旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪ホロコースト≫連載四回~六回



   配役

Dr.ヨセフ.ワイス        開業医
  ベルタ.ワイス        妻
長男、カール.ヘルムス.ワイス. 商業デザイナー 
妻  インガ.ヘルムス.ワイス  妻  
次男 ルデイ.ワイス
長女 アンナ
叔父モーゼ           ワルシャワで薬屋を。
エリック.ドルフ        ナチ.親衛隊の大尉
マルタ.ドルフ           妻    
ハインリッヒ長官
ヒムラー大尉
フローベル大佐
ネーベ大佐

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出演 メリナ.ストリープ = インガ.ワイス
   マイケル.モリアーテイー = エリック.ドルフ
   ジェームズ.ウッズ = DR.ワイス
   トム.ベルー   = ルデイ.ワイス
   ローズマリー.ハリス = ベルタ.ワイス 
   ジェームズ.ウッズ = カール.ワイス   
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ベルリン

ベルリン本部のハンリッヒ長官の元に
将校たちや、文官が集まってきた。
処刑の合理化を討議する為だ。

銃刑では能率が悪いのと銃殺はまずいという総統の命令が
あったからだ。
ガスを使うという長官の意見に、
文官は異議を唱えた。

数年前の安楽死にガスを使った事で教会の抗議を受け、
ガスの使用は中止されたという経緯を説明したが、
長官は断固として使用を推進した。

総統のユダヤ人を皆殺しにせよとの命令では
ガス使用を実行しなければ到底無理だという理由で。
当然,エリックも口を出し、長官を推した。

ネーベ大佐とフローベル大佐は
長官とエリックをいいコンビだと陰口を利いた。
ユダヤの混血(長官)とヘボ弁護士か...と。

エリックは強行に長官を推したものの自信のなさと不安から、
ヒムラーに意見を求めた。
総統の命令とあらば仕方あるまいと
言った。だれも心では不安なのだ。
敵意を向ける他の将校たちの中で、
ヒムラー大尉だけが相談できる相手だった。

ルデイとヘレナはキエフから離れた場所にいた。
廃屋のわらに包まって、飢えと寒さと先行きの不安で
泣き出したヘレナを、
ルデイは幼い頃の話や夢を話して慰めた。
そんな時、外に人の気配がした。

パルチザンの一行だった。
銃を向ける彼等に、
ヘレンはその中の一人の女性のペンダントに目をやった。

ユダヤ人ね?私たちもよ言うと

銃を引っ込め抱きしめてくれた。

彼女の胸にダビデノ星のペンダントを見たのだった。

空腹だろうと野営に案内してくれた。

テレジェンシュタット...

カールとフエルシャーはテレジェンシュタットの収容所に
送られて来た。
マリアと言う女流画家が出迎えてくれた。

町には銀行もパン屋も、コーヒーショップも映画館もあったが、
それは赤十字の視察団に見せる為のもので、
見せかけだけであった。
これだけ優遇されていて、ユダヤ人は何が不満?
と思わせるためであった。
しかし、
その中は、
飢えた子供達や病気の老人達が収容されているのだった。

アトリエと言ってよいくらいの部屋に案内された。
もうひとりフライという画家がいた。
カールは絵を見せてもらったが、
やはり天国のような収容所の絵を見せられた・

我々は馬鹿なまねだけしなければ生き延びられると
フライは言った。

本気でこんな絵を?  と聞くカールに、
フライは
隠してある絵を戸棚から出してきて見せてくれた。

その絵はまさに真実の収容所の姿を描いた
何十枚の絵だった。

ぼく達は、折衷派だから
いろんな画法が出来るのだとフライは言った。
その絵は強制収容所のありさまを、
力強く描いたものだった。
何百という頭蓋骨の絵や、処刑に有様、飢えて亡くなった老人の絵を
描いたものだった。

画家というものは物の裏が見えなくては駄目だとも言った。

ルデイとヘレナはパルチザンのボス、サッシャから
各地のユダヤ狩りの話を聞かされ、彼等の仲間となって
行動を共にする事にした。

そして、夜が明けて、ヘレナとルデイは彼等の立会いのもと
結婚式を挙げた。
そうしているうちにもナチがそこに迫ってきた。
見つかった独軍の兵士を殺す事にもなったルデイであった。

