ねこのぽち

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2007.08.21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
8月12日。
父が他界しました。

65歳。
癌でした。


葬儀も終わり、
そして、父の入院先に通う事もなくなり、
身辺の慌しさは少し、落ち着いた…のかな。

むしろ、
先がない、と宣告された一ヶ月ちょっと前からも。


病院通いしつつも、仕事的にも子ども的にも慌しい時期だったし、
仕事して、普通に笑って。
誰も何も気付かないような、普段通りの自分だったと思う。

取り乱したり、暗く沈んで過ごすでもない自分は、
もしかしたら、とっても冷たい人間なのかもしれない。って思った程に。

業務上伝えておく必要がある人、あるいはたまたまそういう会話になった人、
以外に、友達にも現状を話すのは躊躇いがあった。

言葉にすれば、それはよりリアルになってしまうような気がして、
辛い現実から目を背けるだけの、現実逃避だったのかもしれないし。

感じた事、考えた事、たくさんあったけど、
言葉にすれば、どれも嘘くさくなるような気もした。


かえって何も言えなかったのかもしれない。

ただ、独りで居て無意識になった時に、勝手に涙が溢れてくるだけだった。



2年ちょっと前から癌を患った父は、手術・入退院を繰り返しながらも、
普段は、仕事もしていた。

今年に入って、転移した膀胱を全摘。

様態は思わしくなく、再入院。

長引く入院の末、一ヶ月ちょっと前、
母がいる時に急激な痛みに襲われ、
その痛みに唸りながら、家に帰ると言い出したらしい。
痛みを抑える為の投薬。
以降、二度と起き上がる事も、まともに話す事もできなくなり、
先がない、と医師からの突然の宣告。

何ヶ月もの間、新たな癌があるだとうと予測されながらも、
最期の直前まで、確定が出なかった=癌に対する治療ができてなかった憤り。


突然の宣告に、呆然としながらも、
日々大きく変わる様態に、かすかな希望は捨てらずにいながらも、
その一ヶ月という時間は、
来るであろう最期への覚悟をさせるには、充分だったのかもしれない。

その日を迎える事は、とても辛い事だけど、
床に伏した父の姿も、やはり辛いものだった。
父の性格を考えると、
病の痛みよりも、
その痛みに耐えて横たわる事しか出来ない自分の方が、
精神的に辛かったんじゃないかって、勝手に想像してしまう。
母以外の人間に、その姿を晒してしまう事の方が、きっと。

入院はいていても、まだ普通に食事もして元気もあった頃、
お見舞いに行くと、体が辛くてもそんな素振りを見せず無理をする人だったから。
母以外の人間には、弱音を吐く事がなかった人だったから。


でも。
覚悟も理解もできてたのに、
まだ受け入れる事は、できない。



煙草はよく吸うけど、ほとんどお酒も飲まない(うちは、母が酒豪やったんさ)
賭け事もほとんどしない人で。
だからって、おとなしい人かと言えば、そうではなく、
どっしり構えたような貫禄があって、
外では愛想も良い人だった。

アタシ的には何故かずっと前から、梅宮辰夫さんの雰囲気を父と重ねてた。

アタシの動物好きは、両親譲りで。
捨て猫・捨て犬は子どもが拾ってくるばっかじゃなく、
父が保護した猫だっていた。
怪我した鳩さえも父はほっとけず、連れて帰って来て治療してた。

釣りが趣味で、釣り餌はもちろん、小道具までも自分で作る器用でマメな人だった。

歌もよく歌ってたと思う。
子どもの頃、母に歌ってもらった記憶はないけど、
父に歌ってもらった歌は、たくさん覚えてる。

震災後、自営業を廃業して、棲む場所も仕事も変わった。
子どもがそれぞれ独立してからは、
山登りに行ったり、いい年して職場の若い子達とスキーに行ったり。

ここ数年は、よく絵も描いていた。
水彩の風景画が描かれたスケッチブックは、数冊残ってる。
年賀状にも、印刷ではなく一枚一枚に筆を入れていた。
アタシが、描くなら水彩の風景画か鉛筆のみ、ってのも父譲りやったんやな。
アタシは、今は全く描く事もないし、絵への思い入れもないけど、
歳いって身体が思うように動かなくなったら、
趣味にでもしようって、秘かに思ってた。


