natural smile

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チロが亡くなって




仕事に行った。
そんなに忙しくなかったのに、声をかけられない雰囲気が出るように
必死で仕事した。
チロのことを興味本位で聞かれるのが嫌だった。
それから、できるだけ間があかないように、なんでもいいから
できるだけしゃべった。

仕事があって、よかったって思った。
女性の多い職場だから、休憩の時もたあいのない話がたくさん
できてよかった。

職場のみんなの前ではなんとかだいじょうぶだったけど、
一歩離れると、涙がすぐあふれてきた。

道を歩いていても、電車にのっていても、
まわりに人がいても涙がでてくる。
失恋した人だと思われたかな。

チロはもう亡くなってしまったけど、
仕事帰りにまた実家に行った。
両親は仕事で夜の11時すぎまで戻ってこない。
チロは日曜日に動物霊園に連れて行くことになったから、
それまでだいじょうぶなように、氷をかえてあげないといけない。
それが今の私の役目。

昨日の夜ではなくて、もし朝チロを連れて行っていたら、
チロは家でお空に行く事ができたのかもしれない。
待合室で泣いたとき、かばんをあけてあげたらよかった。
開けたって、もう出る力はなかったのに。
そしたら、チロをなでてあげることもできたのに。
チロはまだまだ大丈夫なような気がしていて、
まさか死ぬなんて思っていなかった。
本当にくやしい。
後悔しないようにって、夫は私の納得いくまで、
私が好きなようにしたらいいって言ってくれていた。
なのに、最後の最後で後悔することがいっぱいできてしまった。
夫にも申し訳ない。

実家に着くまで、気を紛らわそうと思って雑誌を買ったけど、
ペットの広告があって、またチロのことを思い出して
涙が出てきた。

実家に着くと、チロはちょうどいい大きさの発砲スチロールの箱に
入っていた。
母は忙しいのに、朝、近くのスーパーでもらってきてくれていた。
おかあさん、ありがとう。

発砲スチロールに入っていたからか、氷はほとんど解けていなかった。
1.7キロの板の氷、5つも買ってきてしまったけど、
もう必要ないかもしれないな。
今、その氷は冷凍庫を占領している。
ごめんねー。お母さん。

チロは本当に今にも息をしそうに、キレイに眠っている。
毛もふさふさしていて、なでるといつものチロ。
チロが死んでしまったなんて、まだ信じられない。

昨日、夫に「チロが死んだ」と電話したら、
夫は車で実家まできてくれた。
そして、お線香とろうそくを持ってきてくれていた。
でも、実家にはお線香を立てる香炉がなかった。
だから、お線香をあげることができなくて、そのままだった。
今日は、香炉を買いに行ったので、
チロにお線香とろうそくをあげてあげることができた。
近くのスーパーには香炉が売っていなかったので、
ちょうどコーン型のお香セットに小さい香炉が入っていたので、
それにろうそくをさして使うことにした。
コーンは台なんかなくてもちゃんと立ってるからね。
夫が持ってきてくれたお線香はさすところがないので、
半分に折って使った。

お香を焚いていて、これは本当に意味のあることだなと思った。
もちろん、チロのために焚いたのだけど、
その香りが私の気持ちを癒してくれた。
不思議な気持ち。
心が落ち着く感じ。
そして、ろうそくの炎も私を癒してくれた。
こんなことをはじめに考えた人はすごいなと初めて思った。

チロは無事にお空に着いたかな。
翔ちゃんに出逢えたかな。




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