ネーベ大佐が総監に処刑場を見学に案内した。
もちろん、エリックもフローベル大佐も一緒だった、
銃殺刑を見た総監はさすがに吐き気を催し、
ハンカチで口を押さえた。

君たちは迷ってはいかん。馬を生かし、シラミを殺すのは
だれでも同じ考えだ。
責任はこの私が取る。
だが銃殺はまずい。他の方法を考えろと。

エリックはネーベとフローベルに
”総督にあんな処刑を見せるとは軍曹に格下げだ”と
あくまでも冷ややかにののしった。

フローベルはエリックに
”我々は君の干渉にうんざりしている。”と返した。
”長官のペットが。しかもユダヤの混血の”と吐き棄てた。

フローバルは”ヤツを何とかせねばな、協力するか?”と
ネーベに言った。ネーベは頷いた。

ハインリッヒ長官に匿名の密告書が届いた。
エリックが純血ではなく、母親がユダヤの混血だということ。
父親がコミュニストだのいろいろと書かれてあった。

釈明し、否定するエリックであったが、長官は調査をしてみれば
わかることだなと言い放った。
100パーセント信頼を受けていると思っていたエリックは
ショックを受けた。

エリックはネーベにカマをかけ、匿名の主はフローベルだろうと
持ちかけたが、ネーベは乗らなかった。

ネーベは、そんなことより、刑の能率化のほうが先であった。
一酸化炭素の運搬の実験をしたが効率が悪い。
化学者の知恵を借りようということになった。

カールは母親のような気がするマリアとよく話をした。
両親の事、インガのこと、弟ルデイのこと。
特にインガの事は悩んでいて、許せない気持ちと
恋しい気持ちが交叉していたカールはマリアのなぐさめに
心が落ち着いた。

ヘレナとルデイは野宿の床で、
戦争が終わって自由になったら
パレステイナに行って暮らそうと夢を語り合った。

ワルシャワ...

ワイス、モーゼ達は銃を手に入れるために苦心していた。
同じユダヤ人でも足元を見て高く売りつけてきたし、
数が手に入らなかった。
アローンも子供だが一人前に仲間に入れてもらい
頼りになる道案内人だった・

ファレッツ社からガスを買おうという話を
総監、長官、エリック、アウシュビッツ所長ヘムは決めた。
今まで軍の恩恵を受けている会社だから
いやとは言わないだろう...。

総監はしつこくエリックの身元調査をといったが
それよりもアウシュビッツ計画の方が先だとも言った。

エリックは毎晩眠れなかった。

匿名の中傷、長官への不信、仕事が一人歩きしてゆく怖さ。

元々、なりたくてなったナチ党員ではなかった。
気の弱い、ただの一人の男だった。

長官に気に入られ、レールの上を歩いた結果だった。
そのレールに乗せたのは、他ならぬ妻マルタではあったが、
決めたのは自分自身である。
妻の前で泣きじゃくるエリックの
どこにあの鬼が潜んでいるのだろう。

あんな大仕事をしたあなたよ、自信を持つのよと
煽った。
エリックは言った。
”ドイツは負けるよ。時間の問題だ。アメリカが参戦した日から・
もう、終わりだ。ソ連に勝つには英米仏を味方につけなければ
無理だ。それは不可能だ。
いいかい.
いつか我々の行動に対し、途方もない噂が
流れるかもしれない、
そんなときは子供にわたしはドイツの忠実な公僕だったと
伝えてくれ、”

”フランクもヒムラーもヘムもみんな強い。
信じ、行動し、従順だと
平然と言っているでも、私には・・・と
泣き崩れた。

自分を疑ってはいけないわと妻はエリックに言った。
夜になるとエリックは怖さに慄いていたのだ。
人間夜の闇の中では反省や怖さなどいろんなことを
考えるか、日が昇るとすっかり忘れ、
日常に戻るものだ。
エリックも敵意の中だとはいえ、
汚れた仕事でもその中にいる時だけ、
怖さを忘れる事が出来たのではないだろうか。


