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銀の月の孤城
第4話夕闇が求める光は、相容れず
縄でヴォルフリートはイスに縛り付けられていた。
足元では、ルドルフの愛犬アレキサンダーがきらりとヴォルフリートを逃げ出さないように狙っていた。
「野犬はゾフィー様や皇帝陛下のお目に見苦しいから、外見だけでも」
「何ですって、髪の毛は石鹸で洗って、クシでとくだけですって、アー、やだやだ」
「肌は手入れすれば、サーカスの見世物・・・それらしく見えるんじゃない」
「上からだと、この子のポジションは行儀見習いで、貴族の搾りかすですって」
「これだから、暗いしかない貧乏貴族は」
「まあ、ただの金持ちじゃ、この宮殿に入る事もおく事もできないでしょう」
と、大変丁寧に、お世話係の貴族出身の女官、下級クラスにヴォルフリートは扱われていた。
「とにかく、皇太子殿下の玩具なんだから、この子は」
「そう、綺麗にしなくては」
・・・ひどいことを言われているのは、気のせいだろうか。
「・・・あ、ああ、あの、僕、いいです」
恐怖でヴォルフリートは体を震えさせていた。
教会では少年の聖歌隊の声が鳴り響き、荘厳な雰囲気が周囲を包み込み、司祭たちが聖書を読んでいた。鐘の音が鳴り響く。
「・・おや、君は新入りのディルクだね。どうしたんだい」
「いえ、少しこの教会の美しさに見ほれていて・・・」
ディルクは帽子をかぶりなおして、包み込むような微笑を浮かべた。
・・・・逃げたい、逃げ出してぇ。
宮殿からの逃亡は、街中が近所なので、すぐに決行したが、軍人に力づくで連れ戻された。
―姉は、皆はどうなってるか。
「アーディあディト・バルトは行方不明だ」
「はぁ・・・」
「それより、しっかり働けよ、庶民」
ルドルフは優雅に紅茶を飲んでいた。
・・・何故、自転車。
「それが終わったら、蝋燭の交換だ」
「何で、あんな案山子みたいなものが、このハプスブルク家の宮殿に混じってるんだ」
「下々のものは、何かと我々のような上のクラスに媚を売ろうと、必死ですから」
「けっ」
・・・・背中が痛い。
「私を解任ですと・・・・?」
ゴンドレクール伯爵がエリザベート皇妃とルドルフの祖母ゾフィーに呼ばれ、そういわれたのは数日後だった。
「良かったですわね、ルドルフ様」
中年の女官と若い女官がルドルフに言った。
「君が進言したんだって?」
「まさか、私にそのような権限ありませんわ、ただ、あの男はこの宮殿には似つかわしくないと思っていましたけど」
「・・・新しい教育係はそれは優しい人らしいですわ」
ルドルフは少し考え込むような姿勢をとった。
「そうだね、それはいい」
「ところで、あの少年はどうなさるのです?所在不明をごまかすのは難しくなってるのでは?」
「大丈夫、彼はヴォルフリート・バルトはちゃんとした家の嫡男だ」
若い女官が不思議そうな表情を浮かべた。
「・・クソッ、あの書き、散々こき使って・・・」
酒場まで来ると、伯爵はビールのビンを思いっきりテーブルに突き付けた。
草叢を抜けて、現れたのは、窓から抜け出したヴォルフリートで宮殿に上がったグレーティあのお付きの中のオマケとしてやってきたシャノンは驚きすぎて、声を出すのを遅れた。
「シャノン、シャノンじゃないか、君がどうして、ここに?」
人懐っこい犬のような表情で嬉しそうにヴォルフリートが声をかけてきた。
「・・・ヴォルフリート???」
あまりにも似合わない、バカで間抜けのアリスのオマケの、人がいい友達のヴォルフリートがナゼ、ここに?
「へえ、バーデン家のお嬢様のお付きに、凄いや、さすがはシャノンだ、ハプスブルク家の宮殿に入れる身分の家で働けるなんて、夢が叶ったんだね」
「・・・ヴォルフリート、あんたは何で、ここに?」
「・・・え、ええと、それは・・・」
「お金持ちとか貴族に興味ないんじゃなかったの?言ったわよね、一生関わる事ないって」
「ごめん・・・」
「何で、謝るのよ、・・・貴方、宮殿に働く人間にコネでもあったの?」
シャノンはため息をついた。
「コネはないよ、僕はだって、宿屋のした働きとか、とにかく姉さんと生きていければ、それでよかったし、・・でも」
「でも・・・?」
ヴォルフリートはため息をついた。
「早く、上品で気品があって、重ぐるしいここを出たいんだ、あまりに違いすぎるし、参ってるんだ、何もしていないのに優しくしてもらっても気持ち悪いし、正直な所、・・・シャノンだって、ここに僕がいるのがおかしいと思うよね?」
じっ、とヴォルフリートがシャノンを見る。
「それは・・・・」
ヘルガやアマーリエ、バーデン家の当主がそこを訪れる、使用人を連れて。
「・・・お前、何してるの、仕事をサボって」
「・・・あ、それは・・」
「お父様」とグレーティアが心配そうにシャノンを見る。
「使用人の分際で仕事をサボり、その年で男あさりか、これだから庶民上がりは・・」
・・・ア、僕の事、目に入ってないな。
ヴォルフリートは苛められてないかしら。怖がって、ないていないかしら、気が弱いから、あの皇太子様にいいようにされていないかしら。
旅の最中、常にアリスの心をヴォルフリートの存在が支配していた。
「アリス・・・・」
「会いたいよ、ヴォルフリートに」
デルフィーナは優しく、アリスを抱きしめる。
「大丈夫」
「デルフィーナ・・・」
包み込むように、デルフィーナがアリスを抱きしめる。
「大丈夫、きっと・・・すぐに会えるわ」
「だから、なかないで、アーディアディト」
「デルフィーナ」
次の瞬間、アリスはワッ、と泣き出した。
「ヴォルフリート!!ヴォルフリート!!」
わぁぁぁぁ、とデルフィーナの胸にすがりつきながら、アリスは泣き崩れる。
「・・・アリス」
―そんな時、運命に出会った。
フェッセンで不良少年達に囲まれて、仲間もいない状況でアリスは追いはぎにあっていた。
「・・・どうせ、金目当てで旅してるんだろ」
「旅費出せよ」
「なめてんじゃねえよ」
「・・・返してよ、それは私のお母さんが、私の懐中時計よ」
そんな時に、仮面の少年がアリスの前に現れた。半分だけの仮面のしたからはやけどのようなあとがあって、アリスも少年達も動揺の色を隠せない。
紫がかった青い瞳はぎらついて、生命の光にあふれているが華奢な体や青白い肌のせいで、その瞳は異様に見えていた。蜂蜜色の髪が強風で揺らめく。
「なんだよ、てめえは・・・!!」
「退け」
少年は大金が入った袋を少年たちの前に投げつけた。
「ふざけんな!!」
「それとも、君たちを痛めつけた方がいいか?私にはできるのだぞ」
体の奥から冷たくなるような、凄まじい光を瞳に話して、少年は言った。
「おい、行くぞ」
少年たちは袋を持って立ち去っていく。アリスはその光景を呆然となりながら、その美しい少年を見ていた。
・・・年はアルベルトに近いのだろうか。
「ありがとう・・・」
少年が黒い手袋で覆った手をアリスに差し出す。
「無事なようだな、痛いところはないか」
急に優しげな声に変わり、包み込むような目で目でアリスを見た。
「はい・・・」
「君の歌を聴いた、すばらしい声だ、君には音楽の女神が微笑まれているようだ」
微かな美しい微笑みに、アリスは心を奪われる。
「は、はい・・・?」
アリスの頬がぼっとなる。
「あの時、君の心の中ではどんな美しい音楽がなっていたのだろう」
「それは・・・」
「ひゃあああああっ」
素っ頓狂な声を上げて、ケラケラと笑うルドルフの姉、エリザベート良く似た黒髪の少女、ジゼルの前からヴォルフリートは走り去っていった。
「何をしたんです、姉上」
「面白いのよ、ヴォルフったら、ほら」
「ハムスターですか」
また、悪戯を仕掛けたな、とルドルフは仕方ないといった、珍しい子供のような表情を浮かべた。ルドルフの背後には、ダヴィデやフランス語の教師の姿や、早くからルドルフに取り入ろうという、宮殿に入る事を許されている貴族の子息がいる。取り巻きのような存在だ。
「ヴォるふったら、本当に怖がりね、ネズミのほかに毛虫も苦手なんですって」
「あまり、無理しないでくださいよ」
ルドルフはため息をつきたくなった。
アリスは、ミュンヘンの宮廷歌劇のホルンを仮面の少年と通りがかりのミュンヘンの絵がうまいマルクと聞きに行った。
「君は、シュタインベルク近くに住んでいたのだから、ドイツ人なのだろう」
「マルク、君はバイエルン人か」
「・・・・つかれた、私、後で抜けさせてもらっていいかしら、さっき聖ミヒャエル教会によったばかりだし」
仮面の少年の名前は、アロイス・ツァー・バルツァー侯爵で、ドイツの貴族で、アルベルトとは顔なじみだが、立場が微妙に違うので親しくはないらしい。
ミュンヘンの街を歩きながら、天文学や外国の童話、様々な知識をアリスに教えてくれた。人形の店の前では、優しくアリスに話しかけてくれた。迷子にならないように手袋をつけたまま、アリスの手を握ってくれた。
アリスは生まれてはじめて、ドキドキしていた。
エリザベートがオーストリアに戻ったのは、早朝の朝の事だった。ヨーロッパ一の美貌を持つ皇妃。爽やかな空気の中、ルドルフは愛犬アレキサンダーを連れて、姉と共に出迎えた。流れるような黒髪、聡明さと上品さを漂わせた美しい唇からは軽やかな笑みがこぼれている。細い、華奢な体からは不思議な力強さと女王である、堂々とした雰囲気が放たれている。
「久し振りね、フランツ」
「シシィ、久し振りだね」
皇帝は、あいさつのキスをエリザベートの頬にした。エリザベートも皇帝の頬にキスしたあと、姉のジゼル、ルドルフに挨拶のキスをした。
「元気そうね、ルドルフ」
「お久し振りです、母上」
ルドルフはにこやかに微笑を浮かべた。
「また、会えますか・・・」
「ああ、ウィーンで・・・」
アロイスはアリスの瞼につめたいキスをした。
「君が来るのを待っているよ」
「はい・・・」
アリスの顔がぼっ、と赤くなった。
2
アンネローゼは塔の中で軽やかな歌を歌う。音楽の町ウィーンにふさわしく、哀しい美しい葬式の歌を、オペラを、闇を思わせる歌を。
世界地図が壁に並べられ、別の部屋では少女には不似合いな経済や政治についての本もある。
ひたり・・・
ひたり・・・。
冷たい意志の階段を刺客が上ってくる。
時折、宮廷の片隅で、司祭に字を教えてもらっているヴォルフリートの姿を見ることになった。何が欲しいか、といったら神やペンを買う為の仕事が欲しいといったのだ。
「・・・友達だといっただろう」
「でも、理由も泣く、この宮殿にいるわけでは・・・」
女官や下男に苛められたのか、いつもどこかを怪我していた。
「村が大丈夫で解決でも、多分司祭様や姉さんは心配しているし・・効している間も、姉さんは僕の知らない所に言ってるかもしれないんです」
くすん、とヴォルフリートは涙ぐんだ。
「・・・何故、なく」
「だって、こんなに姉さんと離れたの、初めてで、ルドルフ様は外に出してくれないし、理由も教えてくれないし」
う・・・・。
「わぁぁぁぁん!!」
ヴォルフリートは耳を押さえたくなるほど、ルドルフの前で泣きじゃくった。
「うるさい、耳障りだ!!」
ルドルフはヴォルフリートの頬を叩いた。
血だらけの手だ。
夢の中で、白い子猫の死体を今よりも小さいルドルフがぎゅっと抱きしめている。ただし、凍りついた、何の感情もない虚ろな瞳で。
「ルドルフ・・・いいの」
何が?
「お母様が着てくれる・・・いい子にしてれば」
来るわけがない、お母様が。
あの美しい人が。あの綺麗な白い手の人が。
「だから、行かないで」
どこに?
「貴方は、ここで生きていいの、貴方はルドルフでいいの」
ルドルフって、だぁれ?
姉のジゼルが優しく、ルドルフを抱き上げる。
関節技が見事に刺客らしい細身の男の首にはまる。ローゼンバルツァーの人間だという事を刺客は忘れていた。
ただの令嬢だと思って、男は侮っていた。恐るべき一族のものなら格闘技やスポーツを何かしら、仕込んでいるに決まっているではないか。
「・・・・・答えなさい、誰に私の命を狙えといわれたの」
ただの子供ではない。
正直、舐めていた。
―夢は夢だ。
ルドルフは庭園の中を歩いていると、元教育係の伯爵がルドルフの前に姿を現した。
「・・ゴンドレクール伯爵」
「ルドルフ殿下、お久し振りです、相変わらずお元気で・・・・」
「僕に何のようだ」
伯爵が眉を動かした。
「・・・いきなり教育係をやめさせられてね、私も生活に困っているんだ。皇太后様の命令か、それとも貴方のご意志か」
アレキサンダーが身構えた。
「止めろ、アレキサンダー」
「くうん・・・」
「まさか、僕は皇太子であり、まだこんな子供ですよ、教育係をどうにかできるわけないじゃないですか」
ルドルフは子供らしい表情を浮かべた。
ルドルフが宮廷内の教会に行くと、司祭たちとヴォルフリートの姿があった。箒を持ったヴォルフリートがルドルフの姿に気付いた。
「ルドルフ殿下・・・っ」
周囲の司祭たちに緊張が高まる。
ディルクとルドルフの視線が偶然会うが、ルドルフはディルクを無視した。
「いい、いつもどおりにしろ」
「ヴォルフリート、久し振りだな、この前はすまなかった」
「いや、僕も悪かったんです、ごめんなさい」
―本当に、あのお方の子供かしら。
―お前はどうせあのバイエルンの女がどこかの男との間に生まれた子供だろう、皇帝陛下の子供だって怪しい。
伯爵はそうやって、ルドルフに詰め寄った。あの時、アレキサンダーが出てこなければどうなっていたか。
「次は、図書館の本の整理だ、ちゃんと順番ずつ本棚に入れろよ」
ルドルフはヴォルフリートを突き飛ばした。
「は、はい!!」
「ルドルフ様」
司祭の一人、ダヴィデが姿を現すと、ルドルフはうれしそうな表情を浮かべた。ヴォルフリートをつい苛めてしまうルドルフは、ダヴィデを信頼していた。
「私の言ったとおりでしょう、あの子は役に立つと」
「・・あ、ああ」
「この前も、あの男を始末するのに、逃げている男の居場所をつきとめせた、あなたのものを盗んだとか言ってね」
気味の悪い子供だ、とダヴィデは、ヴォルフリート・バルトに対してそう思った。
「・・・・ダヴィデは僕をひとりにしないよね」
寂しそうな子供らしい表情でルドルフがそういった。
「・・勿論ですよ、ルドルフ様」
情報源として利用できる間はいくらでも。
―ーあの宝玉を手に入れるまでは。
「そういえば、赤ワインを退職祝いに送ったんですって」
「ああ、長い間、彼には世話になったからな」
なんて笑顔で笑うんだろう、とダヴィデは背筋で冷たいものを感じた。
・・・愛に飢えた子供、同時にこの少年は毒もはらんでいる。
「お茶にしましょうか、次の時間までは時間があるでしょう」
「勿論だ」
ルドルフは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
ダヴィデは、ディルクと共に、皇太子月の女官や伯爵を巻き込んで、木曜日、異能者を殺すための宝玉の隠し場所を探し当てた。
古くからいる宮廷に仕える使用人や司祭を脅し、言い含めた。
「・・・言いか、皇帝の寝室は今は無人だ、うまくやるんだ」
ヴォルフリートの表情は恐怖で染まっている。
「・・・・・」
ヴォルフリートの背中には、銃が当てられている。
ルドルフが現れたのは、ヴォルフリートを気絶させて、僅か十五分後だった。
「―それが、あなたたちの狙いか」
ディル区は驚いた表情を浮かべた。
「あらかじめ、網を張っていたが・・・・・」
伯爵の服の袖には、ルドルフがつけた邪気のかけらがあった。
「このガキ・・・・・」
残酷な笑みをルドルフは浮かべる。
「バイエルンの魔女の息子が・・・・」
伯爵がルドルフに襲い掛かり、剣を振り下ろそうとする。その時、透明な蛇が伯爵の体にまとわりつき、締め付けようとした!!
「悪魔、悪魔の子だ!!」
女官が伯爵を守ろうと、恐怖に顔を染めて、銃口をルドルフに向けた。ルドルフが一瞬、驚愕の表情を浮かべた。
「待ちなさい、皇子は私が!!」
ダヴィデが異能者殺しの短剣をルドルフに向けた!!
「神の身元にかえるがいい!!」
「ダヴィデ、止めろ、僕はお前を・・・・!!」
ルドルフを守ろうと、ルドルフの体から黒い魔物が一瞬でダヴィデの身体を焼き尽くした!!ディルクが慌てて、ダヴィデの元を駆けつける!!
「ぎゃあああああああああああ!!」
「ダヴィデ!!」
その光景を見ていたヴォルフリートは座り込んで、恐怖で顔を染めていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・っ」
ダヴィデは倒された。
「ダヴィデ。ダヴィデ!!」
ディルクがルドルフを睨んだ。
「恨んでやる、お前を一生・・・・この悪魔!!」
「違う、・・・僕は・・。・・・僕はオーストリアの為に、僕は悪くない!!」
その時、外のほうから声がした。
「逃げるぞ!!」
「待って、私も!」
宝玉は結局ルドルフ様の口から語られる事はなかった。
「指輪?」
数日前、司祭のディルクが、神の教えをヴォルフリートに教えた後、人目を気にして、ざんげ室につれてきた、いきなりヴォルフリートが持っていた指輪の話をしたのだ。
「そう、今も持っています?」
「ハイ、ルドルフ様に一度お貸しましたが」
「その指輪がどういうものか、君は知っているんですか?」
「姉さんは、母からのプレゼントだと」
「それはですねー」
アーディアディト・バルト。
ミュンヘンのホームレスだったデニスは、一座のした働きの少女に出会って、合いたくてあえなかった娘と会う事ができた。
「お父さん・・・」
「ビルギット・・・」
アリスもホッ、と胸をなでおろした。
「よかった・・・」
「ありがとう、お嬢さん」
デニスは子供のような笑顔を浮かべた。戦争で職人にとっての命である右手を失い、酒びたりになり、子供と引き離された。
―だからこそ、この少女に執着した詩人志望のオイゲンが、アリスを追いかけて、貴族の馬車に引かれて、死んだときの醜い表情が忘れられない。
金髪に澄んだ瞳の美しい少女に良心的な青年が運命を狂わせた。この少女の今後を思うと、なぜかとてつもない不吉な予感が付きまとう。
―アーディア。アーディア。
オイゲンの最後の言葉が忘れられない。
次のザルツブルクを行けば、アリスはヴォルフリートに会える。
3
漆黒の闇の中で、二人が消えた後、ルドルフは壊れたようにザクザク、と床をフォークで突き刺していた。
はめるつもりでディートリヒは、メイドにスープをぶっ掛けられて、メイドに着替えをされていたヴォルフリートをブリジットのお茶会に来ないかといった。
「ディートリヒ」
咎めるような声をレオンハルトは上げる。レオンハルトお気に入りの音楽をするための部屋で、自分のライバルを落す為にディートリヒがそんなことを言い出したから、息子を咎めたのだ。
