午後一時の死闘



無断転記禁止です。

『午後1時の死闘』始まります。




俺は「宮家 省吾」大学生。

今日は金曜日。

俺は毎週金曜午後1時に行われる戦いの場所に向かう。

現在、午前12時。俺は戦いの服装に着替える。

1時間後、ここで恐ろしい戦いが起のかと考えるとぞっとする思いだ。

ここは戦いの場所・・・

その名も!

『スーパー・クスヨキ』

ここで俺はバイトをしている。

お肉・野菜・お惣菜から調味料まで何でもそろってると言ってもいい『主婦の味方』がモットーのスーパーだ。

ちなみに時給は600円。正直、不満だ。

そんなことを考えながら仕事をしているとすでに争いの時間が迫っていた。

そして、今週も『やつ』はやってきた。午後1時になるこの時間を狙っていつも『やつ』は毎週やって来るのだ。

多数の敵をなぎ倒し目的を達成しようとするもちろんルールなんて守らない、過去に俺もやつにやられてる。

3つコブアフロが特徴のやつはこう呼ばれている。

『コードネーム:SAZAE』通称サザエだ

やつの存在に少々気をつけつつ、俺は野菜コーナーでマイクを持って立つ。

時は来た。午後1時だ。

俺は腹の底から叫ぶ。

「ただいまからタイムサービスとして野菜コーナーでモヤシが一袋1円です!お一人様1袋限り!」

こうして戦いの火蓋は切って落とされた。

群がる猛者達、モヤシは次々とカゴの中に入れられていく

もちろんサザエも来る1袋限りなのにもうすでに5袋もカゴに入れている。

ここで突破されてしまったら最後まで行かれると思った俺はサザエを阻止すべくサザエの元に向かう。

「ちょっと、お客さん!お一人様一つまでですよ!」

サザエがものすごい形相で叫ぶ。

「ちょっとくらい、サービスしなさいよ!お客様は神様よ!」

その形相には流石の俺もひるんでしまった。

そのとき、また叫びが聞こえた。声は精肉コーナーから聞こえた。

「ただいまからタイムサービス!精肉コーナーで豚肩肉が100g20円です!お一人様1パックでお願いします」

その声に反応した他の客は一目散に精肉コーナーに向かった。

「こんなことをしている暇じゃないわ!早く行かないと!」

もちろんサザエもカートを引っ張って向かった。モヤシ5袋をカゴに入れて・・・

俺は精肉コーナーで働く仲間へ無線を使い直ちに報告を入れた。

「サザエがそっちへ向かった、気をつけろ・・・」

「えっ?サザエ?何のことです。宮家先輩」

くそ!そういえば今日の精肉コーナーは新人の轟だったか・・・

あいつには荷が重過ぎるな、そう思って俺は次の争いの準備をした。

サザエは走っていた。見るからに70キロを超えるだろう肉体にしては早かった。

そして、舞台は精肉コーナーに移る。

俺は『轟 大輔』高校生。

今日からこのスーパーでバイトとして働くことになった。

正直、時給600円は不満だが学校から遠い&家から近いので場所的には最高だ。

今までも俺はスーパーでバイトをしてきたが、幾度となく学校の先生に見つかり強制的に辞めさせられてたのだ。

だが、ここなら見つかりっこない。なんせ学校からは10キロは離れてるからな。

本来なら俺は品出しやレジ担当のはずだったのだが伊藤先輩が風邪を引いたとのことで急遽、マイクを持って叫ぶことになったのだ。

なかなか俺の叫びは成功したようだ。

おばちゃん達が群がってくる。

まぁ、他のスーパーでも経験済みだからな。このくらい楽勝だ。

しっかし、『サザエ』っていったい、なんなんだ・・・

「どきなさい!肉がなくなるじゃないの!」

3つコブアフロのおばさんが猛スピードでカートを引っ張りながら、やってきた。

おそらくだが、あのおばさんが『サザエ』なのだろう。

げぇ!なんだこのおばさん!群がってる客を無視して豚肩肉が並ぶコーナーの前に『カート』でバリーケードしやがった!