その時電話が鳴った。
ハイドリッヒがプラハで車ごと爆破され亡くなったと。
呆然とするエリックに
妻マルタは囁いた。”チャンスよ。長官の後釜になれる。。。”

インガは毎日、教会にお祈りに行っていた。
カールの無事を祈りに。
ミュラーはいまだにインガを愛していてつけ廻した。
インガはミュラーにテレジェンシュタットの
収容所に入れてくれと頼んだ。
どんな罪でもいいから、カールの傍に行きたいと。

エリックはファレッツ社を訪ねた。

例のガスを手に入れるためと、効能を知る為に。
何に使うかは向こうも暗黙の了解で知っていたようだ。
チュクローンB... というその薬品は。
粒になっていて、空気に触れると蒸発する。
普通はネズミやシラミ退治に使うもので、一酸化炭素よりは
苦しまずに...と言うことだった。

アウシュビッツのヘム所長に≪消毒剤≫と伝票をつけて、
送ってくれと頼んだ。

一粒、プレートに出してもらうと、それはもうもうと
蒸気をあげ、息苦しくなり、エリックは満足した。

ヘム所長に報告し、量の打ち合わせをするエリック。
噴出し口と排水口、ドアで部屋を密閉して、
チュクローンBを置けばあとはガスになる。
チェルノ収容所、ヘルシェック、ソーヒボルト、
アウシュビッツ、トレプリン収容所、
幾らでも要るぞ。

値段は?

大量に入れれば下がる...。


新しい長官、カルテンブルナー将軍が着任した。
エリックにはそのポストは回ってこなかったようだ。
そう甘くはない。
二人きりになると、
彼は毅然と言った。
私は優雅な混血のハインリッヒとは違う。

彼の葬式で混血の子供の顔も見た。

彼は臨終の床で、ユダヤに泣いて詫びたそうだ.と皮肉った。

長官の弁護をするエリックに長官は人のことより

自分を弁護しろ言った、釈明するエリックに

”長官は私だ。”とカルテンブルナー将軍は
ハインリッヒのようにおまえを甘やかしはしないぞという
意味をこめて、
冷ややかに言った。

君には黒星がある。経歴に嘘がある、それに

苦情も多い、密告屋、陰謀家などとな。

それだけの釘をさすと本題に入った。

   彼にあるものを見せた。

なんとそれはカールや
フライが書いたあの真実の収容所を描いた
  絵  であった。
テレジェンシェットの絵?とエリック。

プラハの情報部員から入手した。
”ひどい絵だ”とエリック.

赤十字の調査員が見たら大事だ。

これを描いた犯人を探し出せ!

他にもあるはずだ、必ず突き止めろ!”

慌てて出かけるエリックだった.....

つづく


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≪ホロコースト≫第五回

   配役

Dr.ヨセフ.ワイス        開業医
  ベルタ.ワイス        妻
長男、カール.ヘルムス.ワイス. 商業デザイナー 
妻  インガ.ヘルムス.ワイス  妻  
次男 ルデイ.ワイス
長女 アンナ
叔父モーゼ           ワルシャワで薬屋を。
エリック.ドルフ        ナチ.親衛隊の大尉
マルタ.ドルフ           妻    
ハイドリッヒ長官
ヒムラー.アイヒマン大佐
フローベル大佐
ネーベ大佐

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出演 メリナ.ストリープ = インガ.ワイス
   マイケル.モリアーテイー = エリック.ドルフ
   ジェームズ.ウッズ = DR.ワイス
   トム.ベルー   = ルデイ.ワイス
   ローズマリー.ハリス = ベルタ.ワイス 
   ジェームズ.ウッズ = カール.ワイス   
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テレジェンシュタット収容所....