「しかし、お父様、新しいものには己の立場を」
「ならぬものはならぬ」
ちぇ、と小さくディートリヒが声を上げた。
「私はあの女が好きではない。無粋で男を男だと思っておらん」
どうやら、レオンハルトは、ブリジットという伯母が苦手らしい。嫌悪感すら感じる。その気配を感じたヴォルフリートは戸惑ったような表情を浮かべる。
「ヴォルフリートもあの女に近づくな」
「何故ですか・・・」
きつい眼差しでヴォルフリートは、レオンハルトに睨まれた。穏やかな人と思ったのに、意外な。迫力にヴォルフリートは後さずった。
コボルド伯爵の部下が、アリスから懐中時計を奪おうとしたのはミュンヘンにいる最後の、宿泊しているホテルでの事だった。他の一座の団員は寝ている。
「離して・・・っ」
「いてて、手を噛むな、このガキ」
「いてっ、いいから荷物と一緒に外に連れ出すぞ!!」
「誰か、助けて!!」
空しい悲鳴だけが部屋の中で響いた。
コボルド伯爵は常に生まれた時から、たけのこぼるどけに爵位を得たときも神経を尖らせてきた。あの頑固で気難しく冷徹な、血も涙もない紺青曲がりの父親は実力のある人間しか、自分の家族とは認めない。そんな中13年前、コボルド伯爵の実家である、薔薇と白鳥が翼を広げたような紋様、薔薇のつるが巻きつくような紋章を持つローゼンバルツァー侯爵家で、「プラハ心中未遂事件」「ハロウィン殺人事件」「薔薇の紋章偽造事件」の三つの事件が起きた。
「ボス、連れてきました」
「良く、やった、お前たちは下がっていい」
伯爵は潰れた工場跡にアリスを連れてきた。
自分を睨む少女は、憧れのマドンナであり、「ウィーンの聖女」といわれた母親似よく似ている。
「誰よ、貴方・・・・、私をどうする気なの」
「まずは自己紹介をしよう、私はクリスト・クラウス・ヴェンツェル・コボルド伯爵、君の3番めの叔父に当たる男だ」
アリスは驚いたような表情を浮かべる。
「伯爵様?」
「私は、ローゼンバルツぁーの当主になりたい、だが、そのためには、後継者候補の長兄ラインハルト、次兄のコンラートを押しのけ、君の持つ後継者だけが持つ懐中時計だけでも手に入れないといけない。我が家の後継者には、現在の侯爵からそうした品を貰わなければ、認められない」
「・・・・教会を焼いたのは、貴方なんですか?私が貴方の命令に従わないといったら?」
「君の母親似合わせてやる、無論、君の弟であるヴォルフリートにもね」
その名前にアリスの心臓は震える。
「公爵のお気に入りは、2人の兄ではない、あの男のお気に入りは昔からフランスの女に産ませた双子の姉妹の姉、お前の母親だ、地位が欲しいのだろう?」
伯爵がアリスの胸元を掴む。
「私は・・・・」
アリスの心は揺れる。
「私は貴方に従わない、私を決めるのは私よ、自分の力で弟に会いに行くわ、地位や伯爵も関係ない」
「このガキ・・・・!!」
伯爵は、拳を振り上げた。
「・・・・・っ」
アリスはぎゅっ、と目をつぶった。
お茶会では、ローゼンバルツァー家の子供達は大人に取り残される形で、穏やかな日光が容赦なく降り注ぐ形でメイドや黒服の使用人に世話をされながら、緩やかな時間を楽しんでいた。
「ヴォルフリートお兄様」
真っ白な手が労働でなれたヴォルフリートの手に触れる。
「・・・フィネさん」
「フィネでいいです、あなたはわたくしの一番のお兄様でしょう。一緒に紅茶を飲みましょう。もっと、お兄様の優しい声や手を感じたいのです」
・・・困った。孤児院でいた時も下の子はいたが、こうやって、実際に自分に突然家が出来て、父親が現れ、兄弟まで現れるなんて。
・・・・姉さん,エリク。
罪悪感だ。今、こうしてる時も、自分の本当の兄弟は、ミルクも飲めない。それでも、自分の足で歩いているのに。本来なら、僕もそこにいて、働いたはずだ。
本当にここは姉さんが帰る場所なのだろうか。
「フィネ、・・・僕は優しくないよ。・・結構自分勝手で自己中だよ」
「手は暖かいです、とても。初めて、お会いしたその日と変わらず。ヴォルフリートお兄様はそんな人じゃありません、貴方はとても温かく、お優しい。お兄様みたいなお優しい手を私は知りません」
「でも、フィネと違ってかさかさだし、結構傷もあるよ」
「お兄様・・・」
「困ったな」
それを見て、妹思いのディートリヒが頭に血を上らせた。
「フィネ、庶民に軽々しく触れるんじゃない!」
「やっ」
レオンハルトに似たのか、ショコラというナの茶色のウェーブヘアのツインテールの少女は車椅子を素早く動かし、閉ざされた瞳に怯えを見せて、ヴォルフリートの後ろに隠れた。
「父様や他の人間はだませても、僕はだまされないぞ、この赤毛のそばかす!!」
カッ、となり、ディートリヒがヴォルフリートの胸ぐらを掴む。
「お兄様、かんしゃくを出さないで、怖い!!」
「黙れ!!」
「ちょ、やめ・・・っ」
ディートリヒは完全に頭に血を上らせて、ヴォルフリートに襲い掛かり、殴り、蹴った。
ドス!バキッ!!ズゥン!
