なりぽん@厭離庵

なりぽん@厭離庵

距離の不確かさ


距離の不確かさ


ひょっとしたら、
僕はもう冷静でないのかも知れない
距離の不確かさが堪らないのだ

彼女の一点を凝視していた時
自分の眼が
一体何を見ていたのか
見ていた真にその時以外に
それを確かにできないのだ

確かにするために
記憶に頼ろうとするが
或る部分が鮮明になると
他の部分が俄かにぼけてくる
結局全体としては
まるで輪郭のない無生物だ

ああ
もうこの距離の不確かさが堪らない
僕は指でその距離をはかろうとするが
その距離そのものが
僕のその試みに対して
曖昧な困惑の中に
封殺してしまうのだ

僕の心は、その分子量が
まるで空気のそれと同じ様に
この不確かな距離で揺れている




© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: