15.素顔



川辺にティティとハルノートンは向き合って腰を下ろしていた
二人の衣装はずぶ濡れ・・池の中で「泳いだ」のだから無理もない
ハルノートンは眉間にシワを寄せつつ、衣装の裾をギュッとしぼっている・・

「えっと・・池に入ったからです・・王子・・」
「分かりきったことを言うな・・」

ジロッとティティを睨む

ティティは怖くて顔を上げることができない・・

っていうか、王子ってこんな人だっけ?!
もっとこう、穏やかで、麗しく、物憂げで~・・月光が似合う・・・

「答えろ!」
「あっ!はいぃっ!私が溺れてしまって、王子が助けて下さってですね・・」
「なぜ溺れた?なぜ池に入る必要がある?!何をしようとした?」
「・・・きゅ、宮殿の外へ行こうとして・・」
「なぜ?」
「・・・出たくて・・ここにいたくなくて・・いられなくて・・いたらダメで・・えっと・・」
「・・・私のせいか?ネフェルに何か言われたのか?」
「いいえっ!決して王子のせいでは・・ネフェル様はむしろ宮殿に残れと・・いや、残れっていうか・・」


言っていいこと、隠さなければならないことが頭の中でゴチャゴチャになって整理がつかない!
話せば話すほど墓穴を掘ってる気がする

「フッ・・慌てずとも良い。だいたいの検討はついた」
「はぁ・・」

でもセナトス将軍と結婚うんぬんまではわかっていないんだろうな・・

「で、ここを抜け出してどうするつもりだ?家には帰れまい?」
「はい。どこかの貴族か商人の家で働かせてもらおうかと・・」
「甘いな・・」
「・・ですよね・・」
「・・・セナトスは知っているのか?」

ドキッとした
一瞬にして顔から火が出るくらい熱くなった

「正直すぎるな」
ドサッとハルノートンは草の上で仰向けに倒れこんだ

気まずい空気が流れた・・

「誰か」
「ハッ!」

王子の側近がすばやく姿を現した

「セナトスをここへ呼べ」
「ハッ!」

「えっ?王子?」
「はっきりさせようではないか。私のため、ネフェルのため、そしてそなたのためにも」
「私のため?」
「そうだ。今のままでは苦しいだけだ。違うか?」
「・・・・」
「セナトスの返答次第では、そなたは私がもらう」
「・・!!王子?!」

ど、どどどど、どうしよう?!
なんだかとんでもないことになっちゃった!
王子とセナトス将軍と私の3人ではっきりさせる?!
いったい王子は何を考えてるのよ?
物静かな人だと思ってたけど・・なんだか別人みたいじゃない!!

あぁ・・無理・・心臓が破裂して死ぬ・・・無理・・・
この場から逃げ出したい・・どうしよう・・

その時
「ティティ?!」

今度は何?!

「ルカ?!」

「探したのよ?!こんなところに・・ズブ濡れで・・あっっ・・王子様!!」
その場で慌てて膝をつくルカ

あぁぁ・・万事休す・・・この場から消えてしまいたい・・・
王女の侍女が王女の婚約者であり、世継ぎ王子と密会・・しかもズブ濡れ・・

ティティは軽い眩暈に襲われた

「用件はなんだ?私に気にせず申すがよい」
王子は信じられないくらい冷静だ
こんなに慌ててる自分がバカみたいだ

「ハッ・・。ネフェル様にティティを探してくるように言われまして・・」

チラッチラッと私と王子を交互に見るルカ・・
(この状況は何よ?!何で黙ってたのよ?!)

視線が痛い・・
今まで何も話してなかったのに、いきなりこの状況を見られるとは
頭も痛くなってきた

こんなことならワニと戦った方がマシだわ

ティティが観念したかのようにその場にへたれこむのと同時だった

「であえーーーーっっ!!!であえーーーっ!!!」

ハルノートン王子はすばやく腰の剣を抜いた







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