「オッドアイなんて、お前、魔女の息子だろう!!」
「痛い、痛い、止めて!!」
バシィィン!!
「やだっ」
さすがに回りも止めに入った。
「我がローゼンバルツァー家の聖女、・・・僕の母がお前のようなまがい物を産むものか、言え、お前はどうやってもぐりこんで、父上をかどわかした!!」
バシンッグキッドスン!!
「やめろぉぉ!!」
「ディートリヒ兄様!!」
フィネは目を手で隠した。そのとき、世話役の老婆テレジアが慌てて駆けつけてきた。
「また、貴方ですか、ヴォルフリート!!」
テレジアが間に入り、ディートリヒを引き離すと、床に落ちたヴォルフリートを冷たく睨んだ。
「いてて・・・、え?」
顔を上げたヴォルフリートは驚いた。
「やはり、庶民上がりは違うということね、ディートリヒ様に暴力なんて、汚らしく、何と愚劣な」
頭の中が混乱する。
「何を・・・」
「覚えておきなさい、家を継ぐのは正当なレオンハルトさまの嫡男、ディートリヒ様であることを、お前は従うものだという事を。お前の価値は、ただあのお方の血を持っている、それだけだと」
教鞭がヴォルフリートの顎に添えられる。
「さぁ、謝りなさい、弟に暴力を振るった罪として」
「違います、僕は!!」
「謝りなさい、本来なら貴方はこのお茶会にもこれる立場ではないのですよ」
「イヤです、自分は暴力をふるってない!!」
「大人に逆らう気ですか!!」
鞭で激しく叩かれた。
「愚劣な庶民のときのことなど忘れなさい、貴方は誇り高いローゼンバルツァーの人間です!!」
「イヤだ!!」
「酷いな、テレジアは」
ブリジットがヴォルフリートの傷を治しながら、そういった。エレオノールの双子の妹は女神のように美しい顔立ちをしていた。
狩猟が趣味らしく、ブリジットの部屋はアジアのものや異国のもので全て揃えられて、女性らしい備品はあまりなかった。ただ、高貴な香水の匂いが部屋全体に漂っていた。
「・・・・いえ」
我儘で気まぐれで、男を男と思わぬ気丈な女性は黒髪の艶やかな髪を腰まで伸ばし、肖像画で見たエレオノールと瓜二つの瞳と顔立ちに見事な鍛え抜かれたプロポーションをしていた。母とは仲が悪かったと聞いている。
「・・・あの、何故、僕の怪我を治してくれるんですか」
「私が貴方の怪我を治してはおかしい?」
「いえ・・・」
「そうね、貴方の両親とは仲がよくないわね、噂で聞いた通りよ。レオンハルトなんか、私の顔を見るだけで嫌な顔をするもの」
「・・・僕は、孤児院育ちです」
「ヘレーネね、周りに貴方のことを悪く吹き込んだのは。まだ、納得していないのね。お姉様はひねくれてるから。けれど、ヴォルフリート、私は貴方を快く迎えてよ」
ぐい、とヴォルフリートの頭を掴んだ。
「・・・貴方は私の大好きな人ににてるもの、その髪もその緑や青の綺麗な瞳も。今はそばかすもあるけど、貴方はきっと素敵な殿方になるわ。だから、私が貴方を愛してあげる」
ざくり、と何かを引き裂く音が聞こえた。
「貴方を傷つけるものは私が殺してあげる」
ヴォルフリートは慌てて、ブリジットから離れた。
・・・・・魔女。
何故だか、取り込まれそうになった、あんなに温かく優しい雰囲気なのに。傷つけるものではないのに。傷ついた身体を押さえながら、ブリジットの邸宅内の森の中を歩く。
・・・シャノン、エリク・・・皆。
何で、帰らせてくれないんだろう。・・・・姉さん。
いきなり、この家の子供だといわれて、難しい勉強やマナーを教わって、専用の使用人や部屋をつけられて。外には自由に出ることができない。自由に、布を縫うことも料理を作ることも、働くことも出来ない。
無事だと、ルドルフは言った。
「姉さん・・・・」
そんな時、足元に金色のどんぐりが落ちていることに気付いた。
「どんぐりだ、わーっ」
ヴォルフリートの声が弾んだ。拾うと、また数歩先にどんぐりは落ちていた。
ローゼンバルツァー家に当主の双子の娘、双子の姉の娘、エレオノールの子供が馬車で来たのは、雨の日だった。叔父のコボルド伯爵は子供達に危害を加えようとして、罰を与えられたという。
