旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

チャップリンの≪伯爵夫人≫


監督チャールズ.チャプリン(78歳)
主演.マーロン.ブランド/ソフイア.ローレン/
   シドニー.チャプリン/パトリック.カーギル
    ジュラルデイン.チャプリン
音楽 チャールズ.チャプリン

   ≪伯爵夫人≫

1967年度作というとそのころもう新しいスタイルの映画が
氾濫していて、この作品が上映された時に
昔、つまりクラシックスタイルで撮られたと評判になった
映画です.

チャプリンのそれまでのイメージの映画とも違うし、
かといって、昔の映画のスタイルを思い出させる手法を
堪能できると言う作品である。

チャプリン独特のユーモアとギャグはふんだんに登場し、
ベッド.ルームコメデイというジャンルがあったが、
その典型で、舞台は香港からニューヨークへ向かう
豪華客船内である.

 そのドタバタ喜劇を、ブランドとローレンが
大真面目に、そう、真面目くさってやるからすこぶるおかしいし、
笑えるのである。

まずはストーリーから.

大富豪オグデン(ブランド)が香港からアメリカへ帰る船の中で
知り合った伯爵夫人のひとりナターシャ(ローレン).
彼女は香港のギャングだかの情婦で、そんな生活に
嫌気がさしてアメリカに密航しようと船に乗り込んできた。
伯爵夫人とは半ドルでダンスをするという振れ込みで
みんな伯爵夫人と名乗るのである。

たまたま夜のラウンジで親友で秘書のハーヴエイ(シドニー.
チャプリン)が連れてきた三人の女性のうちのひとりで
あったが..。

夜が明けるとオグデンの部屋の寝室のクローゼットの中から
ナターシャが突然出てきて、彼女の素性を知るオグデン。

それから船を降りろだの、船長に話すだの、
部屋を出ていけだのと揉めるわけだが、秘書や、
執事(パトリック.カーギル..。この人がすごくいい味)、
客室係、メイド、船長だのが入れ替わり立ち代り出入りし、
まあーめまぐるしい事。
この間、二人は居間と寝室を行ったり来たり、隠れたりと...
神戸での上陸を拒否したナターシャだが、
ハワイではオグデンの妻が出迎えに来るので
どうしても部屋を出ていかなくてはならない。
それで、ハーヴエイや執事のハドソンも巻き込んで、最初は
ハドソンの妻ということにして船長をだまし、偽の
結婚式をあげる事に、、、、
だが、このころにはオグデンとナターシャにはすでに
愛が芽生えていた。
隣室のツインベッドにハドソンとナターシャは寝み、
居間ではオグデンのなんとかのサウジアラビア大使就任の
記者会見が..。

そして妻オグデンの妻(テイッピー.ヘドレン)もやってくる。
その間にナターシャはハワイの若者の歓迎の飛び込みに混じって。
海に飛び込み先に、ワイキキへ.

今度はハーベイの妻ということで、ワイキキホテルへ、
チェック.イン.
そこへオグデンの妻と執事のハドソンがやってきて...
ハーブエイは妻を紹介するとハドソンが”わたしの妻でもあります”と.
真面目で、実直なハドソンは融通が利かないから
面白いのである。

とまあこんな風にドタバタをいかにおしゃれに粋に
3人の男と2人の女性が演じているか想像していただきたい。

チャプリンはローレンの登場のし方や、
部屋の出入りのドタバタを極めてクラッシックな手法で映し、
単純なストーリーをこれだけ面白く膨らませたのは、
78歳の老人とは思えぬ洒落た技である.

船酔いでよれよれの四人の前の、灰皿の使い方、
執事ハドソンのとぼけた味。
そして、すね者の代表、ブランドと、いろんな成熟した
女性役をやりこなしてきたローレンに純情少年のような
初恋をさせるこ憎さ.

☆ チャプリン自身も老給仕役でドアからちらりちらりと
顔を覗かせます。

そしてこの単純でとぼけたコミックの根底に
チャプリンのシンセリテイ、つまりチャプリンの心が
感じられるのである。
っどんな場面をも省略した手法を使うことなく
伝統的な手法を使っての撮影、じわーっと涙を誘うような
誘導的なカメラのロングで結末へと導く辺り.
古典の映画を思い浮かべるのである。

オ-ルドフアンも.オールドオールドフアンにも、
そして若者は、こんなチャプリンも存在したんだよ.。

ということでお薦めです。
流麗な哀調を込めた音楽もチャプリンの担当です。
息子シドニーを重要な役に据え、
娘、ジュラルデインやジョゼフインをちょこっとおまけで
出演させている。

むっつりしたブランドがローレンに振りまわされて果ては
恋してしまう。
火のうちどころのない妻(ヘドレン)と上手くいかなくなっていて、暗くて汚い過去をもつナターシャに魅かれていくオグデンは
生まれて初めて本当の愛を知る.

どんなに汚い過去でも生まれ変われる、、

それもふたりとも中年の男女..その笑いの中に
じーっと心の奥底まで見つめるチャプリンの
やさしい 目 が感じられました。

昔のチャプリン映画しか知らない方へ.
これは晩年のチャプリンが遊び心満点の余裕の中で
愉しんで作っている、そして、従来の心はそのまま受け継がれているという作品です。




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