旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪第三逃亡者≫≪舞台恐怖症≫


  1.≪第三逃亡者≫
  2.≪舞台恐怖症≫

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1.≪第三逃亡者≫

サスペンスも佳境に入ってきました.
是非初期のヒッチコックを知っていただきたく
敢えて紹介致します。
興行的に成功した作品や、カラー作品、また、テレビなどでの
オンエアーなどで、限られた作品しか
ご縁がなかった若人もいらっしゃる。
しかし、マニアでない限り、アルフレッドの神髄ここに有り
という作品をなかなか知る機会がないと思うのです。

昨日紹介しましたバルカン...も今はショップで見つかる筈です。
たっぷりと味わってください。

さて、今日は≪第三逃亡者≫デス.
世間知らずの若い娘が殺人事件に巻き込まれ、
警察などに取り囲まれて、ただただビックリして,
どうして良いかわからなくなるというーーー
そんな若いお嬢さんの視点から撮られた映画でしょう。

まず、顔面神経痛かと思われる、顔をぴくぴく動かす
男の顔からUPのスタートです.

海岸にその男の妻で女優の死体が打ち上げられ、
死体を溌見した男が疑いをかけられるところから
物語は始まります.
警察署でこの青年が気絶した時にある娘が
ガールスカウトで習ったといって青年の手当てをする。
ここを覚えておいてください.!

娘の父親はおえらい警察官である。

疑いをかけられた青年がたまたま逃げ込んだ車の中にいた
若い娘がやむを得ず、この青年の逃亡を助けることになる。
介抱してくれた娘であった.

途中で娘はおばさんの家を訪ねる約束をしていたことを思いだし、青年を連れて立ち寄る。

親戚の子供達が集ってパーテイーをやっている最中で、
ちょうど鬼ごっこが始まる所に行き合わせ
参加させられるハメになる。
早くここから逃げ出したい二人だが、
もし鬼に捕まったら,それこそ出られなくなってしまう.

ここがなかなかのサスペンス。上手い構成なんですよね!

まーなんだかんだとあって,
追われる青年い変わって真犯人を探しだした娘が、
事件を目撃したという浮浪者を発見する。

どうやら犯人があるホテルにいる、そして眼を病的にしばたく癖のある男だということもつきとめる。
娘は浮浪者に身なりを整えさせ、ホテルへGO!

ちょうど午後のテイータイムのダンスパーテイーが行われており、片隅のテーブルに腰を降ろす。

“こんな大勢のなかから眼をしばたく男を捜すなんて
ばかげてやせんかね”と
浮浪者は言う。
するとカメラは上から真中から人ごみを縫って
一番置くのバンドでドラムを叩いている男
―――顔は黒人っぽく黒く塗っているーーーのクローズアップ!

そしてUPの男は顔をぴくぴくと....
登場人物より先に観客にそっと犯人がわかるように
構成されている試みを使ったアルフレッドは
犯人の顔と娘と浮浪者の状況を交互に映す.

観客は犯人がわかっているのでこの先どうやって犯人を見つけるのだろうということだけが気がかりなわけです。

するとひとりの警官が二人に目を止める。
娘は事の真相を告げ警官は署に連絡.
あわただしく警察官が裏口に出入りする。

てっきり自分を捕まえに来たと思い込んだ犯人は
慌てだしバンドの演奏に狂いが出始める。
演奏は中断し、裏口で煙草を吸う犯人。

警察官の動きに再度始まった演奏でも狂いっぱなしで
とうとう神経が参った犯人は気絶する.

諦めて帰りかけていた娘達はものすごい音にびっくりして
戻ってくる。

倒れた犯人と知らずに 男の顔を持ち上げる
(トップで手当てをしたことが伏線です)と...  
顔がぴくぴくと...ここで初めて気がつくのだ.

娘は落ち着いて“どなたかタオルを持ってきてください。
この人の顔を拭いてあげたいのです”.
みるみる白いしかもピクツク顔が...UP...UP...

そして、浮浪者の顔を見上げて合図をする娘. 

“そうだ、この男だ”と浮浪者はうなずく...

ちょっとくどく書きすぎたけど
このラストの長いシーンの素晴らしさを説明するには
ここまで書かないと伝わらないと思ったのです.

このシーンには圧倒されたのを覚えています。

どうしてこんな上手い設定が思いつくのでしょうか?

そしてすばらしい撮影。多分クレーン車で動き回っている筈です.

1938年の作品ですよん!!

追っかけのものは彼の作品のなかでも逃走迷路や三十九夜、
北北西など数々あれど
夕べのバルカン、そして今日の第三逃亡者この2作は最高だヨー!

とにかく,英国で撮った作品は分かり易い題材、単純な題材を
構成の素晴らしさと、テンポ、そして
いつもの伏線を張り巡らした面白さ.
ヒッチコックの神髄ここにあり!です.
ああーー止められない!!!


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2.・≪舞台恐怖症≫

≪舞台恐怖症≫
嘘つきフラッシュバックというかうそつきの回想シーンをトップに持ってきたが
騙された観客はラストでなーんだそう言うことだったのか?
つまりどんでん返しになるはずが
なんとも変に納得をさせられてしまい
ちょっと消化不良気味にはなりました.

