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・某Y氏との雑談。
某Y氏との雑談
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著作・管理・編集:NEROWIZ
この作品には、管理者『NEROWIZ』の著作権が発生しております。無断での使用、又は作者を偽っての公開を禁じる物とします。
なお、
規約
も読んでいただけると、大変幸いです。
このページは、私が夏のとある夜、行き着けの店のウェイターをしているY氏との雑談を、覚えているだけ書いたものです。
・・・なので、多少抜けているところはあるかもしれませんが・・・
では、どうぞ。
BGMはお好み、個人としてはフレンチポップスやT-SQUAREをお勧め致します。
・・・読みにくいのは少々勘弁下さい。
~ガラスの少年時代:巨人の星は良かった~
Y氏:「今日も終わったねぇ・・・」
―今日は時間もあるから、何か話でも。
Y氏:「え?んー・・・」
うなりながらY氏、店の冷蔵庫からビールを一缶取り出す。
―いいの?
Y氏:「いいのいいの、俺が自腹で買いだめしたやつだからね。」
―成程。
Y氏:「・・・で、どんな話が聞きたいのかな?」
―そうだなぁ・・・身の上話、とか。
Y氏:「俺自身はそうだな、結構客観的には破天荒な生き方してきたと思うよ。」
―ほぅ、破天荒。中学時代とかは?
Y氏:「あー、荒れてたねぇ・・・バツとして中三の夏中、校舎の外壁と塀のペンキ塗りを、悪友とやらされたことがあってね。」
―ななな、何をして?
Y氏:「んー・・・一つじゃないんだよな。例えば、教師にブチ切れて机投げつけて詰め寄って、『殺すぞオラァ!』って言ったりとかね。」
―さらっと怖いことを。
Y氏:「これはそうでも無い気がするなぁ・・・後はそうだな、砂場を爆破したりとか。」
―爆破!?
Y氏:「うん。砂場に大量のマグネシウム混ぜてみてね。友達と一緒になって、ホースで水掛けてさ。」
―・・・そりゃあ、とんでもなことを。
Y氏:「放課後でな。後ろを走ってた陸上部の奴らも唖然としてて、爆破の衝撃でブロック塀がガンガン倒れててね。校舎の窓もちょこっと割れてたりしたよ。」
―体の方は?
Y氏:「いや、平気だったよ。爆風って受けたことある?あれは凄いよ~」
―どんな風に?
Y氏:「髪がね、こう、ファサッ、ってなるんだ。」
―ふむ。
Y氏:「いやぁ、あの頃は本当におかしくて、面白かった。警察には4度くらいお世話になったしね。」
この後、Y氏のトンデモエピソードが続く。
中学時代はひたすらヤンチャなガキ(不良グループは別にいた)で、高校時代は軍隊並に厳しい高校だったとか。
高校の教師にタバコを押し付けられそうになったこともあるらしい。
~コーヒーと音楽と上司と~
Y氏:「で、俺は高校を卒業した訳なんだが、進学する気にもなれなくて・・・というかそんな学力も無くてね。音楽で生きていこうとしたんだ。」
―そういやギターをやっていたとかいう話もあったね。
Y氏:「うん。まぁ、音楽でプロを目指していたんだが、それだと収入がなかなか、ね。」
―まぁストリートとかでも売れている姿ってのは中々見ないからねぇ・・・
Y氏:「そりゃ、ね。だから、俺はとあるコーヒーショップでアルバイトをしてた。そのコーヒーショップってのがいい店でね。本当にお客さんのことを思って、コーヒーを入れていくんだ。この豆を淹れるときの温度は何度、どんな入れ方をして、どんな風に注ぐか。アイスならこの温度、ホットならこの温度・・・みたいにね。カップまでこだわってたんだよ。一つ何千円とするカップを、お客さんに出すんだ。」
―そりゃまぁ随分と凝ってるね。
Y氏:「それと同時に音楽もやっていたんだが、やっぱりプロへの道ってのは厳しくてね。途中に壁が何枚も何枚もあるんだ。目の前のデッカイ壁をやっと乗り越えたと思ったら、すぐに次の壁がある。そしてあるとき、俺はその壁の前で頭抱えてたんだな。」
―かなりキツかった、と。
Y氏:「ああ。で、そんな時、ちょうどその店が支店を出すことになったんだな。で、俺はこう言われた。『お前がここに正式に来てくれればなぁ・・・』ってね。その時俺は思ったんだ。『あぁ、俺にもう、音楽は無理なんだなぁ・・・』と。だからそこの店に正式に勤め始めた。」
―どんな役職に?
