煩悩日記

煩悩日記

満月夜光 (ヒュウアヤ)

「ア~ヤたん☆
そろそろ教えてよ。テイト=クラインをどうするの?」
 ヒュウガはアヤナミの後ろから耳元で囁くように言った。
「直にわかる」
 アヤナミは微笑する。
「楽しみにしているよ」
 ヒュウガはそう言うとアヤナミをそっと抱き締めた。普段ならこれだけで制裁を受ける事があるが分かっていて抱き締る。そして何時ものタイミングでやってくるだろ制裁にヒュウガは身構えたがアヤナミは何もしなかった。
『おや?』
 と思いつつ、そのまま左手でアヤナミの頬を撫でてみる。アヤナミは抵抗すらしない。それどころかヒュウガの手に自身の手を添えてきた。更にヒュウガは右手でアヤナミの軍帽を手に取るが無反応。調子に乗ってそのままキスをするが、やはりアヤナミは何もしない。
 少し拍子抜けしたヒュウガが口を開いた。
「アヤたん、どうしたの?珍しいねぇ」
「現在の日時は?」
 質問の答えとは違う返答をされたがヒュウガは答えるべく時計で時間を確認する。
「うんとねぇ
12時を少し回った所だから7月8日の午前……」
 言葉の途中でヒュウガは気が付いた。
「あれ?」
「そうだ」
「……もしかして覚えてくれていたの?」
「あぁ」
 少し意外だった。
 7月8日はヒュウガの誕生日である。アヤナミは当然、ヒュウガの誕生日を知っている。だが、ヒュウガは自ら催促をしなければアヤナミは何も言ってくれないだろうと思っていたがアヤナミから話を降ってくれたのだ。
「私と時を共にするのは不服か?」
アヤナミからそんな言葉を聞けるとは予想していなかった。
「そんな事ないよ」
 おめでとう、とは絶対に言わないだろう。しかし産まれた日になった瞬間に二人きりの時間を用意してくれただけでヒュウガは嬉しかった。
今宵、満月。
月明かりが二人を優しく空間を包んでいた──。



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