旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

≪生きていた男≫

以前”悪魔のような女”を紹介しましたね。
ラストは吐き気がするどんでん返しと書きました。
筋は本当は差し控えた方が良いのだけれど、ちょっと書きます。
本妻と愛人が共謀して校長を殺したところ、
どうも男が生きているような、奇妙なことが二人の周りで起こり、
本妻は繊細な性格で半ばノイローゼになり、
愛人が慰めてもどんどんエスカレートしていく。
ここに事件の真相を追う、老刑事が飄々として捜査を
進めている、
ある日、恐怖が頂点に達した所で本妻は心臓発作を起こし
死んでしまう。
愛人は本当は生きている校長と”乾杯”とまでは行かないが
成功を喜ぶ。

が、そこに老刑事が現れる。とここまではいいのだが．．．．．
男が死んだとされた時、子供達が口々に校長を見たという
．．．そのときと同じように死んだ本妻を見たよ．．と
子供達が言う。．．．．．？

全てを承知だった本妻が二人に手錠が
かかるようにした芝居だったか．．．と観客がＥＮＤマークで
分かる仕組みであった。

なぜ、ここで種明かしをしたか？

”生きていた男”

典型的なＢ級のミステリーであるはずだったが、
とてつもなく面白くヒットした作品である。
この悪魔のような女とよく比較されたのだ。
悪魔．．．を観ている人は必ずこの”生きていた．．．”を
観ている。

スペインの豪華な別荘に住む女性（アン，バクスター扮する）
のもとに　　”兄”だと名乗る男が訪ねてきて居ついてしまう．
この兄にリチャード，トッドが扮している。

彼女はその男にあったことも見たことも無く、
兄ではないと言い張るが、
兄であるという証拠が次々と示される。

とこう進んでくると、
翻訳ドラマで観られた方も多いかとも思う。
兄ではない、兄ではないと．．．追い詰められていくが．．．
何が目的でこの男は？正体不明の男は．．一体私をどうする気だ？

と女性の心理状態になりきってみていた。

追い詰められた彼女はとうとう”．．なのにあなたが
兄である筈はない！”
と言ってしまう。
兄と名乗る男は刑事であった。

とこの意表を突く構成は”悪魔のような女”、と比べて劣らぬ
出来映えで忘れられぬ作品となった。
後で思ったのだが題名が”死んだはずの男”であったら
ネタがすぐにばれたのでは？
”生きていた男”だから騙されたような気もする．．．．！

が、同じどんでん返しのワイルダーの”情婦”や先の
クルーゾー監督の”悪魔のような女”が
サスペンス映画では必ずベスト１０入りを果たすのに
この作品、評価はされるが先の２作品ほどではない。？？？

でも面白ければいいと思っております。
初めて観た時、メチャメチャ面白かったもの
”イヴの総て”で、ベテイ．デイヴィスを相手に
すさまじい女を演じたアン．バクスターが
この映画でも力演であった．

第三の男といい情婦と言い、”生きていた男”と言い
英国のミステリー作品がフランスのミステリー作品と並んで
秀作を送りだし、アメリカのミステリーに対等、いやそれ以上の
出来映えで対抗していたのがほ．ん．と．う．に
面白い！

作品を整理してみるとやはりミステリー作品の国、英国だと
思わずにはいられないし、フランスは映像美と人間性を
全面に打ち出したミステリーである・
アメリカのミステリーは娯楽で、肩の力を抜いて理屈抜きで
楽しめる．．．

前に紹介した”落ちた偶像”もキャロル．リードの（英国の）
サスペンスです．
いやあーーー”悪魔．．”と”生きていた．．”は
表裏一体の面白さであります。

製作　　英国　　１９５８年度
監督　　マイケル．アンダーソン
出演　　アン．バクスター／リチャード．トッド

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