Y氏:「支店のチーフっていう役職だな。詳しくは説明しないけど、まぁ店長よりは下だ。その時俺はコーヒーをかなり極めててね。カプチーノでハートマークとか葉っぱのマークとかを書くっていうのはもはや朝飯前だったんだ。」
―・・・凄さがいまいちわからんが、凄いんだろうな。
Y氏:「多分な。んでもって、本店の店長と、支店の店長、それに俺がいた訳だ。俺はその本店の店長が大好きでね。この人になら付いていく!って思ってたんだ。ところが、その人が辞める、という話になった。支店を軌道に乗せたら、僕は辞めます、ってな。」
―いなくなっちまったのか。
Y氏:「ああ・・・いい人だったんだけどな。で、いなくなった後は支店の店長が本店の店長に、そして俺が支店の店長になった。」
―凄いじゃないか。
Y氏:「そうだろう、そうだろう?だが、今度の本店の店長とは、俺は仲が悪かったんだよ。それが悪い方向にいっちまってな。支店対本店みたいな形になっちまったんだ。」
―まぁ、よくある話な気がするけどな。
Y氏:「とにかくソイツが気に食わなかったから、俺は必死に頑張った。でまぁ、最初はなかなか売り上げが上がったりしてよかったんだけどな、そのうち関係が本当に険悪になってきた。それでオーナーもおかしいと思ったらしくてな・・・俺達二人を呼び出して、言ったんだ。『最近様子が変だ、どうしたんだ。』とな。もちろんそんなものは決まってる。支店と本店が対立しているっていう状況になってる訳だ。さらにオーナーは言った。『この関係を、君達は元に戻せるか?』要するに、大人になれるか、ってことだな。」
―ふむ・・・
私は内心迷っていた。
彼は実に大人びているが、若かりし頃の話を聞けば、相当な熱血漢であったことが伺える。
・・・はて。
―大人になれたのか?
だから、返答は質問で返した。
Y氏:「俺がそんなタマか?いや違うね。俺はなれない。そんなことは分かりきっていた・・・だからこう言った。『できませんし、俺はこの人とうまくやれるとは思いません。』するとオーナーは言うわけだ。『それでは、君は辞めるしかなくなってしまう。どうするんだ?』もちろん答えは決まってる。『なら辞めます。俺は明日にでも辞表を書いて出しますので。』即答だった。まぁそりゃそうだろう?次の日、俺はそのコーヒー屋・・・18から21までいたコーヒー屋をやめたんだ。」
はっきり言おう、私は心外だった。
聞けばその店は、彼が大好きだった店というではないか。
なら、無理にでも大人になって働き続ければよかったのではないか。
―大人には、なれなかったのか?大好きだったんだろ?
Y氏:「もちろん大好きだったさ。でも辞めた。それはな、やっぱり、無理に大人になって働いても、それは俺の大好きだった店じゃなくなっちまうからだ。それに、俺が俺じゃなくなっちまう。」
・・・ふむ。
なかなかに、彼は興味深い人間である。
ここまで自分を貫いた人間というものを生で見たのは、私は初めてかもしれない。
~大手と自分とコーヒーと~
―それで、どうしたんだ?職無しだろ?