カールたちは、いつものように描きたくない絵を描いていた。

そして、カールが何気なしに、
真実の絵を整理し始めると、四枚足りない。
どうしてだ?
すると、フエルシャー(60歳の人のいいオヤジ)が、
チェコの警官に頼まれて売った..と言うではないか。

フライは君にぼくやカールの絵を売る権利があるのか?と
怒鳴ったが、カールは人の目に触れなければ意味がないと
落ち着いていた。

フエルシャーはひと箱のタバコとジャムが
欲しかっただけだと泣きそうな顔をして言った。

この人のいいオヤジは状況を全く理解していない。

しかし、こんな毎日の状況下で、
フエルシャーをどうして責めることが出来ようか。

ゲシュタポに見つからないのを祈るだけだ....とフライ。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。
カールが見に行くと、インガがそこに立っていた。
やっとの事でここに来させてもらったのだ。

カールは何故来た?と問うた。
わたしはあなたの妻よ、愛しているから、傍にいたいから来たの。
フライたちは席を外した。

ふたりはゆっくりと話し合い、カールのわだかまりも消え、
しっかりと抱き合った。

あくる日、ついに、兵士がどやどやと入ってきた。
隠してある絵を探しに来たのだ。

しかし、絵はどこからも出てこなかった。

アイヒマン大佐は、絵の在り処を吐くまで痛めつけろ、
そして、外部に持ち出したものを探し出せといった。

三人の拷問は始まろうとしていた。
独房に入れられた、カールとフライは隣の部屋に声を掛け合い、
いつかイタリアに行こうぜ、
ミケランジェロのダビデがみたい、
フランチェスカもだ..と励ましあった。

年寄りのフエルシャーが気弱になっていて励ますのもあった。

フエルシャーが怖さのあまり、口を割らないように必死で
話し掛けた。

拷問はひとりづつ、鞭でたたくというものだった。
腎臓の弱いフエルシャーは持ちこたえる事が出来ずに
死んでしまった。

アイヒマンはもっと痛めつけろといい、
フライも死んだ。

カールは両手をつぶされてしまった。
足もつぶされてしまった。

しかし、とうとう吐かなかった。そして命だけは
助かった....。


インガとマリアは預かった絵を筒に入れて土に埋めた。
インガはこんな絵が役に立つの?と聞いた。
マリアは、真実を伝える為よ。
インガは何度この絵を差し出してカールを
救おうと思ったか知れないわ...。
マリアは
   ふたりはこうする事を望んでいるのよ...と・


ワルシャワ...

長官は評議会の委員である、ヨセフ.ワイスとモーゼに
チェコのキャンプに移るから午後4時までに
駅へ人々を集めろと命じた。
チェコのキャンプとは全く嘘で、
すべてアウシュビッツ行きだった。

シオニストたちに混じって、モーゼは潜んで残る事にした。
そのころ、シオニストメンバーのひとりザルマンは
ベルリンの放送局に真実を話し、放送をと頼んだ。
ラジオを聞くが放送はされなかった。
ことがあまりに大きすぎ、局も信じられないのだ。

ワイスは独軍の許可無しに駅前に臨時の診療所を開き、
アウシュビッツ収容所へ送られる人の中から
何人かでも遅らせようと駅で待つ人たちを病人に仕立て、
診療所へ連れて行った。
その中に印刷屋のローイ夫妻もいた。

しかし、それも許可無しでしていること。
結局独軍は関係者をアウシュビッツへ送れ!ということになり、
このことは徒労に終わった。

ベルタが授業をしていたが、
駅に行くように呼び出しがかかった。

子供達に立派な人になってねと言い残して駅へ向かった。

駅で待つ、夫と、ローイ夫妻とその 汽車 に
乗り込んだのであった。

夫は妻だけでも..彼女は通訳の役にも立つからと
願い出たが、ベルタは私から逃げないで、あなたと一緒なら、
何にも怖くないわと笑いながら乗り込んだのだ。

ベルリン...

作業はすべて、ユダヤの特別班が処理をする。
処刑された後の衣服の分類。
そのものたちは?
いずれ死ぬ..。とエリック少佐は長官に言った。

働くものは右、特別班は左。

チュクローンB、投下前、投下中、終了・

死体を搬出し、歯を抜き。

ヘム所長は盗みには気をつけているのか?

