旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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≪黙って抱いて≫


映画って
見る年代によって随分と違って見えてくるもの..という
話はよくしますし、
どなたもそうおっしゃる。

アラン作品に関しては集中して、
50何作品を続けて鑑賞してきたわけですが、
時代順で見たわけでなく、
手当たり次第に見たので、
今日、実質上のデビュー作品を改めて見て
その感慨にふけりました。

私にとって彼の作品で駄作というものはありませんでした。

映画スターとしての成長ぶりと
実生活での彼の生き様の想像を重ね合わせたときに

まるで、彼の幼いころからのアルバムを見せてもらったような
気がしています。
その1ページが今日紹介する≪黙って抱いて≫です。

≪女が事件にからむ時≫でデビューしましたが、
日本未公開作品。

その後の≪恋ひとすじに≫も未公開のはず。

実質上の日本でのデビューは
この≪黙って抱いて≫だろうと思います。

この作品では主演ではないが、
ジャン.ポール.ベルモンドと一緒に
ベビー.ギャングに扮して活躍している。

作品としてはフランスサスペンス風コメデイと
いったところか・

アランの作品をずっと紹介してきましたが
その中で
大好きな作品10本のうちの一本である
  ≪生きる歓び≫の笑いにも通じる。
フランス映画のよき時代(舞台はローマですが)の
エスプリが感じられる。

主軸は当時人気絶頂だったミレーヌ.ドモンジョと
アンリ.ヴイルダの恋物語と宝石強盗との絡み、

そして何も知らずに密輸品のカメラを国境まで運ぶ
ベビーギャングのアランとジャン.ポールの
絡みで構成されています。

感化院を出たり入ったりしている女の子ドモンジョが
刑事ジャンと愛し合うようになる中で
彼女が宝石強盗に関わりがあるのかどうか
迷いながらも
事件解決に向けて彼女との愛を失うことなく頑張る。

何も知らないベビーギャングの運ぶ密輸品の
カメラの中に盗まれたエメラルドが隠されており、
それを巡ってのてんやわんやの騒動である。

わたしは、ストーリーよりも
アラン様とジャン.ポールの登場場面での
感慨にふけってみておりました.

いつも4人が落ち合う喫茶店の電話ボックスで
恋人からの電話を受ける時に、

ジャン.ポールとアランが頬を寄せ合って
電話を聞くシーンでのこと。

ボルサリーノや引退作品のハーフ.ア.チャンスを
重ね合わせ、振り返り、
そしてこのページで紹介し、
その後に再度見たこの作品で、
45年前にこの二人がここで一緒に出発したんだな!
という感慨です.。

電話口で頬を寄せてのシーンは、ボルサリーノで
ふたり力を合せて敵に立ち向かった事を逆彷彿させ、

引退作、ハーフ.ア.チャンスで
アランが
   ”あいつの得意技さ”と言って、
ヘリからロープを降ろすシーンを思い出し、

この≪黙って抱いて≫のなかで
こそこそと動き回るふたりが
この年頃の少年が一時期やる悪さを共有し、
ずっとこの青年のままで
ハーフ.ア.チャンスを見せてくれたことに
お礼を言いたいのです。

刑事とドモンジョが会っているところに、
ジャンポールがオートバイを乗り付け、
その前でわざと転倒し、
ドモンジョにメモを渡すシーンは
その後の彼のキャラクターがすでに表れていた?と
嬉しくなり、

アランはといえば、
アクション場面での間抜けぶりが
その後の彼の作品のちょっと抜けたキャラクターに
通じるものがあって、これも嬉しくなってしまった。

これは、今だから感じられたものです。

ただの役者だったら、このような悪ガキも
それだけで終わってしまうが、
この作品ですでに只者ではない頭の切れを
感じさせる悪ガキのふたり。

スター性をすでに予感させるものがあります。
行動的なアンちゃんのアラン。
ヌーボーとしたアンちゃんのジャン.ポール。

役者としての原点が≪若者のすべて≫であり、
スターとしての原点が,≪太陽がいっぱい≫であるとするなら、

この作品はそれらを予想させる原点の作品であると思います。
お正月休みにはこの作品から始めて、
もう一度、作品の作られた年代順に再度鑑賞しなおそうと
思っております。

1958年度作品



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