Y氏:「ああ。それからは、俺の家を改造して、一階に母親と店を開いたんだ。」
―店を、ね。売り上げは?
Y氏:「三年目ぐらいまでは結構順調だったんだ。ただ、その後は厳しくてな。バブルがはじけたんだ。妹とかも手伝ってくれたんだが、どうも厳しい。そんな時に、友人・・・中学校時代の悪友の一人な、から、店舗を某大手コーヒー会社に貸さないか?という話があったんだ。店舗を拡大したい、ってな。直属のお店にしよう、って訳だ。」
―ほぅ。
Y氏:「で、その話を母親としていたら、ちょうどお得意の不動産会社の社長がな、今の店を半分にして、さらにリビングを削って、それでできた3つのスペースを、賃貸として貸し出さないか、っていうことを言ってくれたんだ。さらに、仮に空き部屋になっても、賃貸料はその会社が毎月出してくれるという。だから、その社長に紹介してもらった銀行にお金を借りて、賃貸として貸し出したんだ。それが26の時かな。」
―・・・また職無しだな。
Y氏:「聞いて驚け、今回は違う。その店舗貸し出しと同時に、俺は友人から誘われて、その某大手コーヒー会社の契約社員となったのだ。んでもって、俺は某所の店長となった。」
―いきなり店長か。
Y氏:「ああ、多分そうだったような・・・。で、だな。俺は店舗拡大を目的とする部署にいたわけだが、そこのトップが数字主義の人でな。数字を上げるためなら何でもしろ、という人だったんだ。だから俺は本当に何でもした。もちろん裏とかセコいことじゃない。俺は一番そういうのが嫌いだからな。」
正直疑問に思う。
何でもしろ、というのは暗に、裏とかセコいことをすることを意味しているのではなかろうか?
―では何を?
Y氏:「そりゃ決まってるだろ。アルバイトの人数を減らし、その分俺が働く。そもそも店長ってのは、一番働かなきゃいけないんだ。レジ打ってるだけの店長とか、シフト書いてるだけの店長なんか店長とは言えない。本当の店長ってのは、誰よりもコーヒーが旨くて、誰よりも働いて、誰よりもハートが無くちゃいけないんだ。だから俺はそれを目指した。元々あの店(彼が最初に働いていた店)で、コーヒーの淹れ方はもはや神懸ってたからな。もちろんながら評判は上がるし、黒字は出る。まぁ、俺の休暇は0だったけどな。」
・・・自分ではできないことをさらりと言ってのける彼に感服した。
成程人員を割き、自分が働けばそれなりの効果は出る。当たり前の理屈だ。
しかし、本当に実行できる人間がどれだけいるのだろう?
休暇が0、というのは決して与えられなかったわけではなく、自ら一日も休まず、働いていたのだ。
Y氏:「で、だ。そのトップはそれなりにヤリ手だったからな。二年ぐらいで副社長になっちまった。そのあとに来た奴というのが下の部署から来た奴でな。そいつの方針は前の奴とは180°違ってた。前の奴は数字主義だったから遊びは一切無しだったが、今度のは逆に、俺が店長をしている店を、全国の店舗のモデルショップにすることになった訳だ。だから、俺がハートやら葉っぱやらを書いたカプチーノが、俺の写真付きで載った雑誌を発行したり、全国から俺の店に研修に来させたりした。俺はだからまぁ、少しは楽になったよ。これまで五人だったランチタイムが、八人とかになった訳だからな。それでも、俺の休憩時間はほとんど無かった・・・いや、作らなかった。誰よりも働いていなくちゃいけないのが店長だからな。よく店長会議の後の飲み会で聞かれたもんだ。『どうしていつも黒字なんだ』とな。そりゃ、『誰よりも俺が働いているからです』としか答えようが無いだろ?その会社の契約じゃあ、一日八時間労働ってことになってる。大半の奴らは、それに律儀に従って八時間労働なんだろうが、俺は違った。十四時間。一日十四時間働き続けた。朝は七時より早く店に着き、鍵を開け、オープンの準備をする。んでもって、閉店後は会計まとめて鍵かけて、家に帰ったら十一時とかだ。んでもって家に帰ったらバタンキュー。朝は早く起きて・・・っていう生活の繰り返し。だから、誰よりも俺が働いているとしか言えないわけだ。」
―そこまでできる、自分の心構えというか・・・自分が大切にしていることとは?
