旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

オリビア・デ・ハヴィランド


  1.オリビア・デ・ハヴィランド  ≪女相続人≫
  2.

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1・オリビア・デ・ハヴィランド  ≪女相続人≫


1910年代、1920年代生まれなどと、分けていて、
肝心な女優さんを見落としていましたので、
今夜は1916年生まれの
   オリビア.デ.ハヴィランドと
ジョーン.フォンティーン姉妹を取上げます。

オリビアがお姉さんです。
この姉妹は二人ともオスカーを手にしているんですね。

オリビアは≪遥かなる我が子≫、
≪女相続人≫と二度手にしています。

ジョーンは≪断崖≫で取っています。

両親が離婚した後、
東京にいる父の後を追ったジョーンのほうは
東京の聖心女学院に通った
東京育ちのハリウッドの大スターということになる。

姉オリビアは≪風と共に去りぬ≫のメラニー役で
みなさまご存知ですね。

妹ジョーンの方は≪レベッカ≫、
≪断崖≫のヒッチコック作品でしょうか。

ジョーンの作品はなでしこでは
  ≪旅愁≫、≪わすれじの面影≫を取上げましたね。

オリビア....この人もいい作品に出ているんです。

後日、サスペンス作品で紹介しますが
サム.ウッド監督の≪犯人は誰だ!≫といういい作品があります。

今日は≪女相続人≫というウイリアム.ワイラーの
ちょっと辛口の作品を取上げます。

その前にちょっとだけ。

彼女は≪風と共に去りぬ≫ではまあ、男性の理想の女性像を
演じてファンを増やしましたよね。
あのレッド.バトラーでさえ彼女はマドンナでした。

ただ向き不向きいった相性もあって、男女の愛とは違う
聖母のような尊敬を持って接していましたね。

利口で聡明なんだけれどちっとも、面に出さない奥ゆかしさは
オリビアにはぴたりとはまった役どころでした。

今夜の≪女相続人≫はモンゴメリー.クリフトを相手に
いい感じの演技してますね.え。

さあ、ウイリアム.ワイラー監督の≪女相続人≫を・

原作・ヘンリー・ジェームス.

出演

キャサリン....オリビア・.デ・ハヴィランド
アピール   モンゴメリー・クリフト
 父     ラルフ・リチャードソン
叔母レイモン・ミリアム・ホプキンス.  


1840年ごろのある町。

キャサリン(オリビア.)の父(ラルフ.リチャードソン)は
裕福な開業医である。

キャサリンは内気で外にも出たがらず、
いつも家で、刺しゅうばかりをしている娘であり、
それほど人目を引く容貌ではなかった。

父はそろそろ、娘を社交界にデビューさせたかった。

殿方とのおしゃべりの仕方も知らない彼女に
父は同居している叔母レイモン(ミリアム.ホプキンス)に
彼女の目付け役を頼んで娘を
パーテイーに誘い出すことにした。

何の取り柄もない娘を
哀れむように父はなんとか社交的にしようと願っていた。

化粧っけもなく地味な娘ではあったが、
キレイなドレスも孫にも衣装で
何とか美しくなった。

それでもパーティ会場のきれいなお嬢さん達に混じると
本当に目立たない娘だった。

何とか数人の青年をダンスの相手に選んでやった叔母だが、
反応は芳しくなかった。

そんな中でひとりのハンサムな青年が近づいてきた。

アピール(モンティ)という
礼儀正しい男性でキャサリンは好感を持った。
ユーモアもあり、ゆったりとしたその青年は
キャサリンの心をどうやら捉えたようであった。

毎日、彼女の家を訪問するようになったが、キャサリンは
好意を持ちながらも用心深かった。

ある日、父は夕食に彼を招き、品定めをした。
職はないが、親の遺産で旅行を終えたばかりだという青年に
父は良い感情を持たなかった。

親の遺産のことも信用はしていなかった。
しかし、その頃にはアピールはキャサリンに
プロポーズをしていて、
彼女はその気になってしまっていた。

遺産目当てに娘を狙っていると踏んだ父は
アピールの叔母という人を招き、素性を確認した。

そのおばというヒトには子供も数人いるのに
少しのお金も彼女に与えていないことに不信を持った。

キャサリンの叔母レイモンは、アピールの味方で、
なんとか、キャサリンとアピールを結婚させてやりたいと思い
協力を惜しまなかった。

しかし、あんなに聞き分けのよかったおとなしい娘が
アピールの言葉に
まるで夢見ごこちで彼の言葉を全て信じたことに
父は意外だった・

キャサリンに気付かれないように父はアピールと向き合い、
結婚には反対だとはっきりと申し出た。

キャサリンには母の遺産が年に一万ドル入る。
父が亡くなれば、
さらに二万ドル増えて三万ドルの遺産が
入ることになっている。

明らかに遺産目当てだということを
アピールに暗に仄めかした。

アピールは必死で否定し、
ついにはお父さんの承諾無しには
結婚できませんと言った。

だが、
思ったより娘は情熱的で
父の言葉を立ち聞きし、必死でアピールが
遺産目当てでないことを訴えた。

父は二人に頭を冷やすように半年間、
キャサリンとふたり旅行に出るから、
その間に二人の気持ちが変わらないか
期間を置くようにと計らった。

父とふたり旅行に出かけたがキャサリンの気持ちは
変わらなかった。

父は旅行も無意味だと切り上げて帰ることにした。

いじらしいほどに純粋なキャサリンは一途に彼を愛した。

父はアピールの愛など信じてはいない。

人目を引くハンサムなあの男が
地味で取り柄のない娘に惹かれたなど
信じられなかった。

旅行中にレイモンが自宅に彼を呼んだことも
気にいらなかった。

厳しいが潔癖で礼儀正しい父は
そういうだらしなさも気に入らなかったのだ。

盲目的にアピールを愛するキャサリンと父の間には
次第に亀裂が生じるようになった。

おとなしい、従順な娘だったのに。

父はついに娘に言った。

”どんな娘より勝るものをお前は持っている。が、
やつの狙いは金だ!ほかに何がある.お前に。。。。!”

