旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

豊田四郎監督の  ≪雪国≫




岸..駒子か、岩下..駒子を取るか。

この”雪国”に関しては岸 駒子を選ぶ。
岩下さん大好きです。

でも岸恵子の役者としての代表作は
たくさんある中でこの人しか出来なかった役として
岸 恵子の雪国を選ぶ。

”おとうと”も良かった。
”早春”も良かった。そう”ハワイの夜”は
おませなわたしの子供心に
素敵な女優さんと映った。
”ここに泉あり”、”怪談”、”約束”、”細雪”も良かった。  
その時代、その時代にピタリのそれも
ありとあらゆるタイプの役柄をこなした
型にはまらない、そして50年近くも主役をこなす女優は
今、彼女だけではないだろうか.

ともかく≪雪国≫のなかの岸恵子はものすごく鮮烈で、
田舎芸者とそれよりちょっと田舎芸者にしては垢ぬけたという
スレスレのところで魅力的であった。

この映画の撮影後に結婚のために
フランスへ飛ぶことになっていた為か
最後の(その時は)
映画出演という思いで全力投球をしていたのかと思うほど
役になりきっていた。

身体から張り詰めたなにかがピーンと発散するかのように
全編にそれがみなぎっていたように思う。

島村の部屋で、窓を開けて爪弾く三味の音。
その音が遠い雪山に響いていく場面、
島村の乗った列車に向かって追いかけながら
雪を投げつけるシーンは
映画史上に残る、迫力を持った情感溢れるものである.

その後何人もの有名女優さんが駒子を演じているが、
ことこの駒子に関する限りは、岸恵子が最高である。

前にも彼女のことには触れたことがあるが、年齢を
取ったら取ったなりの魅力を持ちつづける稀有な女優さんである.
それは若作りとか若く見えるとかということではなく、
こういう歳の取り方が出来たらなあというもので、
彼女の生き様から醸し出される素敵さでもあろう。

昔”パリの空はあかね色”という彼女のエッセイを読んだときに
ただの女優ではない....
しっかりとした文章と世界を見つめる眼力、謙虚さ、
柔軟さ、聡明さ...颯爽とした生き方が滲み出ていたのを
感じたことを思い出した。

あのパリジェンヌの香りを若いときから漂わせていた彼女が
おとうと..や、怪談や、雪国での純日本的なしかも
全然違うタイプの女性をさらりとこなす.

3/31日からNHKの連続ドラマで毎日、半年間
お目にかかれる幸せ!

あまりにも有名な”君の名は”のようなはかなげな役ではなく、
ピーンと張り詰めた美しさが漂うヒロインが
はまり役であろう.

”雪国”の駒子や”おとうと”のげんのような.


ああ切れ長の神秘的な瞳、すっきり通った鼻筋.
インターナショナルという点では原節子と双璧では?

かのデビット.リーンも夢中になり、
ジャン.コクトーは、自らの舞台に主演として招いたそうである。

モノクロのなかに舞う雪!
張りつめた駒子、
風情、香り、”最高”の雪国を観て観てくださいませ。

1957年度作。
監督  豊田四郎
原作  川端康成
出演  岸 恵子/池部良/八千草



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