彼らの友人のシャノンと言う少女は、エーベルハイト家の誘拐された、アルベルトの妹シャノンの座についたという知らせをアリスはルドルフから聞かされた。
「姉さん!!」
「ヴォルフリート!!」
青空の下で、アリスとヴォルフリートは再会した。場所は、王宮内だ。ローゼンバルツぁーの人間が彼女を連れてきたのだ。
2人はお互い走りよって、お互いの身体を強く抱き合った。
「良かった、ヴォルフリート」
アリスは涙ぐみながら、優しく微笑んだ。
「姉さんこそ、僕心配したんだよ、一人でおなかすかせてないか、怖い目に合ってないか」
「ヴォルフリート!!」
「姉さん!!」
2人はまた抱き合った。ルドルフの姿を見ると、アリスの表情が一瞬暗くなる。
「・・・・?」
ルドルフは不思議そうな表情を浮かべる。アリスは見たのだ、この少年が仲間を使って、何したかを。
「・・・・・・そうか、見たのは君か、アーディアディト」
アリス達がいるのは、宮廷内の教会だ。
「僕を告発するか?」
「じゃあ、やっぱり・・・・、人を・・・・・」
アリスの表情には緊張が浮かんでいる。
「ああ、我が帝国の為にな」
「そんなの、間違っています!!」
思わず、アリスはルドルフに詰め寄った。
「オーストリア・ハンガリー帝国・・・・、我が国を守るためなら、僕は何だってするさ、僕は次の皇帝だからな、さて、君は僕をどうする」
「私が邪魔者なら、私を殺すんですか」
ルドルフとアリスは真剣な表情で見つめあう。死を覚悟した戦国武将のような、アリスは戦士の瞳を浮かべている。
ごくり、とルドルフは喉を回した。
・・・・彼女の背後には、龍が見える。
その状態が数秒続いた後、アリスが口を開いた。
「私は死にません、なぜなら愛する人たちがいるから」
「・・・・そうか」
「だから、貴方がしたことを訴える気はありません、私はルドルフ殿下を信じます」
「何故、信じる事が出来る?僕がだましているかもしれないぞ」
何か含んでいるような笑顔をルドルフは浮かべる。
「信じなければ、貴方も私を信じる事ができないと思います。違いますか?」
アリスの青い瞳には、生命力にあふれた美しい輝きが放っている。
「そうか、わかった」
ルドルフとアリスは手を握り合った。
4
薔薇が側に触れそうになり、世話役の研究者の前に悲鳴を上げそうになる。
「~~っ」
表情が一気に青くなる。
「早く、片付けて、その醜いものを早く!!」
ヒュウウ・・・・・、風で赤い薔薇の花弁がアンネローゼに近づく。
「きゃあああああ」
一気に壁際に青ざめて、恐怖で引きつらせながら、アンネローゼは後さずる。
森の中でどんぐりを拾っていたヴォルフリートはきたの方角の石造がおかれた薔薇園に出た。ツタで覆われた古い白い小さな洋館には温室がつけられていた。
「・・・・うわ」
しかし、ヴォルフリートの目には大きく見えた。薔薇園のすぐ近くには、金属製の鍵がいくつかつけられた扉が見えた。扉の下には数歩だけ上る階段が中央につけられていた。塔のようなものもある。
「魔女とか本当に住んでそうだ」
その時、高級なスーツに身を包んだ黒髪とあごひげの中年の切れ長の男、ブレーズ子爵が医者をつれて現れた。医者の方は青年といった年だった。
「誰だね、君は」
「えっ、あっ、え?」
「誰の許可を得て、この庭に足を踏み入れた」
「すみません、間違いました!!」
完全にパニくっていた。
「誰だね、君は」
「お待ち下さい、子爵、カレは・・・」
「何だ」
「・・・・こいつが、あのエレオノールの・・・」
「?」
「すまない、おびえさせて、私はブリジット様の夫であるこの家の主の友人で、とあるお方の世話役のようなものをしているブレーズ子爵だ。皇帝陛下から身分を貰った君と同じ庶民の生まれだ」
手を差し伸べられた。
「・・・は、はい」
・・・?別の視線?
振り返ったが誰もいなかった。
「ここは、ブリジット様たち家族のプライベートエリアだ、迷ったのだろう。君の家のもののところまで」
ギィィィ・・・・
ヴォルフリートはぎょっとなった。扉が突然開いたからだ。鈴の音が鳴り響く。
塔から青い薔薇が投げ落とされる。
「ブレーズ、それを私のところに連れてきて」
女の子の声?