火葬炉、コンベア実験中....と、

そのスライドを見せながら、得意げに長官に説明していた。

エリックは妻の病気を理由に
ベルリン転属を願い出たが、
君は現場向きだと、
そして妻の病気と現状とどっちが大事だ?と
撥ね付けられた。

マルタは誰かにエリックの仕事の調査をさせたようで、
その回答の手紙を読みながら、
エリックのやる気のなさをたしなめた。

エリックはこんなひどい仕事と知って
妻が驚き軽蔑すると思っていたのに、
それどころか、やり遂げろという。

弱気になっていたエリックは再び感動し、
わたしは立派な軍人だと言った。

それでも、妻は”わたしたち、罰を受けるのかしらね”と
つぶやいた。

フレッツ社専属の大学教授が
アウシュビッツ収容所にやってきた。
ガスの使い方を見学するのと、仕組みを見るためだ。

例のシャワー室を見て、合理的だ!と言った。
現実に今、人々が入ろうとしているのだ。
5分で済む、シラミ退治だと言ってドアを閉めた。
焼却炉、42基。

この匂いをどうにかして欲しいと、ヘム所長。

匂いでばれてしまう、たいした秘密だとヘム。

そしてチュクローンBを屋根から入れる。
覗き穴から見てみろというヘムに、教授は
恐る恐る覗いた。

”何たる光景か。まるで、ダンテの地獄を見るような、
そしてユダヤ教の祈りのような。。。。”と息を呑んだ・


ウクライナ...
ルデイは
サッシャと一緒に独軍を襲っていた。
弾薬や銃を盗む為に。
彼等はある計画を立てていた。
逃げる途中で、ルデイは敵の流れ弾に当って負傷した。
ヘレナはサッシャに銃や弾薬よりも夫の命が大事だとわめいた。

医学の心得があるサッシャは、彼の体から
うまく弾を取り出した。
ヘレナはこれからは私も一緒に行動するとルデイに願った。

どうして命をかけて戦うの?と聞くヘレナにルデイは言った。
敵に臆病者でない事を知らせたい。

テレジェンシュタット..

アウシュビッツに送られることになったカールは
三十分だけインガと会う事を許された。
つぶされた手を見たインガは悲しさに言葉もなかった。
そしておなかに赤ん坊がいる事を伝えた。
こんな世の中に生まれる子は
可愛そうだから産むなと言ったが、
インガはどうしても産みたいと。
マリアも産ませてあげなさいと。
”顔も見れない”と号泣するカールであった。

カールは死の収容所へ向かうトラックに乗った。


ワルシャワ...

モーゼ達は地下に潜って、着々と準備をすすめていた。
親衛隊と撃合う為だ。
銃も集まった。その情報を入手した兵が来たのを
手榴弾でやっつけた事から火が着いた。
アローンも手榴弾を命中させた。

アウシュビッツ・・

ワイスとベルタは男女別々の棟に入れられたが
偽造パスでワイスは妻に会いに来た。
先のない二人は将来の夢、
カールやルデイと暮らす夢を話し合った。

15,6歳の女の子がいた。

両親はすでにガス室で亡くなった。

その少女にアンナの面影を見たベルタは
言葉も失ってしまったその少女に
語りかけ、優しく抱いた。
野ばらを歌って聞かせた。

ベルタもシャワー室へ行く日がやってきた。
その子を抱きしめながら歩いた。
シャワー室の前にはユダヤ人の弦楽四重奏団が
演奏していた。

何も怖くない、覚悟は出来ていた。穏やかな顔で向かった。

その脱いだ衣服の焼却をカールがやらされていることなど
知るはずもない。カールもここに両親がいる事など知らない。

”さよなら、ヨゼフ”と言ってベルタは少女を抱きしめた。

つづく..
駄目ですね、書いてて涙が出てきました。

明日はいよいよ最終回です。

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≪ホロコースト≫最終回

ワイスとローイは道路工事の作業をさせられていた。
現場監督のマルクはDR.ワイスに気付いた。
ローイも一緒だった。
具合の悪そうなふたりの仕事振りに彼は手を取って、休ませた。
感謝しますと礼儀正しいワイス。

エリックがやってきた。
コーヒーでもと勧められるままに休憩所に寄ったエリック。
あの道路は伝染病を防ぐ上で重要ですとエリック。
ここは病人だらけですから。

心の重い病気、管理をしている君達の方がな、
とマルクは言葉を投げつけた。
お得意の義憤ですかとエリック.

