旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

<最後の標的>


匂うような美しさのカトリーヌ.ドヌーブが共演Ⅱ作目にして
思いっきり堪能できるハードボイルドラブ.ストーリー。

     <最後の標的>
ストーリー

廃業しようとした殺し屋家業のクリスチャン(ドロン)。
当然、依頼主ーー組織のボスはなかなか首を縦には振らない。
凄腕の彼を放したくないからだ。

組織の手下で、いつもおびえていて、孤独だと
いうミシェルをクリスチャンはなにかと面倒をみていたようだが、
ミシェルは友達なんかじゃないという。

彼曰く、感情の無いクリスチャンにも 心を開かない。

当然新しい殺し屋に命を狙われたクリスチャンだが
そこは彼の不死身なところ。

死体の始末を組織を恨むミシェルに手伝ってもらった。

お金の亡者と言われ、財産も出来たクリスチャンは
別れた妻に資産管理を任せている。

彼女は資産運営に長けているので、彼女に言われるまま、

彼女が投資した七面鳥農場を訪ねる。

七面鳥農場で夫とふたり暮らす美しい妻、
カトリーヌ(ドヌーブ)がたくさんの七面鳥を追っているのをみて、
クリスチャンは彼女に興味を持った。

七年前に夫と結婚して農場に来たそうで、
夫とは今はうまくいっていないようだ。

村のデモに参加していて帰ってきた夫は
彼女とは不釣合いな無愛想な男だった。

三人の夕食は気まずく、夫は町へ出かけた。

初めて会ったときから、惹かれるものを感じていたふたりは
結ばれる。

帰ってきた夫は何かを感じていて、
カトリーヌを無視し始めた。

その夜、何年か前の復讐だ言って
テロリストがクリスチャンを襲ってきた。
巻き添えで銃弾に倒れた夫。

ここでも撃ちあいとなり相手を撃ち倒し、
ふたりはパリへと向かう。

”道は二つだ。俺と一緒に高飛びするか?
もうひとうは
適当なところで君を降ろすから好きなところへ逃げろ!”

彼女は彼を選んだ。

テロリストの集団は組織がまわしたものだと
思い込んだクリスチャン。

高飛びをする為に元妻と一緒に金を預けている貸し金庫に
金を取りにいくと金庫は空っぽだった。

おまけに元妻を訪ねると彼女も殺されていた。

そのうえ,組織がクリスチャンとカトリーヌを捕え、
次の仕事に手を染めさせようと迫った。

ターゲットは石油王国の大使である。
凱旋門前で
組織に飼われている刑事と一緒の仕事だが、
殺しの後でクリスチャンを始末しようとした事を察知して、
殺しは止めた。

カトリーヌを助け出しにいき、
最後の始末と、金を取り戻さねばならない。

ミシェルが組織に復讐をしたいからいっしょに殺ろうぜと言う。
彼のコートの衿に
元妻が飼っていたペルシャ猫の毛が付いているのを
クリスチャンは見逃さなかった。

組織のアジトに向かい、一挙に始末した。
だが、ミシェルもボスの銃弾に傷を負った・

金を持ってガレージに降りると
ミシェルがピストルをクリスチャンに
向けた。

テロリストを送り込んだのも
元妻ジャンヌを殺したのも
お金を盗んだのも
全部自分の仕業だと告白した。
黙って聞くクリスチャン。

後はクリスチャンの命をもらうだけだ...と言って倒れた。

裏切っても、心の病でそうならざるを得なかった彼を
クリスチャンは抱きとめた。

”俺を見捨てないでくれ!”と・

心の底ではクリスチャンに真の救いを求めていたのであろう。

助けられたカトリーヌは
クリスチャンに言われるまま待った。

”ハバナ?南太平洋?どちらに行くか?”と....
駈けてきたクリスチャン。

”早く着く方に”とカトリーヌ。

待っていたヘリで飛び立つ二人.....。

やれやれ、ほっとした結末でした。

冒頭の殺し屋スタイルは見るからにケバイいでたちであるが、
止めると決めてからのアランは彼に一番似合う
黒の服装である。

白のシャツ、又はマドラスチェックのシャツに、
ラウンドネックの黒のセーター、ジーンズ、そして黒のPコート。
一番好きな彼のフアッションです。

カトリーヌがこの作品ではカジュアルっぽい服装なので
見事にマッチしています。

敵の手に掴まったときに”寒いわ”というカトリーヌに
”目”で返事をする彼独特の表情。
ハーっと白い息を吐いてカトリーヌを安心させる気遣い。

この表情はどの作品にも一回は必ず、登場する。

農場の食事のシーンで酔っ払って一人騒ぎをする亭主を
じーっと寡黙に見つめるアラン。

ここで夫婦間の気まずさを察知するドロンだが、

その目の表情とカトリーヌの目とで会話をしている。

組織の仲間の刑事が殺しの打ち合わせをするときに
ジャンク.フードのようなものを袋から取り出しながら、
また、食べながら話す。
観ていてイラつくのですが、
アランがバーンと放る。
こういう仕草も彼の、また、役の人物の性格を表していますね。

組織に囚われの身のアジトに嘆きの天使と呼ばれる
肥満の賄い婦がいる。

その顔はまさにドイツ人の顔を連想する。
嘆きの天使..そうデートリッヒが演じたドイツのスパイですね。
ここにもシナリオの遊びがありましたよ。


もっとも素敵なシーンは
一文無しになった..と分かったときに
カトリーヌのコートをアランが彼女に投げつけて、

”一文無しだ、ひとりで逃げろ!”と怒鳴る。

彼女もそのコートを投げつけ、”そんなことで?”と怒鳴る。

彼女の頬をひっぱたき”俺を好きか?”と怒鳴る。

彼女もアランの頬をひっぱたいて”好きよ”と抱きついていく

シーンです。

こういう愛の表現、アランらしくてとても素敵ですね。
カトリーヌがクリスチャンの過去を聞いたときに

”ダメだ!”とカトリーヌを見つめる。

危ない男と分かってもこの時にカトリーヌは心を決めたようです。

殺し屋作品は数あれど、それぞれ違ったシチュエーションで
それぞれ、面白いハードボイルド作品にしてしまい、
退屈しませんね。

心の片隅にだけある彼の感情というものが
どこに投影されているのか?
そういった面白さ。

この作品の元殺し屋はカトリーヌとの再起にかけ、
そのためにはどんな事でもやるという思いが
カトリーヌを労わりながら突き進ませるのです。

ビッグ.ガンのシシリアの殺し屋の熱情とも違う、
サムライの孤独な殺し屋とも違う。

それにしても、この人ほど作品の中で
泣き顔を見せる人は少ない。
この作品でも3度見せます。

47歳のアラン。39歳のカトリーヌ・
リスボン特急ではふたりの絡みはあまりありませんでしたが、
この作品ではたっぷりと
美男美女のハードボイルドラブ.ストーリーを楽しめます。

ラストのシーンでアランの淡いブルーのタートルネックの
セーターとカトリーヌのカシミアのマフラーの色が
お揃い...焼けるなああーー!


音楽はオリエンタルっぽいリズムにジャズっぽいトランペットが
バックに流れ効果をあげています。


1982年 仏
監督 ロバン・ダビー
出演/アラン・ドロン カトリーヌ・ドヌーヴ 
フィリップ・レオタール ステファーヌ・オードラン

A・ドロン、C・ドヌーヴ共演の
フィルム・ノワール的ハードボイルド・ロマン作品。



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