Y氏:「物事をプラス、プラスに考えていくことかな。」
―プラス、プラスに。
Y氏:「そう。例えば、なんで俺はこんなにクソ忙しいんだろう、と思うだろ?クソ忙しいのはマイナスだ、そりゃ間違いない。でもな、それを結果に繋げることでプラスにするんだよ。忙しいからシフトを開けて休むんじゃない。マイナスから逃げるんじゃなくて、それに縦棒を一本足して、黒字というプラスの結果に繋げる。それが大事かな。」
―ほぅ、成程。でもどうしても出来ないときとかって、無い?
Y氏:「そりゃあるさ。でもな、うーん・・・例えばさ、一回できなかったことがあるとするだろ?そのときはその時で、できなくてもいいんだよ。ただ、二回目に同じ状況になったときに、それを思い出して、改善できるか・・・自分を変えられるか、ってことだな。『あー、こんな時もあったな』みたいな感じで思い出して、じゃあどうしたらできるか、それを見つける。思い出す。チャンスなんてのは、生きてる限り十回でも百回でもある。例え百回目に気付けなかったとしても、百一回めに気付けばいい。変わればいい。回数はあんまり問題じゃない。要は変われるかどうかなんだ。」
―成程、変わる、ね。
Y氏:「例えば、お前が昔観た何かの映画・・・何でもいい、ポケモンでも、仮面ライダーでも・・・をもう一回観たとするだろ?すると、お前は、昔はどう思ってたよ?」
―う~ん、ミュウツー(キャラクター名)かっけぇ・・・とかかなぁ?
Y氏:「まぁそんなもんだよな?で、今もう一回観たとしたら?」
―・・・微妙だな。反動で吹っ飛ぶだろ、とか、何でそこで石化するんだよおい、つーかどうしてそこで蘇れる!みたいな感じで、つまんないツッコミしかできないだろうなぁ・・・まぁつまんないと感じるだろ。
Y氏:「つまんない・・・で、どう思うよ?」
―どう・・・ってそりゃ、どうしてこんなもん観たのかなぁとかかね。
Y氏:「そう、それだ。どうしてこんなもの観ちまったんだろうってのはマイナスだよな?それを、だな。もう一回それを観ることで、昔とは変わった今の自分に気付けた、っていうプラスに変えるわけだ。分かるか?」
―あぁ成程、理解理解。そういうことを言いたかったのか。要するに、その行為は無駄なことじゃなくて、変わった自分を確認するためのプラスのことだ、と。
Y氏:「そゆこと。んでまぁ、その店長時代の話に戻るが、俺がその店のアルバイトには強制したことがあった。それは、常に心があるべし、ってことだ。別に金髪でもいい。ロンゲでも、ピアスでもいい。『イラッシャイマセ、アリガトウゴザイマス』みたいな誰でもできるような受け答えじゃだめだ。・・・例えばレジで、いつものホットのお客さんがアイスを頼んだとする。そのときに、『ハイ、アイスコーヒーデスネ』と決められた受け答えをするんじゃなくて、『あ、今日はアイスなんですか、暑いですからね~!』みたいな、そういうことを言う。それが、心があるってことだ。こっちが相手を覚えなければ、向こうだってこっちを覚えてくれない。でも、逆に双方が覚えることができれば、コミュニケーションが成立する。誰にでも出来るような機械みたいな受け答えじゃない。お前にしかできないことをする。そうすれば、自然と仕事が楽しくなる・・・そういうことを教えたんだ。」
―そりゃまた。素晴らしい店だったんだな。
Y氏:「ああ、最高だった。仕事はキツいけど楽しいし、アルバイトの子達も、みんないい奴だった。特にAさんなんてのはな――」
この後、Y氏によるアルバイト達の思い出話。
このとき彼は既に、ビールを十本は消費している。
・・・恐るべき底なしさというか。
