日本人ムスリムと軟派イミグレオフィサー

日本人ムスリムと軟派なイミグレーション・オフィサー


空港で働いていたときの話。
私の主な仕事は、エアー・サイドでの通訳及び、商品のプロモーションだったんだけど、制服で歩いているとインフォメーションに 間違われたりと、いろいろな仕事をしました。

ある日いつものように、ターミナル1からターミナル3への移動の途中、ターミナル3のイミグレーションをすり抜けようとすると、 日本人の女の子がカウンターでオフィサーに捕まってたのね。
その子は日本人にしては珍しく、一目でムスリムとわかるいでたち。
あのずるずる長い服とスカーフで外から見えるのは目の周りのみ。
とても目立っていました、尋問してくれーとでも言わんばかり。
彼女は所持品をカウンターの上に広げさせられ、オフィサーはその中の書類の一部に目を通していたんだけれども、私の姿を認めると、
「君、日本人?この書類なんだか分かる?」
と日本語でかかれているものを私に見せてきた。
「就労ビザ取得の手続き方法についての書類だね。」
と答えると、「もし時間あったら、この子の持っている日本語で書かれている書類の確認に付き合ってくれないかな、いや、 忙しかったらいいんだけれども。」
と、その女の子と共に別室へ移動。

助けてあげられるものなら助けてあげたかったんだけれども、なんせその女の子(20歳前半と思われる)は、 怪しげな書類を山ほど持っていたので、どうしようもなかったのよ。
先ず、観光で滞在したいという彼女は、雇い主からのコントラクトのレターを持っており、更に、 フランス人の彼氏のクレジットカードも持っていた。
彼女が個人的に父親に宛てた手紙も、訳して読むよう言われてしまって、私は読みながら何度か「ごめんなさいね。」 と申し訳なく思ってしまって彼女に謝った。
オフィサーは、「ほらね、君のために僕はランチタイムも取れないんだよ、ねえ君(私に向かって)、君の友達が困っているよ、 どうしたら良いかなー。」 なんて私に振って来る。
私は「それを決めるのはあなたの仕事でしょ。」 としか言い様がない。
だって、イミグレーション・オフィサーとして彼女をどうするかの答えはもう出ているんだろうし、私は所詮ただの通訳。

結局、彼女はそのまま日本に送り返されることとなってしまったのよね。
彼女を強制送還者用の小部屋に見送ったあと、担当のオフィサーが話し掛けてきた。
「ありがとうね」
「なんだか、同じ日本人としてかわいそう、しょうがないけど」、と私。
するとオフィサーは自己紹介を始め、最後に「君かわいいね」だって。
なんなんだ。
彼はちょっとカッコ良くてわたし好みだったんだけど、他人の運命をいとも簡単に変えてしまった奴の、 そしてその出来事直後のこの言葉に少し腹ただしく感じた私は「残念ながら、彼氏いるから。」
と、さっとかわそうとすると「残念ながらって、君にとって?それとも僕にとって?」だってさ。
ついでに「腹の中には子供いるんだぞー」とでも言ってやったら(実際にいた、ので当時私はセキュリティーのX線はパスしていた)、 面白い反応を示してくれたかな?
イミグレのオフィサーもただの助平な兄ちゃんだ。
深い仲になれば、永住権のはんこのひとつでも押してくれるのかしら?と思ってしまった。


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