「そんな、何故」
「その声、気に入ったわ」
青白い手が塔の中の窓から音も立てずに抜き出てきた。
蝋燭の火が揺らめいていた。
「・・・足元を気をつけて」
子爵は神妙な顔立ちをしていた。ちちっ、とどこからかネズミの声が聞こえる。薄暗く、塔の中は冷えていた。まるで冬の中にいるようだ。
どこまで上がっていくのだろう。
そんな不安からか、医者の白衣を握った。
「・・・怖いかい?」
「・・・・」
「大丈夫、君が行くのは君の血縁者の女の子だ」
青い、毒々しい薔薇がアリスの頭上にゆっくりと舞い降りてくる。
ローゼンバルツぁー家の北に存在する、使われていない洋館の前まで、アリスはアリアを歌う、カナリアのような歌声を確かに聴いた。洋館は相当古いのか、茨で囲まれている。
「・・・・・」
何かに導かれたように、アリスは洋館の玄関へと足を向けた。
「近づくな」
ライオンの頭をかたどったドアノブに触れようとすると、ラインハルトの長男ーフォルクマが銀髪のショートヘアで表情を一定も変えずに、黒い馬を連れて、アリスに近づいてくる。金髪のウェーブヘアのダミアンの姿もある。
「そこは、ブリジット叔母様の持ち家であり、ブリジットおば様の娘たちの住まいだ、許可泣く入る事を許されない」
しかし、何十もの鍵で閉ざされた扉は開いている。茨が頑丈な扉を覆い隠していた。
「ついてきなさい、君の家のもののところまで君を連れて行くから」
川に落とされたところで、彼らの両親が迎えに来た。
「お前達、帰るぞ、そんなところで遊んでないで」
「はーい」
少年の一人が、ヴォルフリートにつばをはいて、嫌味な笑顔を浮かべた。
「これに懲りたら、お前も皇太子殿下に近づくなよ」
同じクラスの貴族の家の子供達が集まる、ボランティアの集まりで、裏の森の小さい川にヴォルフリートは落とされた。乗馬用に着替えさせてもらった服が台無しだ。
「大丈夫かい?ヴォルフリート」
黒髪のウェーブヘアの短髪の美少年、エルネストがヴォルフリートに手を差し出す。ヴォルフリートの目の色と同じ、緑色の目をしている。
「は、はい・・」
エルネストの力で、ヴォルフリートは起き上がる。今日は雨雲が多く、不安定な天気だ。
「皇太子殿下がメインの乗馬に僕たちが出席しないとまずいだろう」
「ハイ、エルネスト様」
「様はいいよ、従兄弟じゃないか、エルネストでいいよ、それに僕も君に近づきたいし、僕、ルドルフ様に憧れてるんだ」
怖いお化けが出るのは、こんな天気の時だろう。
「・・・憧れね」
「ねえ、ルドルフ様は普段はどんな方なの?」
「あ、ああ、ルドルフ様は・・・・」
最上階まで来たとき、ヴォルフリートはへたへただった。
ぜーっぜーっとなった。
「情けないね、君は。子供ならこれくらいで息をつかないの」
「開くぞ、フランツ」
ブレーズ子爵が茨で囲まれた十字架が刻まれた扉に鍵をかけた。がちゃり、と音を立て開くと、また扉が現れる。そして、また鍵で開く。
川に落とした犯人のバルドゥーインは嫌味なお坊ちゃまであり、亜麻色の独特な髪型をした自信家で、ヘレーネ夫人の息子で、ルドルフの横で父親と共に楽しそうに喋っている。
あんな背景みたいな奴がルドルフ殿下のような、高貴な生まれの肩にはふさわしくない、罰を受けて、当然なのだ。
赤い皮製の日記帳をルドルフが見ていることに、バルドゥーインは気づいた。安物らしく、微妙なつくりで出来ている。
ギィィィ・・・・。
ザァァァ・・・。雨の匂いが鼻腔をくすぐり、風が通り過ぎていく。
心臓をつかまれたと思ったと同時に会えたと思った。
「―-」
扉の間から艶やかな黒い長い髪が揺らめいてきた。白い少女の手がヴォルフリートの顎や頬に触れる。
「―-」
「ご苦労様、お前達、かえっていいわ」
「はい、姫様」
形を確認するように白い指が顎や頬、首筋に当てられる。
「私の声、貴方には聞こえたのね」
かすかに頬に赤みが浮かぶ。ぞくりとなった。
「待っていたわ、貴方と会う今日を」
「さぁ、遊びましょ、遊びましょ」
どきん、と脈を打った。少女の獣のような瞳がヴォルフリートを捕らえた。少女の手がヴォルフリートの身体を包み、次の瞬間一気に部屋の中に人間と思えない速さで飛びいれた。
5
ゴロゴロゴロ・・・・
不安定な天気の中、ヴォルフリートはアリスを乗せた車に続いて、ウィーンの街中を歩いていた。
「どうしたんだい」
「レオンハルト様、それが前のほうで馬車の衝突事故があって、しばらくこの道は使えないと」
ぽつぽつと雨が降り始める。
くしゅん、とヴォルフリートはくしゃみをした。
「大丈夫か、ヴォルフリートよ」
「はい、お気遣いありがとうございます」
レオンハルトは困ったような表情を浮かべた。
「複合異能者と聞いていたけど、今の君は、アーディアディトが知っている彼なのかな」
声色が違う。子供らしいつもの声と。
「―俺はヴィルフリート、瞬間移動と炎を操る力を、予知は小さな妹のミランダ、他人の意識を一部操作するのは自傷癖のある意地悪なヘンリー、絶対防御は楽天家で能天気な二コル、変質能力のアルバート、・・・またあららしい能力が出れば甘えん坊や凶暴な俺や女性の俺も出てくるかもしれません」
「・・・・主人はいつものヴォルフリートと思うべきかな」
きつい目つきでヴォルフリートが睨む。
「―息子がいくつも、別の自分を持っているのに、何故冷静なんです。頭がおかしいとか、精神異常者と思わないんですか。・・・・・それとも俺やアーディアディトを捨てた罪滅ぼしですか」
「暗い瞳をしているね、ヴォルフリート・・・・それだけ、君は私達を恨んでいるのかな」
「・・・・病院に送って、動物園のサルのように扱うことも貴方はできるでしょう」
「チョコレートの店だ、一緒に買おう」
「レオンハルト、・・・俺をどうするつもりだ・・・」
「行こう、ヴォルフリート」
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