しかしストーリーとしては面白い。

ただミスキャストというかこういう役はこの人じゃなくて
もっとこんな感じの人に演って欲しかった
という思いが残りました。

でもそれを除けばサスペンスを充分に楽しめる作品なので
紹介致します。

警察に追われたR.トッドが古い女友達J.ワイマンの車に
乗り込む。
彼女は女優を目指して演劇学校に通っている若い女性。
トッドは彼女に話す。
“愛している女性―――マレーネ.デートリッヒ扮する舞台女優――――が
血のついたドレスを着て慌ててボクの所へ来たんだ.
夫を殺してしまった.助けて欲しいと...
メイドは田舎に帰っていないし、今から舞台があるから、
着替えを取ってきてと”

“ボクは彼女の為には何でもする覚悟で現場に行って
ドレスをとり、物取りに見せようと
室内を荒らされたようにしていたら
メイドが戻ってきて顔を見られてしまった。“

ワイマンは彼を愛していたので、母と別居中の父のところへ
連れて行き匿うことにした.
父には訳を話し,協力をしてもらうことに。

女優にあってみようと家に行ったが 
警察の捜査で逢えず、ドギツイ話しに気分が悪くなり
カフエに入ったところで
スマートな若者と知り合う.
これが捜査担当の刑事だあったと後で分かる。

若者は彼女に好意を持ち、
お茶をご馳走になりに彼女のうちへ行く。

さて、ここでワイマンは女優のうちのメイドを買収して
女優の家へメイドとして入り込む。
ここから話しがややこしくなってくる。

同居中のママにも刑事にも学校に行っていることになっているから時間の都合が合わせられず、てんやわんやである.

このメイドがしたたかな女でワイマンをゆすったり、
演劇学校の友人が学校を休んでるとかいうもので
余計にややこしくなってくる.

血のついたドレス(誰かがわざとつけたふしがある)は
トッドがワイマンたちの目の前で焼いてしまっているから
差し出して確かめることは出来ない。
女優はマネージャーと良い仲らしいから
トッドは彼女に利用されたんだと、ワイマンは思って
なんとか証拠なりを掴もうと動き回る。

刑事に好意を持ったワイマンだが 
デイトの途中でもすぐにいなくなるので
刑事は振りまわされている.
まだ彼女が事件のことで動いているとは気づいていない.
みんなが一同に会すことは無いから良いものの
ワイマンの頭の中はこんがらがってくる。

観客を集めた劇場外のガーデンパーテイで
父親は思いついて、人形の衣服に血をつけ
こどもに持たせ舞台上のデートリッヒの元へ運ばせる。
顔色を変えるが決め手に結びつかない.

とうとう若い刑事にも感づかれ
総てを話そうとするが、刑事には刑事の考えがあり、
みなまで聞かない。

結局刑事の案である目論みをすることに...

女優の控え室に隠しマイクをつけ
舞台のスピーカーに流れるように設定し、
ワイマンは一世一代の演技をすることに...
デートリッヒに直接会ってドレスを持っていると告げ

白状させようとする,、、、、、、
トッドは警察の上手い手口で捕らえられ
劇場に連れてこられ、女優と合わせることに...
そのことを知らなかったワイマンは、約束が違うと
ちょっとの隙を見つけ、トッドをつれて逃げる。

小道具部屋で息をひそめる二人の会話が始まる。

トッドは女優に騙されたことを初めて認め、
ワイマンの愛を受け入れると言う。

しかしワイマンは愛していると思い込んでいただけで
今は刑事を愛している。
本当の愛を見つけた彼女だが無実のものを放って置けない。
そのときスピ-カーから、刑事の声が.....
 “その男は過去にも殺人を犯している、
今度の事件もその男が犯人だ!”
トッドは不敵な笑みを浮かべ、“もう一人殺さなくては....”と...
彼女は落ち着いて彼に“客席に入り込めば逃げれるわ!”と案内し先に入れたところでドアをパターーンと....

ということで、、じゃーデートリッヒは???
つまり彼女の夫をかれが殺すように仕向けただけのことだった。

最初の回想シーンのトッドの話しを
我々は完全に信じた状態から物語が始まったので
それを前提に頭の中が回転していっている。

ヒッチコックさん!それはないよーーー.
ルール違反だよと言いたいが、
皆様、サスペンスフアンは何事も疑って罹らなくてはなりませぬ。
そういうことも踏まえて推理していかなくては....

しかしサスペンス映画というものは
悪役の存在感が大きく左右するものです.
この映画では悪役の存在が影のようで薄いのです。
女優もデートリッヒを使うならば
ワイルダーの“情婦”のように徹底した悪女で男に一途な...
彼女ではならないというものが伝わってこない。

犯人がもっと悪辣とか残忍とかでないと盛りあがらないでしょう。これだけの面白いストーリーなのだから...

ワイマンも不二家のペコチャンみたいな顔だからもっとメイドの扮装も思いきって
ブスになりきれば面白かったとは思う。
彼女が愛していたと思い込んだ男の為に一肌脱ぐという
ストーリーだから、結構、他のヒッチコック作品とは違い、
心理的はらはらではなく、
彼女が周りに嘘をついて変装して動き回ることで
 つじつまが合わなくなる混乱がメインとなり
その面白さを単純に楽しめば良いのです.

ピアノの演奏が上手い刑事にころっと参るワイマンが
とっても可愛いでーす。

製作  英国  1950年度
出演  マレーネ.デートリッヒ/ジェーン.ワイマン/
    マイケル.ワイルデイング/リチャード.トッド

ヒッチコックの特集が近々BSⅡでありますが、
“知りすぎていた男”の原型―――暗殺者の家、
また、スミス夫妻などが放映されますので、それまでに紹介したいと思います。

ついでだから明日は“パラダイン夫人の恋”を書きまーす.
美女の為に地位を失う弁護士と......??その弁護士を足げにする美女!
法廷ものサスペンスです.







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