君等はユダヤ人を殺しているに過ぎん。
しかも嘘をつき裸にしてから殺す。

必要だからやっているんですよ

人の尊厳すら認めんのか。
裸の女を見て笑う隊員

彼等は罪人です、裸にするのは、衛生上の理由からです。

”ワルシャワゲットーが立ち上がった。
武器も無く≪支配民族≫に刃向かってだ。それこそ神の摂理だ。”

ユダヤ人を数百人も使っているそうですね。とエリック・

だから?

彼等は特殊処理の対象です。
代わりにソ連人を回しますよ。

ノー

彼等に味方するんですか?
彼等を生かせば帝国が危ない。

オヤジさんが嘆いているぞ。
何人殺せば気が済む?100万、200万?

中止すれば罪を認めたことになります。
続ける限り、それは使命の遂行です、
やがて、世界が歴史の必然と認めてくれる。

腐りきったな!出て行け!”

ベルタを訪ねたワイスは妻の死を知った。
班長は私を責めないで、命令に従っただけよと出て行った。
畜生!ドイツ人め!とローイは何度も言った。
ひどすぎる・
お願いだだれかやつらを止めてくれとローイは号泣した。

ワイスは静かに妻のベッドに近寄った。
家族の幸せそうな写真があった。
その脇のトランクを明けた。中にあったのはピアノの
楽譜ばかりであった。
ワイスは静かにその上に顔をうずめた。
それは嗚咽にもならかった・

ワルシャワ..

モーゼ達は建物に立て篭もり、親衛隊がやってくるのを待った。
今日は過越しの祭りだな、1943年4月19日。
だが、祭りどころじゃないな。
奴等が祭りに来いと拡声器で言ってるぜ、と
モーゼとザルマンはひと時の酒を楽しんだ。

小さい頃儀式はすべて兄がやった。
行けば今度はおれが取り仕切れたのにな。。。。。。

銃殺の前にな
医者が欲しい。

どうしてるかな>兄やベルタは。。。。
兵力は何人だ
400人。
支援は数百人。
残り五万人は震えてる。
明日はヒトラーの誕生日だな。
ヒムラーが我々を送るとヤツ(総統)に約束をした。
死んでも構わんよ、戦い抜けるなら。

そうするうちにも..独軍は出向いてきた。

過越しの祭りを祝おう、出てきたまえと拡声器は叫んでいる
モーゼとザンマルは仕掛けた。
ぞろぞろと近づいてくる彼等を建物の窓から攻撃開始した。
アローンも手伝う。
奥では銃撃戦を聞きながら、ラビの家族が
お祝いの食事をしている。
ラビの祈りにザルマンもいつしか祈りを唱えていた。
激しい銃撃戦の末、独軍は一応撤退した。
窓からダビデの星の旗を出した。
奴等が逃げるぞと喜んだのもつかの間。

ビラを配りに届けようと出かけた青年が兵士に見つかり、
地下道の出口が見つかってしまった。
敵に取り囲まれていた。
”ガス”が匂ってくる。
出ればまだ生きる希望もと言うものたちと
残ると言うものに分れた。
出るものを先導するモーゼ.
。...

兵士は壁に向かって並べと銃を向けた。
みんな手を繋ごうとモーゼは言った。
手を繋いだ瞬間、いっせいに銃声がした。
モーゼもアローンも散ってしまった。

ヒムラーとヘム、エリックは本部のレストランで食事をしていた。

この匂い、どうにかならんのか。とヒムラー・
煙が臭くて食事どころじゃない

日に一万人を焼いている。
どうにもできんね。とヘム。

軍の補給列車まで借りて、ユダヤ人を送り込んだのに
とんだ裏目に出たな。とヒムラー。

その会話を近くのテーブルで聞いていたマルクは
居たたまれなくなり席を立った。

それに気付いたエリックは
聞こえよがしに大きな声で話した。

ヘス、ユダヤ人も労働に?