思春期の頃、ご他聞に漏れず、父を遠ざけ会話もしなかった時期はあった。
でも高校生の時、欠時補充(要は出席日数足りない補充w)で書かされた作文に、
親の事を書いた自分がいた。

大人になってからは、どこで聞かれても、自分は両親が好きだって、
親の好きなところを胸を張って言えるのは、
小さな自慢でもあった。
別に全然、仲良し親子だったわけでもないし、よく出来た親だったわけでもないし、
それは、「対 人間」として見た評価で。

両親の喧嘩は見た事がない。
母が、文句言わないようにしてるんやろな、ってのは子ども心に感じてたけど。
だから、夫として非がない人だったかと言えば、
決してそうでもなかったやろし。

親としては、口うるさい人ではなかった。
穏やかな人でもなかったけどね。
アドバイス的な事は言っても、子どもの意思を尊重してくれたと思う。
ただ、アタシが進路を決める時期に高校行かないって言った時と、
高校辞めるって言い出した時は、
懇々と諭された。
頭ごなしではなく、目上の人間からの意見として。

もちろん、さんざんヤンチャもして心配も迷惑もかけてたから、
怒鳴りつけられた事なんかは、フツウにあるけどさ。

それでも今思えば、絶対に帰ってくる場所を開けて待ってくれたんだろうな。

そんな子どもの素行の悪さも、
どっちかってと子どもに直接言うよか、母に文句言う方が多かったんだと思う。
それってば、かーちゃん大変やったやろな。
って、自分が母になった今はわかるな。

うち、しょっちゅう友達が出入りしてたし、
趣味の関係で、男友達の方がめっちゃ多かったけど、
なんかみんな、うちの親と友達みたいに喋ってたな。
アタシが留守でも、とーちゃんと散々喋って帰ってくヤツとか。


アタシ、3人兄弟・女の子一人の最初の子だから、
小さい頃は多分、父には一番大事にされて可愛がられたと思ってる。
運動会なんかはもちろんやけど、
親子遠足なんかにも、来てくれるような父だったから。
当時は、父親も参加する家庭なんてほとんどなかったのに。
多分それは、弟がまだ小さくて、
母一人では大変だったからもあったんだろうけど。

子どもの頃のアルバムが、すっごい充実してるのは最初の子の特権やね。

生まれたばかりの頃のアルバムに書かれた父の言葉。
「大きくなったらパパとデートしよう」
って。

最後に父と、普通に会話したのは、GWに病院にお見舞いに行った時。

でも、最後の思い出は、
3月に愛犬が亡くなった時、父と二人で動物霊園に連れて行った事。
霊園に行く前に、二人でお昼ご飯を食べに行った。
そんな機会がなければ、
父と二人きりで出掛けることも、食事する事もなかったはず。

入院していた父が退院するその日に、父と同じ病気で亡くなったあの子は、
父を待ってただけでなく、遠い昔の父の願いまで叶えてくれたんだな。


結婚してから、実家に行くのは年にたった数回だけで、
父と会うのは、片手で数えられる程だった。

入院中も、何やかんやでほとんど顔を見に行けなかった。
なのに、
会話もできなくなってから、週に何回も顔出すようになっても、
遅かったよね。

もっともっと、たくさん話しておけば良かった。
親孝行なんて、なにもできなかった。

苦しむばっかりだった最期の一ヶ月も、
本当にそれしか選択肢はなかったんだろうか、って、
充てのない後悔は、やっぱり残ってる。


だからね。
もし最後まで読んでくれた人がいたなら。

時は永遠には続かない。

って、当たり前だけど忘れがちな事、
ちょこっと思い出してもらえたら、良いかな。



あの人の娘に生まれて、本当に良かったって、思ってます。

不甲斐ない娘でごめんなさい。
でも、たくさん愛してくれてありがとう。


ちゃんと現実を見てるようで、やっぱり受け入れられてないけど。
まだまだ、思い出すと勝手に涙は出てくるけど。

でも。
何があっても、ちゃんとゴハンも食べられるし、寝られる人やから。
ちゃんと日常生活送ってます。
アタシは、大丈夫です。

だから、コメントは不要ですヨ。





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Last updated  2007.08.21 22:04:43
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