七転び八起き母ちゃんの子育て失敗学のススメ

七転び八起き母ちゃんの子育て失敗学のススメ

母ちゃん、決断する



いきなりたたいてくる相手を、先生はずいぶん前から知っており、被害を被っているのが、三吉だけではないこともわかっていました。それも加減がきかない冗談ではなく、明らかに反撃してこない女の子やおとなしい男の子を狙って、わざと暴力をふるっているらしいのです。

ただ、どんなに怒っても一向に改心する気配がないとのことでした。

でも、こうして、たたかれるのが怖くて学校を休む子が出たのですから、クラスの中でそのことについて話がなされるなど、効果のあるなしは別にしても、三吉が学校に行けるようにと、なんらかの配慮をしているのでは、と思っていました。

ところが、夕方、先生から電話があった中身は、「どうしても、三吉くんの声が聞きたくてお電話させていただきました。では、失礼いたします。」

え~っ、それだけ~?!何にもしなかったのか...。

これで、私が次にやることは、決まりました。

おそらく三吉は、自分が休んでも学校の状況が全く変わっていかないのですから、行ってまたやられ続け、自分の許容量がいっぱいになったら、また学校に行けなくなるでしょう。

それでも学校がなにもできないなら、三吉は、いわゆる泣き寝入りということになります。

親として、黙ってそれを見ているわけにはいきません。


案の定、数日経つと、三吉の様子がおかしくなりました。

週明けで、明日から学校がはじまるという夜、やたら機嫌が悪くなり、兄たちにあたりまくっていました。

寝る前になって、ついに私のところに来て、


「明日、学校行きたくないねん。また、たたいてくるかと思うといやになってきた...」

そこで、私は、子供たちを集めて言いました。

「三吉、たたいてくる子にも、きっと色んな事情があってそんなことしてはるんやろけど、三吉にはわからんし、関係ないことや。

今、やられるのがていややからって、三吉が休んでも何にも解決せえへん。

こうなったら、自分の身は自分で守らなあかん。

今度たたいてきたら、本気でやり返してやっつけてしまい!

レスリングやってんねんから、ほんまは負けるわけないやろ。

泣かしてもいいし、怪我しはってもかまへん。

その時は、お母さんが、校長先生でも担任の先生でも、その子の親にでも、ちゃんと謝って話するから、後の事は心配せんでええ!

そのために親はいるんやで。」

聞いていた兄たちも、

「そうや、ちょっとぐらいオレたちだってお返しすることあるねんから、いいやん。」

「三吉が、やり返しせえへんから、弱いと思ってるんやで。大きな間違いやって教えたれ!」

と、変な声援を受けて、三吉は、やっと、

「わかった。明日たたいてきたら、絶対やり返す!」

と、決意を固めました。

翌日、私は、三吉の連絡帳に、「また学校を休みたいと言ってきたので、相手にやり返ししてくるように言いました。なにかありましたら、責任は私がとりますので、すぐ連絡して下さい。」と、親の決意表明を書いて、三吉にも、母が本気であることを見せ、先生に渡すように言いました。

こうして掟破りの護身術を、言い渡された三吉は、休むと言わずに学校へ行ったのです。

<つづく>


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