いや、労働はソ連人とポーランド人だけだ。

ユダヤ人が道路工事に使われているぞ。

バカな、奴等は特殊処理だけだ!

それを背中で聞いたマルクは、キッと唇をかんで振り向いた。


マルクのところへ兵が来て、ソ連人をよこすから、
ユダヤ人を連れて行くと...。

ワイスもローイも覚悟した。
ローイは博士に手を繋いでくれと言った。
抱き合うようにして歩いていく後姿を
なす術もないマルクは悲しそうに見送るしかなかった。
死のガス室へと...


ウクライナ...

ルデイたちは、道路にダイナマイトを仕掛け、
独軍のトラックを待った。
スイッチに手を置いたが、敵は一歩手前で気付き、
そこのダイナマイトに向かって発砲した。
失敗だ。
逃げた。
散り散りになったが、
ヘレナが弾にあたり、即死だった。
ヘレナ、ヘレナと呆然とするルデイの背後にも銃が..

銃で殴られた事までは覚えていたが、気が付くと、
そこにはどうも言語の違う輩の声がする。

収容所の中だった。

囚人達にスパイだと疑われたが、パルチザンだと言うと、
ひとりが、パルチザンの面構えだと言って信用してくれた。
彼等は、ここはポーランド東部、
ソビホール収容所の中だと言った。。

彼等も囚われていたのだ。

我々は赤軍51師団だ。

ここでは、日に2000人が死ぬ。
ドイツ人の使う枕にはユダヤ人の髪が...とひとりが言った。

ジトミルの親衛隊を奇襲、クレムヒ司令部を攻撃、
だがトラック奇襲に失敗したと経緯をルデイは話した。

ベルリン...

ユダヤ人の反乱が噂されているがと総監。
エリックドルフは
皆の話を黙って聞いていた。

熱意が薄れたかと総監。

将来の収容所解体について諸君の意見を聞きたい。
別に敗戦ではないが。

取り壊し?

そう任務は終わり、ユダヤ人は消える。
よって処理施設も抹消すべきだ。

お言葉ですが親衛隊隊長(総監)、何故、ですか?

つまり...。と総監。

何故証拠を消すのです...とエリックが口を開いた。

何故ハビヤールの10万の死体を焼いたのです。
何故解体を?
収容所は人類への奉仕の記念碑として残すべきです。

少佐、君は何か誤解しているようだが、と総監。

エリックは身を乗り出した。
総統もおっしゃっています。我々の任務はキリストの使命を
全うする事だと。

そのとおりだ。しかし我々を誤解するものも出てくるだろう。

世界中に真実を知らしめるのです。
記録映画や写真を公開するのですよ。
そして論理的に説明するのです。如何に道徳的であったか、
民族の必然であったか。
犯罪ではありません。
世界の歴史の流れに沿ったまでです。
哲学者聖職者が我々を指示するでしょう。
アウシュビッツには何の非もない。弁護士の私が保証します。

犯罪だと心の中で恥じていたはずの将校たち5人は
この狂った演説に唖然とし、だが、自分達を納得させる
ものがあった。

★狂っているものにだけ理解できる論理であった。★

何も恥じる事はありません。
たかがユダヤ人の命だ。それより世界に示すべきです。
つまり、我々は文明を守り、
ユダヤの世界支配の陰謀を防いだのです。

我々だけに.....勇気があった....

総督が心なし笑ったような..その笑みは..?

エリックはそれだけ述べると出て行った。

残った将校たちは
”確かに我々は任務を遂行してきたのだ。
わが民族の為に。精神を侵されてなどいない。
今も心優しい人間だ。誇りに思う”と囁きあった。

アウシュビッツ....

”カール、カール”と叫ぶものがいた。”覚えているか?
ブッヘンベルトの石切り場で一緒だった.....