親父とは大違いである。
Y氏:「そしてまぁ、前に言った戦略ってのは上手くいってだな。店の評判は上々。アルバイトやら研修やらサービスやらで、俺の店自体は赤字だったが、会社全体の利益としては数字主義の奴より黒字を出したんだ。だから、そいつもちょっとしたら副社長になっちまった。」
―うぅむ、なかなか人選に恵まれているというか、順調だな。
Y氏:「だろう?俺もそう思った。まさに順風満帆、このまま俺はこの会社で働き続けるだろう、ってな。だが違った。俺は、次に来た奴に全てを壊されたんだ。Nって言うんだけどな、そいつは本当にヒドい奴だった。」
―ヒドい、とは。
Y氏:「まず、だ。奴は試食会を開いた。全部の店の味を知っておきたい、とな。俺はスパゲティやらタルトやら、もちろんコーヒーも、腕によりをかけ作った。俺の店だけダンチだったな。だが、それらを食ったソイツの反応はなんだったと思う?」
―・・・うーん、なんだろうな、ノーコメントとか?
Y氏:「もっとヒドいさ。奴は口の周りにナポリタン付けてこう言ったんだ。『いいんじゃない?でも、量が足りないねぇ。』とな。信じられるか!?量が足りないね、だぜ?試食会に腹空かせて来てるんじゃねぇよ、てめぇは飯代浮かす為に試食会を開いたのか!?・・・と、俺は本当にキレかけたな。いや、だって、な?分かるだろ?」
―あぁ。痛いほどにな。
なかなかのムカつく野郎であったことは非常によく分かった。
さらにNとやらの話は続く。
Y氏:「さらに、だ。奴は夕方、客足が薄くなる時間帯に人を集めるために、OL層を捕まえようとした訳だ。それで、メニューにデザートとかの甘いものを付け足すことになった。だが、店のコックとかは前の代で辞めてしまっている。とりあえず俺も作れる、というので、次のコックが来るまで俺が作る、ってことになったんだな。キツかったが、まぁそれなりに集客はできたしな、良かったさ。」
・・・なんとなく話のオチが読めた気がする。
Y氏:「これならいけるかもな、とは思うものの、いくら待ってもコックは来ない。理由を奴に問いただしてみると、奴はこう抜かしやがった。『コックは金がかかるからねぇ・・・できてるんでしょ?ならそれでやってよ。』とな。いーや冗談じゃねぇ、マジだ。親指と人差し指で輪を作りながら言いやがった。この時も俺は本気でキレかけたが、なんとか出来てるし、バイトの子も頑張ってくれている。俺はなんとか続けた訳だが・・・六年目。」
―ついに、か?
Y氏:「ああ、ついにキレた。奴はいきなり電話でこう言ってきやがったんだ。『パンも焼きたいねー、自家製のパン作ってよ。』ってな。流石にキレたね。パンだぜパン!とりあえずぶちキレた俺は、奴を会社に呼び出して怒鳴りつけた。敬語なんて当たり前のように無視だ。ふざけんな、後付け後付けでできるわけねぇだろ、ってな。すると奴はこういいやがった。『これまで後付けでできてきた』、ってな。しかし考えてみろ。これまで出来てきたのは誰の技術だ?ノウハウだ?会社のマニュアルか?違う!俺の努力だ、俺の技術だ!もうやってられないと思ったね。だから俺は言ってやった。『明日にでも辞表を書きます。有給をどうするかは会社で決めてください。』と。俺の有給は二,三ヶ月残ってた。そりゃそうだ、何にも使ってないんだからな。それを金で返すか時間で返すかは向こうの自由だ。それに、俺はサービス残業の方は不問に付した。俺が勝手に六時間余分に働いてただけだからな。契約には八時間ってあるんだから、そこは何にも言わなかった。結局俺は、溜まってた有給の後に辞めるってことになった。」
―スタッフとかアルバイトはなんて?
