旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

アナベラ。。ヴィヴィアン・リー


アナベラと

1.アナベラの≪巴里歳≫と≪地の果てを行く≫
2.ヴィヴィアン・リーの≪美女ありき≫

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1.アナベラの作品


さて、ハリウッドが快調に飛ばしている中で
フランスでは第一次黄金期の幕開けで、
ジャック.フェデー監督、ジャン.ルノワール監督、
ジュリアンデヴィヴィエ監督、ルネ.クレール監督の
四大御所の大活躍が始まりました。

今夜はアナ.ベラに焦点をあてますので、
監督はもちろんルネ.クレールの≪巴里祭≫と
ジュリアンデヴィヴィエの≪地の果てを行く≫でしょうね。

私はこの二本と北ホテルでの彼女の作品を見ていますが。

1910年フランスの片田舎生まれ。
1926年16歳のデビューである。

2,3の作品に出た後,ルネ.クレールの≪ル.ミリオン≫で
その愛らしい容貌を世界に知らしめたようである。

1933年の同監督の≪巴里祭≫でフランス映画界の
不動のスターとなりますね。

ルネ.クレール監督は下町の詩人と言われたように
≪巴里の屋根の下≫(なでしこでも紹介しましたね)

≪リラの門≫など,下町の市井の人々を淡々と描きましたが
下町の人情と笑いを描き、それは芸術ともいえる映像と相まって
すばらしい感動を与えてくれます。

≪巴里祭≫は≪巴里の屋根の下≫の続編とも取れる作品で
前者の作品で登場する田舎から出てきたポーラという女性が
同じ女優さんで同じ役で登場。

最初は可憐な女の子でしたがこの作品では
巴里の垢に染まって悪の情婦に身を落としています。

アナベラは母を養う花売り娘として
その可憐な容貌,容姿を披露しています。

巴里祭。。。。作品ではこの祭りは下町の市民にとっては

革命記念日という行事とは全く関係なく
ただただ楽しい祭りを酒とダンスで楽しむばかりなのである。

ブルジョワたちは別荘に避暑に出かけ留守。

残る下町の市民は恋人や夫婦や家族で祭りを楽しむといった
当時の巴里の町の祭りのなかで起こるロマンスを描いています。


タクシー運転手二人とその片割れの恋人として
健気で純情なアナベラが恋をして、ポーラという情婦を絡め、
一時は悪に手を染めた恋人とめでたく
ハッピー.エンドの物語で、
これもストーリー的には
これといってドラマティックでもなんでも
ありません。

見所としては
アナベラという
フランス映画トーキー最初といっても良いころの
スターの
かわいらしさとルネ.クレールの画期的な映像でしょう。

日本の小津監督はルネ.クレールの崇拝者で彼の映像技法は
小津作品に随所に見られます・

そして、デヴィヴィエの≪地の果てを行く≫では、
モロッコの原住民の歌姫に扮し、そのメークは同じアナベラとは
とても思えない妖艶な魅力に溢れていて、

ジャン.ギャバンの恋人,妻となっていく・・

ドラマチックなストーリーは感動的です。

巴里で罪を犯したギャバンが
スペインに逃れ、それからモロッコへと渡り,
外人部隊に逃げ込む。

彼を追って刑事も外人部隊に入隊するわけだが
もちろんギャバンは知らない。

外人部隊は素性の知れないもの、罪を犯して逃げるもの
いろんな種類の人間の溜まり場。

それは過去を問わない格好の逃げ場所なのだ。

ギャバンには一人の友人ができるが
ただ、ひとりことごとく彼に突っかかる人物がいた。

アナベラ扮するアーシャは魅力的な踊り子で
ギャバンは一目ぼれ。
彼女と結婚する。
しかし、土着民の叛乱で二十四人の部隊で
闘うも
次々と仲間達は死んでゆく。

アーシャは彼に突っかかっていた男が
ギャバンを追っている刑事だという
情報をつかみ、彼に教えた。

しかし今となっては
敵味方といっても同じ敵に立ち向かう仲間である。

援軍が来た時には最後の二人しか残っていなかったが
ギャバン=ピエールも命を落とした。

彼の屍に取りすがって泣き崩れる刑事は
近づいてくる援軍に向かって立ち尽くすのであった。

明日のない外人部隊での男の友情を描いた名作中の名作である。
アーシャに扮するアナベラはここでは
しっかり女優となって我々の前に現れました・
作品も名作、
トーキー最初の女優達に並ぶアナベラの魅力を一度
味わってくださいませ。