だが、カールはもう人の区別もつかない。
”父母がここにいたんだ、”と生きているのが不思議なくらいだ。
目の下の隈にはもう、死相が出ている。
フラフラと最後の力を振り絞ってここまでやってきた。
”何て手だ”と哀れむ彼に、
”思い出したワインバーグだ!”とカール。

処刑も、もう終わりだ。よく生き延びたな!

紙と鉛筆を貸してください。!

ワインバーグは紙と薪ズミを渡した。

つぶれた両手で必死に描き出した。
自分の今の姿を....


ソボヒール...収容所...

ルデイは赤軍派に混じって収容所の破壊を実行に移した。
銃を奪い、見張りに向かって乱射し、一丸となって攻撃した。
見張り台を狙って手榴弾を投げた。
スポーツで養われた彼の得意技だ。
爆破が主で、敵はすぐに落ちた....

もっと東へ行くが、一緒に来ないかと言う赤軍派のリーダーに
いや、両親を探すと言って、別れたルデイだった。

そして、アウシュビッツには米軍が来たのか
”外へ出て整列しろと聞こえた。
これは避難であると・・・・

ワインバーグは”カール、カール!”と呼んだ。
だが、カールは鉛筆を親指と人差し指に挟んで息絶えていた。

”今になって...?何故だ!”とワインバーグは涙した。
そして、絵は貰っていくよ。と言って
自由の外へ飛び出した。

米軍の将校の前に私服姿のエリックが座っていた。
君が収容所のガス処刑の監督だった事は明らかだ

私はベルリンの命令に従ったまでです。
声は詰まって出なかった。
あれだけの熱弁を振るったエリックはもう言い訳だけの
人間だった。

速記官を呼んでくる、君をユダヤ人に引き渡したいくらいだ
という将校の離席に、
エリックは隠しておいた毒薬の粒を飲んで果てたのだった。
あっけない最期だった。

ご主人は名誉の戦死です。という手紙を読むマルタに

戦犯として取調べ中に自殺した事を伝える叔父マルク。
それでもマルタは主人は英雄よ、嘘を言わないで...

本当は分っていても否定する事しか出来ないマルタであった。

我々が何をしたか。。おれはもう黙りはしない。
エリックは英雄なんかじゃない。
子供達にもそう言って帰っていった。

アウシュビッツの町で、ルデイを見つけたインガ。
ふたりは再会に喜び抱き合った。

インガの傍にはDR,ワイスの名..
ヨセフと名づけた男の子がいた。

収容所でカールと両親の事を聞いてきたとルデイ。

”私はドイツ人よ、憎い?”と聞くインガに

”いや、だれも憎くない、ぼくは白紙だよ”

カールの絵を見せて貰ったルデイは力強い絵だと感動した。

これが最後につぶれた手で書いた絵よ。
ワインバーグという人が届けてくれたの。
プラハの美術館に寄付しようとおもっているとインガは言った。

”ぼくもカールも父の期待を裏切った。”

”お父様はふたりをとても愛してらしたわ”

元気で...と別れた二人であった。

この先の事は考えていないルデイは
子供達がサッカーをしているのを
見ていた。

ある人から声をかけられ、ルデイのことは知っていて、
頼みがあると言われた。
ここではもう、だれもがルデイの事を知っていた。

あの子供達40人をパレステイナまで届けて欲しいと。
パルチザンほどではないが、かなり危険な仕事だ。
ルデイは引き受けることにした。

そして、サッカーをする子供たちに向かって
颯爽と、”そんなパスじゃ駄目だ!”と
ボールを蹴る彼の明るい顔が

空に向かい...ジャンプした・・・


ワイスの期待を裏切ったぼく達だと、ルデイは言ったが、
あれだけの試練と悲しみを受けながらも、
”ぼくの心は白紙だ”と言い切ったすがすがしさ、
いさぎよさ、

そして命をかけて描ききったカールの生き様は、
ワイスもベルタも
きっとすばらしい息子を持ったと誇りに思っている事でしょう。

終わり。


敢えて、この感想は書かずにおきます。
読まれた皆様それぞれが胸の中で感じ取ってくださいませ。
6日間,ありがとうございました・



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