Y氏:「そうした方がいい、あなたは働きすぎだ、ってな。みんな口を揃えてそう言った。その後のその店は知らないけどな。」
―今、その店に行ったら?やっぱり失望とかする?
Y氏:「失望なんかしない。マズいコーヒーでもいい。いいか?その店がまだある、ってことは、俺がいなかったら潰れちまうような店じゃなかった、ってことなんだよ。要するに、コーヒーが俺の時よりダメダメでも、その店が存在している、ってことが重要なんだ。お前がもし、とあるコーヒー屋に行ったとき、コーヒーが不味くても、それを愚痴ったりはしちゃいけない。その店がある、ってことは、その店の奴らが頑張ってるから店が存在しているんだ。それだけで凄いことだろ?」
―確かに。じゃあ、自分が気をつけていることとか、ってある?
Y氏:「愚痴るような過去は持たない、ってことかな。こうやって思い出として語れる過去ってのが一番いい。ただ、あんまり過去に執着してもダメだ。後は・・・そうだな、溜息をついている奴の側には近寄らないってことかな。」
―そりゃまたどうして。
Y氏:「だいたい、『どうしたの?』とか声を掛けてもらいたい奴は、人前で溜息とかをつくもんなんだ。だから俺はあえてそういう奴には近寄らない。俺はそういう奴が嫌いだからな。同時に、そういう事をしないように心がける、ってことだ。嫌いなタイプの奴を見る、それはマイナスだ。でも、それを、こうしちゃいけないんだ、っていう悪い見本を教えてくれている。そう思うことでプラスになるだろ?」
―こういのがダメ人間なんだ、みたいな?
Y氏:「ダメ人間ってのは違う。そうやって人を、ダメ人間っていう100で見ちゃいけない。あくまで、こういうダメな部分がある、っていうことだな。100っていう全体で見るんじゃなくて、部分で見るんだ。」
―勉強になるなうんうん。要するに、プラスに変えていく、ってこと?
Y氏:「じゃないとやっていけないだろ?マイナスをマイナスにとってたら、そのうち潰れちまう。プラスに感じることが大事なんだよ。」
―感動。大学で講義してもいいんじゃないか?
Y氏:「ええっ、大袈裟な。俺はそんな立派な人間じゃないよ。」
その後、雑談は三十分ほど続いた。
私が切に思ったのは、
「実力に裏づけされた、自己に対する自信を持つ人物というのは、非常に輝いて見える」
ということだ。
・・・これを読んで、思うことはあっただろうか。
少しでも糧になれば、私も幸いであるし、Y氏も喜ぶであろう。
・・・と。
こんな感じですね。
ちなみに、彼が消費したビールは計十五本。
雑談終了後彼は、しっかりとした足取りで駅へと歩いてきました。
なんという酒の強さ・・・恐ろしや。
~登場人物紹介~
私:ご存知(?)当サイトの管理者、NEROWIZ。
某Y氏:冒頭での説明のように、私の行きつけの店のウェイター。店でかかっている曲は全て彼の趣味だという。
得意なものはコーヒー淹れとギターとボコボコにされること。
この前も、電車内で少女を助けるため、外国人4人にボコボコにされたんだとか。
根っからの熱血漢である。
ちなみに三十路越え。
腹の出具合が気になりだす年頃だ、とは彼の談。
~ご意見、ご感想はこちらにどうぞ~
できれば、私のサイトにて公開されているもう一つの作品、Parallel World ~the liars~も是非にどうぞ。
未来と魔術と剣と学園を織り交ぜたファンタジーものになっております。
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