1933年度作品。

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2.ヴィヴィアン.リーの≪美女ありき≫

さて,今夜はヴィヴィアン.リーです。

ヴィヴィアン.リーの≪哀愁≫を見たときに、
ああ、≪君の名は≫はこの作品からヒントを得たのだなあと
思ったものだ。

すれ違いドラマというのが昔、流行ったが、
この作品がベースとなったのは間違いないと思う。

今夜は順番的に言うとベティ.デヴィスを先に紹介せねば
ならないのですが、ヴィヴィアン.リーをとりあげます。
ベティ.デヴィスの作品は
なでしこでは
  ≪イヴの総て≫と≪何がジェーンに起こったか≫を
取上げていますのでそちらをお読みくださいませ。
それとアナベラの紹介でひとつ書き忘れた事。
彼女は一時タイロン.パワーと結婚していました。

さて、ヴィヴィアンの経歴。

1913年、インドの別荘で生まれる・

両親の許を離れ、ロンドン、イタリー,パリと学校を移り、
演劇を学ぶ。
その後また、ロンドンの王立劇場で演劇を学び、
弁護士と結婚。

1934年、映画デビュー。

1939年に≪風と共に去りぬ≫で最初の
アカデミー主演女優賞を受賞している。


1935年にロンドンで≪無敵艦隊≫に出演。
ローレンスオリヴィエ卿と共演、運命的な出会いをするのである。

舞台≪ハムレット≫で共演。二人の間には
益々恋の炎が燃え上がるのです。

オリヴィェが≪嵐が丘≫出演の為アメリカに渡ると
彼女も後を追った。
そしてたまたまヒロインの決まっていなかった
≪風と共に去りぬ≫のプロデユーサー、
セルズニックにオリヴィェが紹介し、
たちまちヒロインに決まったそうだ。

二人にはそれぞれ妻と夫があり、
恋の成就は難しかったようである。

まさにヴィヴィアンは
スカーレット.オハラのために生まれたかのように
ぴたりとはまり
みるみるスターの座にのし上がった。

1940年にふたりとも運良く離婚が成立し、
晴れてふたりは結婚。
このころがヴィヴィアンにとっては生涯で最高に
幸せであったに違いない。

そしてふたりは再びロンドンにもどり、
今夜紹介する≪美女ありき≫に共演するのである。

その後、結核を患い、オリヴィェは海軍に従軍。

長い闘病生活を送るが帰還した彼の手厚い看病で
健康を快復、1951年、≪欲望という名の電車≫でまたもや
オスカーを手にするのである。

≪欲望という名の電車≫は
過去になでしこでも紹介していますので
ご覧になってくださいね。

この頃からオリヴィェに新しい恋人が出来、
ついに破局を迎える。

それからは彼女のスター人生は下降線を辿り、
1967年、ロンドンのアパートで結核に再び冒され、
誰にも看取られることなく,淋しく亡くなったという。

波乱万丈の人生ではあるが、あの美しさとたしかな演技力は
世界中のファンの脳裏に焼き付いていることだろう。

リズ.テーラーが現れるまでは、
世界一の美女と言われたヴィヴィアン.リー。

しかし、これも好みの問題で
彼女はやはり世界一の美女である。

ちょっとリズと比較してみますが、
リズの美貌とリーの美貌は甲乙つけがたい。

リズはあれだけの美貌を持ちながら
いつも心の中は不安で自分に自信のない役が多い。

そして見かけの整いすぎた美貌から
敬遠されがちなところがあるが
その見かけとは反対に、女らしく、
男性を包み込むような優しさがある。

そして男性がどうしても寄ってくる。
彼女の意思とは関係なく。

だが、ヴィヴィアンは違う。
自分の欲しいものを絶対に手に入れるという積極的で
傲慢さえ感じるタイプの役どころが多い。

強い女性であり、それが失敗に終わろうとくじけることはない。

自分に都合のよいように言い聞かせ立ち直るタイプなのである。

どちらを可愛いととるか?
いずれにせよ,あれだけの美貌が
あるからできるワザであろう。


さて、世紀をかける恋≪美女ありき≫とは。。。

夜霧に濡れたロンドンの下町、濡れた石畳を
身なりの粗末な中年の女が歩く.
ワインを盗もうとして女エマは警察に捕まった。

その場を助けようとして暴れまくった女たちと一緒にエマは
留置場にいた。

名前を聞かれ、”ハミルトン夫人よ”と応えると

女は 笑って ”負けたわ、本名は言いたくなかったのね!
   ハミルトン夫人は世界一きれいなひとだと
母親がいっていたよ”と言った。

  ”10年前の顔に戻りたいわ....後一度でいいから。。
  女は”続きを聞かせてよ、嘘でもいいから。。”

