月と猫




恋。

別にこの町にとどまろうと思った理由なんてあらへんかった。
ここは、人を簡単に受け入れてくれて、そして簡単にさよならしてくれる町。せやから俺が住むんにちょうどええと思った。
-- そんだけのはずやったんや。
俺は、とどまるなんてこと絶対にイヤやったから。

和尚が中学校の手続きをしとってくれていたから、俺は仕方なしに学校に入った。
笑顔が俺の防壁だったから、完璧にだませたし、それでええとも思とった。

アイツ-水野竜也に出会うまでは。

本当に最初の印象は、『ボンボンやな~』くらいやって、いつもの俺の通過点になるくらいの存在やった。
そしたらいつのまにか、なつかれてしもて何でか分からんけどそんなアイツを見捨てておくこともできへんくなって、
気付いたら一緒におることがアタリマエのようになっとった。

サッカーなんて物に執着する気もさらさらなくて、
『コイツが飽きるまで付きあっとたるか。』なんて保護者のような気分やった。
それやのに、アイツからサッカーを取り上げようとしたヤツラがほんまにムカツいて。
何でか考える前に手が出とった。
それで退部したら、もう水野とは終わりのはずやったから、
いややな~とかおもってる自分に気が付いて何や執着できるもん見つけたわ、
でも失って気付くなんて遅すぎやで自分。そう思って自嘲気味に笑った。

その執着心はもうやめた自分にはどうにもできひんかったから、心の奥にしまいこんどった。
そして、風祭とかゆうやつが来てそれまでのなぁなぁのサッカー部は変わってもうた。
水野もよく笑うようになって、また抑えこんどった執着心がでてき始めて、ほんまに困った。
ただの執着心ごときで心が痛いなんて初めてで、少し怖かった。
そしてやっと気付いた。コレは執着心なんかやなくて俺が一番いらんかったもん、恋なんやと…。
そん時、困るとか逃げようとかそんな感情は沸かなくて欲しいと思った。ただ純粋に。

こんなに俺を苦しめてる存在を。

こんなに愛してやまない存在を。

「思い立ったら、すぐ実行」ってことで、風祭には悪いと思うたけど少し利用させてもらってもう一回サッカー部に戻った。
タツボンは変な顔して渋々という感じで入部届けを受け取って、そして
「真面目にやれよシゲ、お前は、すぐサボルから。」
と少し笑いながら言ってくれて、柄にもなく嬉しかった。

それからは、大変やった。少し風祭とかに笑いかけてたら嫉妬心なんてありえへんものが生まれたりして、
逆に自分に笑いかけてくれたら愛しいなんて思ったりして…
どんだけ切なくて、苦しくても…やっぱり愛しいなんて思うてしまうこれが『恋』なら……

「ほんまやっかいなやっちゃの~」そう思わず口に出した。
それを聞いていた水野が
「は?」
と、こっちを見てきた。
「べっつに~♪何でもあらへん~♪」
そうごまかして、笑ったら
「何だよ、変なやつ。」
と、呆れたように…でも優しく笑ってた。

そんな顔されたらもうリタイアする気なんて起こるわけないんやからなっ!!
そう心の中で叫んで久しぶりに一緒に帰路を歩いて、帰った。




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