さらにあろう事か『サザエ』は1様1パック限りの肉を10パックほどカートに投げ入れた。

今までに見たことのない強敵だな・・・

宮家先輩が気をつけろって言った理由も分かった気がした。

じゃ、一丁、止めに入りますか。

俺はそう思って。『サザエ』の方へ向かった

『ガシ!』

誰かに肩をつかまれた。遠のく『サザエ』

振り返るとそこには・・・

「あら、珍しいところで会うわね、轟君」

学校の生徒指導の一人である『野上 小枝子』がいた。

先生はすでに肉1パックを確保していた。白菜などの野菜も入ってる。

「今夜は豚スキなのよね」

「はぁ・・・」

俺は心ない返事をする。もう『サザエ』の姿はない

「じゃあ、私は愛しのダーリンが家でお腹を空かしてるから行くわね」

ああ、そういえばこの先生、結婚したばっかりだっけ。

「そうですか、お幸せに」

「ありがとう。じゃあね」

先生はレジに向かった。

っと思ったら振り返ってこう言った。

「分かってると思うけど、うちの学校はバイト禁止よ、轟君」

後日、俺がバイトを強制的にクビになったのは言うまでもない話だ。

俺は落ち込みながらも、次の争いの準備に備えた。

ここは事務室。店内全域に伝えることのできるマイクを前に私は叫ぶ準備をしていた。

私は『玖珠四期 正』昔から人に珍しい苗字とよく言われる。

スーパー・クスヨキの店長でもある。

今から行われる死闘は半端じゃないだろう。

それも全てあの客に対してだ。

『コードネーム:SAZAE』通称サザエ!

私は叫ぶ準備をした。

そして、今日最後のタイムサービスを伝える店長の声が店内に響く。

「本日最後のタイムサービスのお知らせです!」

「まず、野菜コーナーでキャベツが1個10円!お一人様1個限り!」

「次に、精肉コーナーで豚バラ肉が100g30円お一人様1パック限りです!」

これは店長がサザエに出した挑戦状的物でもある。

過去のデーターによるとサザエが食いつくのは『肉』と『野菜』さぁ、どっちを選ぶ!サザエ!

店長はこの日のためにつけた新しい監視カメラをじっと見ていた。

精肉コーナーと野菜コーナーにつけた監視カメラだ。

その名も・・・

『サザエモニター!』

店長の予測どおりサザエは一瞬迷っていた。

そして、1秒ほど迷った後サザエは野菜コーナーに走った。

早い。そしてキャベツを取った。

「ふふ・・・さぁ、どうするサザエ2個目を取った瞬間に宮家君が止めに入るぞ!そうなればもう肉には間に合うまい!」

『サザエモニター』に食らいつくように店長は一人で喋っていた。

サザエはキャベツを1個であきらめたようだ。

サザエは猛スピードで精肉コーナーに走る。

その姿を見て今日の野菜コーナーでの争いは終わった気がした。

俺は無線で精肉コーナーの轟に言った。

「あとはがんばれよ、轟・・・」

「了解しました。宮家先輩」

そして、キャベツは完売した。

ここは精肉コーナー。宮家先輩からの報告によるともうすぐサザエが来るそうだ。

「もう、どうせクビになるんだ、多少の手加減もしねぇぜ!」

そして、サザエがやってきた。

「バカな!間に合っただと!」

『サザエモニター』を前に店長は驚いていた。

「あの体型でなんて速度をしているんだ・・・」

そして、サザエは肉をとった。1パックだけ・・・

「えっ!」

轟は驚きを隠せなかった。

サザエは取ろうと思えば後2パックも多く取れたのだ。

「なんだと?」

これには『サザエモニター』を見ていた店長もびっくりしていた。

「なるほど、最後の最後でルールを守り、時間を掛けさせない様にして、そして『肉バラ』も『キャベツ』も獲得するとは・・・」

「敵ながらに天晴れだよサザエ」

主婦の味方がモットーのスーパーだがサザエは敵なようだ。

そう思った私の名前は『園維 鱈子』中学生。そしてサザエの娘だ。

正直、時給600円には不満だ。

ああ、そうだ。この店辞めよう。

「店長」

「なんだい?園維君」

『サザエモニター』から目を離して振り向いた店長に言う。

「私、今月限りでこの店辞めようと思います」

「えっ?」

そして、舞台はスーパーの外へ。

今日もレジ袋いっぱいにしてサザエは言う。

「いや~、やっぱりあそこのスーパーはいいわね~」

「安いし、店長のサービスは良いし」

「ただ今日はちょっといきなりのタイムサービスでお金を余分に使っちゃったわね」

「肉1個にしておいてよかったわ。2個だったらお金足りなかったもの!」

「また、来週も来ようっと」

そんなサザエ、本名『園維 サザエ』は影ながらに起きてる争いの事にまったく気がついてない。


                       終


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