七夜式のやりたい放題なブログ

第八話 開幕(後)




「・・・先程、『ランサー』と『セイバー』が交戦。ランサーは撤退。後にアーチャーにセイバーが奇襲を仕掛けましたが早乙女アルトがこれを止めました。今はアーチャーのマスター『セシリア・ピーリス』と早乙女アルトで話し合っている模様。他では、『バーサーカー』が進撃開始。『ライダー』が『アサシン』と交戦中。」


リボンズがスカリエッティに聖杯戦争の現状報告をした。


「『キャスター』はどうしたんだい?また魔力回収にでも努めているのか?」


「いえ、キャスターがアサシンを呼んだようです。」


「ほう・・・魔術師であるなら無理はない、か・・・楽しみだ」


               第八話 開幕(後)


―――早乙女アルト邸


「―――じゃあ、まずは『魔術師』についてね。これから教えないと何も始まらないから」


セシリアがそう言って説明を始めた。


―――魔術師とは、使う力は『魔法』と同じ人外の業だが、ややこしい。


まず、その力は次々に子孫に受け継がれていく。


『根源の渦』への到達を目指して。


そして、兄弟の場合、年長者だけが魔術を教えられ、下の者は魔術の存在を知る事無く一生を終える。


それは何故か。


力が弱まるためだ。


1つの魔術に10の力があったとする。


それを1人に受け継がせれば力は10のままだが、これを二人の人間に受け継がせようとするとどうなるか。


半減する。一人当たりが5になってしまう。


その様な意味合いで、魔術は殆ど使われない。


そして、魔術師が体内に持つ擬似神経。魔術を構成する為の二種類の基盤のうち、人間の体内にあるもの。魔術師としての資質。


それが魔術回路だ。


アルトの使うことが出来る魔術は『強化』。


これは、存在意義を強化するもので、刃物なら切れ味、食材なら栄養度が増す。


曖昧なモノを曖昧に強化することはできない。


生物には自分の魔力を通しにくいため、他人を強化することは最高難易度といわれている。


―――次に、聖杯戦争についてだ。


聖杯戦争とは、聖杯の所有を巡っておこなう競争行為。


この世界(次元)には幾つもの聖杯が存在する。


聖杯とは、手に入れた者の願いを叶えるとさせる『器』だ。


それを求め魔術師達は使い魔とされた英霊サーヴァントを使役し、殺しあう。


ここ迄がセシリアの話してくれた事だ。


「・・・で、何か質問は?」


「そうだな。まずセシリアの魔術が知りたい」


「そうね・・・比較的宝石を使った『蓄積』ね。でも、お金かかるし宝石に溜められる魔力も多くない。だから召還くらいね。サーヴァントの」


「・・・じゃあもう一つ。サーヴァントとして呼ばれるのは?」


「基本的には、大昔に地方で活躍した『英雄』よ」


「そうです。例えば、ランサーの持っていた『ゲイ・ボルク』は誰のだか解りますか?」


セイバーが口を開いた。


「うーん。あれは確か、この『ミッドチルダ』がこの名前になる前・・・3000年以上前の『リベール』って国の英雄だろ?」


「はい。では、『ゲイ・ボルク』の効果については?」


「・・・あれは、『心臓を穿つ』という『結果』を『槍で刺す』という『因果』より先に起こす。即ち、『因果』より先に『結果』が決まる魔槍だろ?」


「はい。その通りです」


ゲイ・ボルクの効果は、因果を逆転させて『すでに心臓に命中している』事実を作ってから槍を放つので、確実に当たる。


槍を放つよりも前に槍は心臓に命中しているため、結果が作りあがった後になにをしようとも回避も防御も不可能。


これを回避するためには俊敏性の高さではなく、発動前に運命を逆転させる幸運が重要となる。


またそのダメージは『槍のダメージ+相手の体力』となるので、命中した場合は必ず死亡する。


「さて、じゃあ行きましょうか」


セシリアが提案したが、アルトには当然判る筈もなく。


「行くって、何処へ?」


「この聖杯戦争の監督にね。サーヴァントが居なくなったマスターは、そこで匿って貰えるの。一応挨拶に行くわよ」


そう言ってセシリアが立ち上がった。アルトとセイバーも続く。


そうして、3人はその監督役が待つ『言峰教会』へと向かった―――


―――言峰教会


「・・・ほう。その少年が『早乙女アルト』か」


「ええ。そうよ」


「私はこの教会の司祭とでも言おうか。言峰綺礼と言う」


「・・・早乙女アルトだ」


「セシリア、少し外に行っていて貰えないか?少年に幾つか尋ねたくてな」


言峰はセシリアに尋ねた。


「・・・別にかまわないわ。早乙女君、外でセイバーと待ってるわ」


そう言ってセシリアは外へ出た。


「ふむ。君は、聖杯に何を望む?」


「・・・争いの無い世界と言いたいが、無理な話だからな。争いを止められるだけの『力』を求める」


「そうか・・・喜べ早乙女アルト。君の願いは、ようやく叶う」


―――帰り道、3人は同じ道を歩いていた。


「マスター」


セイバーが口を開く。


「そういえば、その『マスター』って呼び方、止めてくれ。俺には『早乙女アルト』って名前がある。できればそっちで」


「・・・解りました、アルト」


「これから宜しくな、セイバー」


二人で握手を交わす。


「・・・ここでお別れね。次会ったら、私たちは『敵同士』よ。いいわね?」


「・・・そうだな。でも、とにかく助かった。有難う」


「あら、もうお別れなの?もうちょっとゆっくりしましょうよ」


小さな女の子の声。その方向を振り向き、アルト達は愕然とした。

 To Be Continued...


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