旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

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邦画の館   増村保三監督の千羽鶴




若い子達の間で、増村保造監督の人気が、再燃して
久しい。増村監督は、
コンビ最後の作品”千羽鶴”(川端康成原作)まで20作品
を、若尾文子で撮っている.

ゲストさんの要望もあって、川端作品を取り上げて観ようと
2.3観てみた.

ゲストさんには、申し訳無いが、どう言うわけか
川端小説は、あまり、受け付けない。
昔、臼井よしみ(漢字は忘れました)さんという人が、
川端が亡くなった時に出した”川端康成”についての
本を読んでから、どうも観方が、変わってしまい、それ以来
そのイメージを打ち消す材料が、提供されず仕舞いである.

『千羽鶴』
製作  大映  
監督  増村保造 脚本 新藤兼人
原作  川端康成
出演  若尾文子/平幹二郎/京 マチ子/船越英二


増村監督が、何故、この作品を選んだのか分からない.
谷崎順一郎程徹底した耽美小説には、なり切れず、
”美しさと哀しみと”にしても、この”千羽鶴”にしても、
耽美風ではあるが、耽美派ではない.中途半端である.
外国で評価されるのは、”耽美風”であるから、ことに
フランス辺りでは、受けのいいのも頷ける。
谷崎が、日本人の本質を耽美として、その世界を作り上げたのに
対して、川端耽美はあくまで”風”で終わっているから、
いやらしさが、感じられてならない。
”雪国”、”伊豆の踊り子””山の音””古都”辺りが
固定観念としての川端文学と限った方がよいように思われる。

その”千羽鶴”を、増村監督は、やはり、そのまま”風”で
描ききっている.

茶の世界に生きるヒロインの情念、気品と妖気を
若尾文子は、見事に演じきっている。
人妻役を演らせれば、この人の右にでるものは、いないだろう.
愛くるしい顔立ちからして”祇園囃子”にみる
純真な役の彼女と同一人物とは思えぬ妖艶な人妻を
使い分けることが、出きる。

『着物』 
この頃流行った絞りの小紋、
茶の世界の物語ということもあってか柔物が、多い
特に若尾が、身につけている黒地に薄紅色の梅模様の着物は、当時
はやった柄行である.

若尾は、仙台に疎開したことがあるらしい.
作家井上ひさしが仙台の学生時代にマドンナとして憧れた女学生で、
作品(青葉繁れる)にそれらしき人が、チョッピリ登場している.

彼女のあの独特の何かを含んだような色っぽい声に
S.30~40年代男性フアンは、多かった.

周りからちやほやされて女優と銘打っている最今の女優と
違い、溝口健二、市川昆、川島雄三、増村保造など
大監督にシゴカレ、鍛えられて自らを高めた.
天性の美貌だけでない女優魂を感じさせられる.
川端文学、谷崎文学をこぞって取り上げた大映配給会社、
清潔な文芸映画を撮り続けた松竹、
ちょっとひねった文芸映画を配給した東宝、
その特性により、育った女優のカラーを
今振り返って見比べると非常に面白いデーターが、出てくる。
監督別、諸作品別、女優別、男優別、原作別に作品を
観るので、重なることも何度もあり、
その度に受けた印象が違い、新たな発見がある.
いやー映画って本当に面白くて止められませんね-.

(十代の性典ー-3部作)、(祇園囃子)、(女は2度生まれる)
(妻は告白する)、(しとやかな獣)(千羽鶴)(傷だらけの山河)
(鴈の寺)、(越前竹人形)、(婚期)(赤線地帯)((卍)(浮草)
(ぼんち)
ーー文芸派官能女優ーー蓮っ葉な役をしても清潔感がある.
   ↑ が付くのだ.まだまだ我がライブラリーには有るなー!


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