     ”わたしはナポリに行ったの,美しかったわ。。”


   回想シーンから。。。。始まる。

元々下町のちょっとした美人に過ぎなかった酒場の女エマが
ナポリに在住のイギリス大使の甥と知り合う。

彼は博打好きで借金のために叔父に彼女を売り渡すのである。

ナポリで待つように言われて
母親と共にナポリのハミルトン大使のもとにやってきた。
作戦は上手くいったかのように
思ったが、
どっこい騙されたのは彼女のほうであった。

だが一晩寝ればすっかり昨日までの事は忘れ,
ちょっと年は取っているが、
イギリス大使ハミルトンの夫人になることを
さっさと決めた。

ここにいれば、贅沢はできるし,欲しいものは全て手に入る。

彼女は元々それが狙いであったから、決めるのは早かった。

ところが運命の人に出会ってしまう。。。。
まるで実生活そのままに・


ワーテルーローの戦いで
ナポレオンを破ったあのイギリスのネルソン提督が

ナポリに寄港し、大使の邸へ招かれてきたのである。

ふたりはひと目遭ったそのときに恋の炎が燃え上がった。

人目を忍んで安酒場ならば分るまいと
逢瀬を重ねるが、
ネルソンの息子も海軍兵士として一緒に来ている為、
彼と何度もその現場で会ってしまうのである。

息子はネルソン夫人に逐一報告の手紙を書く。

そして、ハミルトンもうすうすと気付き始める。

そうなると二人の恋は益々燃え上がるのであった。

1799年の大晦日。
バルコニーで熱いキスを交わし、その最中に世紀は代わり

1800年を迎える。まさに世紀を駈ける恋なのである。

  ”僕達は二つの世紀にわたってキスをしたね”

 ”ああ、あなたがいた古い世紀はなんて美しかったのでしょう”

ナポレオンとの長い長い戦いで戦果をあげた
歴史上の英雄,ネルソン提督のスケールの大きなセリフですよね。.

やがてロンドンに凱旋したネルソンを待つ民衆に
手を翳す彼の横に
妻も並び、
エマは初めてネルソン夫人に会った。

無表情な夫人の前でエマは不安を覚えた。

国民にとってかけがえのない人物ネルソン。
ふたりに未来はない、離婚など考えてはいけないと
エマはネルソンに気持ちを伝えた。

上院議員夫人達は彼らの関係に興味を持ち、
ひそひそと囁き楽しんだ。

上院での演説の後、
エマは倒れた。どうやら妊娠しているようだ。
夫人は夫を残し
馬車を走らせたことから、夫婦はとうとう爆発。

夫をののしった。身を引いても離婚は一生しないと。

エマは子を産み、架空の人物を父と届けて育てた。

無論ハミルトン家を出たが離婚は、まだしていない。

母と子を抱えた生活は楽ではなかった。

ネルソンに迷惑をかけたくないエマは真実を隠した。


病に倒れたハミルトンに真実を告げないと遺産が甥の手に渡ると
母の諌言で会いに出かけたが叶わなかった。

そのうち、ネルソンはエマに会いにやって来た。

エマの生活を知った彼は心が痛んだ。

しかし、ナポレオンがフランス皇帝に返り咲いたという。

また、侵攻が始まるだろう。

エマは再び彼に会える事はないだろうと思った。

1805年、
トラファルガー岬。
スペインとフランスの連合艦隊と海戦は始まる。

激しい海戦は続き、ネルソンは敵の銃弾に倒れた。

手の施しようがないという医師の言葉にネルソンは
  ”エマはどうなるのか?”とつぶやき
英国の勝利を聞く前に息を引き取った。
  ”頭髪と所持品をハミルトン夫人(エマ)に届けてくれ”と
言い残して。

 死の知らせを聞くエマは、
しっかりと眼を見開いて報告をかみ締めた。

。。。。。。。。。。。。。。。
   ”それで?”という女の言葉に
 ”それで終わりよ”とあの美しさの陰もないエマはつぶやいた。


ヴィヴィアンは老醜をも、また美しくする。

≪欲望という名の電車≫のブランチがそうであったように。

その美しさは全てを燃焼した美しさだ!。。。

1940年度 英国作品



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