプで打っているのであります。 笑ってしまいました。)

所轄内の部下二人、ロベールとリュシアンをやさしく
指導しながら良いチームワークを作り上げていく...

ラストの逮捕場面で...
田舎のホテルのレストランでふと、カトリーヌが店の
ピアノをつまびく、エデイット.ピアフの♪ばら色の人生♪に
近づき、ふと安らいだ笑みを見せるピソン...
トランテイニアンフアンにはたまらない場面でしょうね。

じっくりと楽しめる...
ギャング映画の傑作の部類に入れても良いと思います。

フランス映画をずいぶんと見てきましたが、
社会構造がどこか日本と似ている...
上下関係の会話。女性の扱い方は特に日本と似ていて、
アメリカと違い、
女性が一歩下がって男を立てると言うような面も
なぜか、受け入れやすく、そこが案外すきなのかもしれませんね。

フランスもイタリーもどこか似ている。家族関係も、
男女のあり方も。

とにかく、トランテイニアン扮するピソンの人物の面白さと
温かい刑事ドロンの対決をお楽しみください。

そして戦後のフアッション、アランとジャンのセンスの良い
パリカナイユの着こなしもうっとり。
年代ものの車も魅力あり。
食べるシーンも多い。
何を食しているのかなと興味津々。

ぜひとも、お薦めの 三ツ星、いや五つ星マークの作品です。

1975年度作品
監督、ジャック.ドレー
レナート.サルバトーレもまだ、しっかりと共演していますよ。

ロジェの恋人、ひたむきなカトリーヌには、ボンドガールの
クローデイヌ.オージェが演じています。
ビデオショップでは  ポリスもの のコーナーに
並んでいると思いますよ。




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