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隠微な世界を彷徨うあの人と芯のぶれないあの人とわたしの中には その両方が棲んでいるだから虚ろなまなざしで夢の残像を眺めているあの人と現実を生きることの大切さを真っ直ぐに見据えているあの人とどちらの想いも理解できるけれどわたしは心を見失ってしまったみたい望みを叶えたいと願うからだから人は欲望を感じたり祈りを捧げたりするけれど望めるものなど残されていないと悟ったとき心は欲望を手放さざるを得なくなり祈ることも叶わなくなりやがて何を願えばいいのかそれすらも分からなくなるのだと知った心が鍵のかかったパンドラの箱だということは知っていたその鍵が見つかればその箱が開けば自分を生きられるということも箱の中身も分かっているつもりだったけれど もしかしたらそれは思い違いだったのかもしれない本当は何ひとつ分かってなどいなかったのかもしれないいずれにせよたぶんもう手遅れだからもう終わりそんな気がするそれでも独り歩き続けるしかないわたしはいったいどこへ向かっているのだろうどこへ行けば どこに居ればいいのかわからないまま願いすらわからないままでもちろん わたしは知っている希望とは未来を信じて待つことをいうのではなく誰かに与えてもらえるものでもないということをそれは 人が心を守るために必要不可欠な内在する力であり真摯に現実と向き合う その姿勢の中にこそ育まれるものだということをそして希望へと姿を変えるかもしれない幸せのカケラたちは実は ありふれた日常に散りばめられているのだということもだからこそ どんなに明日が見えないときでも 歩き続けなくてはいけないのだということも知っているのだ ちゃんとわたしはオトナだからけれど心の声は聴こえない眩しさも痛みも驚きも寂しさも優しさも突如訪れた人生の転機さえもが音もなく 静かな孤独の淵へと吸い込まれるように消えてゆく幸せのカケラを拾い集めてみてもその光や温もりは手のひらにありながら どこかよそよそしく そして遠いそれはまるで誰かの宝物を借りているかのように自分を愛せない癒しを得られる肌もないどこで眠ればいいのかわからない笑みを纏って生きることにもあてどもなく彷徨うことにも少し 疲れてしまったもしかしたら どこか見知らぬ世界へ弾き出されてしまったのかもしれないあるいは自ら迷い込んでしまったのかもしれないなんだかすごく遠くまで来てしまったような気がするそれでも逃げず 隠れず すべてをこの身で受け止めて拒まず 抗わずすべてをこの身に受け入れてこのまま黙って歩き続ければいつの日か巡りめぐって在るべき場所に辿り着くのだろうか世界の片隅で空を見上げる夜風に星が流れてゆく
2011.05.14
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