”そんなひどいことをおっしゃって!”

”お前は信じるまい。
  おまえは今まで世間のことをなにも学んではいない。

  ただひとつ例外がある。
    刺しゅうだけだ!”と父は厳しく言った。

キャサリンは打ちのめされ、傷ついた。
父を憎んだ。

キャサリンはもう父の言うことなど聞く気はなかった。

その夜、
叔母レイニンの手引きで窓辺に来たアピールは
明日、結婚しようと言った。

キャサリンとアピールは激しい雨の中、
愛を確かめ合うように抱き合い、
明日ではなく、
今夜この家を出るとアピールに言った。

アピールはお父さんはきっと許してくれるから、
置手紙を書くように言うと、キャサリンは

”父の力は借りるつもりはないわ、父は私を憎んでいる。
わたしの一万ドルの年収でも充分よ。
一万ドルは大金だわ!”と
言ったが、アピールは”そんな!”と言って、

一時間後に馬車で迎えに来ると約束して帰った。

カバンを用意し、彼女と叔母レイモンはアピールを待った。

だが、いくら待っても彼はついに来なかった。

父と娘は仲たがいをしたまま、日々は過ぎた。

キャサリンは人が変ったようになった。

そして受けた傷で大人になり、
人の心も読めるようになっていた。

父は病に冒され、
余命幾ばくもなかったがキャサリンは冷静だった。

父は亡くなり、叔母レイモンとふたり暮らしていたが、
嫁にも行かない、行けないキャサリンを不憫に思っていた。

ある日、レイモンはアピールがこの町に帰ってきたことを
キャサリンに知らせた。

少し動揺したものの
キャサリンは”逢う気はないわ!”と冷たく言い放った。
その時、ブザーが鳴った。

余計なことをして  と思ったが
”帰ってもらって、逢う気はないわ”と冷たく言った。

応対に出たレイモンが追い返そうとすると
何を思ったかキャサリンは

”お通しして!”と伝えた。

”もう一度やり直そう!”と必死で懇願するアピール。
”あの時はお父さんと君のことを思うとどうしても来れなかった。
もう一度あの夜の約束の通りに結婚式を挙げようという
アピールに、
旅行から帰ったときに
渡すつもりだったルビーのカフスボタンを渡し、
一時間後に迎えに来てとアピールに言った。

このときのオリビアの演技はいいですねえ。

声のトーン、目線。騙した男の心をもて遊んで
その気にさしてしまう。その気もないのに。。。
実に上手い。
静かなる応戦。

純粋な彼女は受けた傷も大きかったが、その分、
りりしく美しい婦人になっていた。

喜ぶレイモンに
キャサリンは
 ”この家にはもう二度と入れることはないわ!”と言った。
”?????”と
怪訝そうに見るレイモンにキャサリンは言った。

  ”あの人はあの時と同じうそをつきにきたわ。”
  ”そして、逢うたびに欲深くなるわ。一度目はお金だけ。
  そして今度は私の愛までも得ようとした。
   来てはならない家に二度も来た。
   決して三度は来させないわ!”と静かにゆっくりと言った。

  ”あの時、父は彼を試しただけだったのよ。
  後になって私は悟ったわ。”

  ”父は許していたのよ!でも、
  あの人は三万ドルの遺産がもらえないと踏んで
    とうとう来なかった。

三度目は絶対にあの人は
この家には入ることは出来ないのよ!”

そして、
もうすぐ出来上がる刺しゅうに最後の針を通すのでした。

一時間後
アピールは喜び勇んで彼女の家の前に馬車を止めた。

ベルが鳴った。
召使が出ようとするのをキャサリンは制止し、
   ”鍵をかけて頂戴!”と言って、
     灯りを消した。
  気が狂ったようにドアを叩くアピール。

  ランプを持ち、キャサリンは
  にんまりと笑って、二階へ上がってゆくのだった。

 あの時、アピールがしたように、 あの女たらしに
  仕返しをしたのだった。

★前半の彼女は目立たない、
それでいて可愛い純粋無垢な少女です。

父との決裂からの彼女の演技は堂々とプライドに満ちた
女性に変身します。

その変化も見事だが、
研ぎ澄まされた脚本が素晴らしく、
ぐいぐいと引き込まれました。

モンティとの恋愛に重きをおかず、
父との決裂、ラルフ・リチャードソンとの
対の演技が主です。

そして彼女がどんな大人になっていったか?・・
分別を弁えすぎる女性となってゆく・

これが彼女の幸せ、満足とは思わないが、

お金に執着もない彼女は何に幸せを求めたか。
騙され、浪費されて無一文になろうとも
彼との結婚を試してみたかったのだと思う。

試さずして挫折させられた苦しみ、
恥辱の方がたまらなかったのでしょう。

仕返しをしたところでなんにも残りはしないし、

アピールが二度と来なければ
彼女はすでに許していたはずなのに、

来て、同じ過ちを見せつけたことが
許せなかったのでしょうね。

それにしてもこのワイラー作品はすさまじい女の執念です。

オリビアの180度の変化も見ものでした。

男って....と思ってしまう作品です。

わたしは妹のジョーンよりも
オリビアのほうが好きな女優です。


1949年度作品



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