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April 7, 2022
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カテゴリ: REALIZE
翌朝、シルベスタが王の執務室を訪ねると、ソフィアと鉢合わせとなった。麗しの王妃の手には2通の手紙がある。

「ソフィア王妃様、おはようございます。本日もご機嫌麗しく」
「まぁ、シルベスタ。ごきげんよう。陛下に御用?」
「ええ、少しご相談したいことがありまして。もしかして、王妃様も、ですか?」

 薄いとび色の瞳がほんの一瞬空をさまよって、そしていつもの意志の強い瞳になった。

「ええ、そうよ。もしかして、ちょうどよかったのかもしれないわね」

 40代にはとても見えない若々しい笑顔で言うと、すぐさま執務室のドアをノックした。扉が開かれると、中ではすでにクランツ首相が打ち合わせを行っていた。

「ソフィア、ちょうどよかった。ん?お前も来たのか」
「ん、ちょっと気になることがあってね。先に王妃様のご用件をどうぞ」



「1通はルクセン伯爵、もう1通はライオネル氏に宛てたものです。春の宴には、招待しなければならない二人ですが、警戒が必要な人物でもあります」
「ルクセン伯爵は先日のパーティーでも実行犯のジーノに罪を擦り付けて逃げ切りましたからね」

 クランツ首相は悔し気に呟いた。それを引き継いで、王妃が続ける。

「このライオネル氏は転移技術の科学者ですが、彼というより、その娘がどうも曲者のようで。ウェリントン公爵夫人からも気を付けた方がいいと忠告をもらっていますわ」
「曲者と言えば、ルクセン伯爵令嬢もどうも様子がおかしいそうだ。先日うちに引き取ったルクセン伯爵家の元執事から聞いたんだが、何かに立腹して馬車から彼を突き落としたというんだ。リカルドが見つけて助けたときは、ろっ骨が2本折れていた。腕の骨にもひびが入っていたしな。本人はボロボロになっていて気づいていなかったみたいだが」

 黙って聞いていたガウェインがうなる。

「なんだ、最近の娘たちはそんなに気が強いのか」
「はぁ? どうしてそんなくだらない発想になるのです?!何かの企みではないかとは考えないのですか?憶測なら良いのですが、王族に近い令嬢たちがこんな気性の激しい者ばかりでは困ります」
「そ、そう言われてもなぁ」

 そばで聞いていたシルベスタがこらえきれずに笑い出す。

「何がおかしいのです!」


 クランツも下を向いているが肩が微妙に震えている。

「笑っている場合ではないかもしれないわよ。この娘たち、なぜか共通点が多いのです。二人とも母親とは縁が薄く、乳母に育てられているそうです。」
「いやぁ、しかし、ルクセン伯爵にはご夫人がいらっしゃるでしょう」

 クランツ首相の言葉にソフィアは首を横に振った。

「ルクセン伯爵令嬢は夫人の子どもではないの。伯爵家に引き取るまでは乳母に育てられていたそうよ」

「それだ!」

 ガウェインの一言にシルベスタが飛びついた。そして、前夜にハワードから聞いた話を伝えると、ガウェインは考え込み静かに呟いた。

「もしや、遺伝の種か…」
「おそらく。アイスフォレスト家の古書にあったよね。大地に根を張る大樹のように、何日もかけてじわじわと脳内に浸透させ、まるで最初からデビリアーノ族だったかのような考え方に染めてしまう術だ」
「確かめることはできないのですか?」

 クランツの問いにガウェインは首を横に振った。母国のあの災害の中、王族の蔵書のほとんども失われていた。

「アランとリオン、それにそれぞれの騎士団長をここに」

 ガウェインの命に近衛兵が動く。ここからは王子たちを交えての作戦会議だ。


 午後になって、王宮の一室に規則正しいリズムが刻まれている。ハワードがそっと覗くと、部屋というには広すぎる場所に、レモンイエローのふんわりしたドレスに身を包んだヒカルがダンスのレッスンを受けていた。
 ハワードが名乗ると、講師はお待ちしておりましたと丁重に挨拶して、さっそく何パターンかのステップについて説明すると、ヒカルに声を掛けた。

「王女様、お待たせしました。それでは本日からハワード様にお相手をお願いします。宴では、実際にハワード様ともダンスされるでしょうから、今から慣れておかれるのが良いですよ。では、音楽に合わせてやってみましょう」

 向かい合ってそっと手を差し伸べられると、ヒカルはちょっと恥ずかし気にその手に自分の手を預ける。音楽が始まり習いたてのステップを思い出す。

「王女様は今までダンスを習ったりしていたのですか? とてもお上手です」
「習ってはいなかったですよ。友達が習っていたダンスを教えてもらったことはあるけど、もっと今風なダンスだったし。ほかは学校で習ったフォークダンスぐらいです。あっ!ごめんなさい!」
「大丈夫です。ダンスは慣れですから、本番まで私の足なら、何度でも踏んでもらっていいですよ」

目の前の金髪の麗人に微笑まれ、ヒカルはなんとも落ち着かない気分だ。タンタンタン、講師が手をたたく音がだんだん大きくなってくる。

「ほら、王女様。リズムに乗って。背筋が曲がってますよ。」
「うう、背中が痛いよぉ…」

 講師に聞こえない程度の声で、ヒカルが悲鳴を上げる。ハワードはクスクス笑いながらも優雅にヒカルをフォローしながら踊った。

「ハワード殿は筋がいいですね。動きに隙がなく優雅です。さぁ、王女様も頑張りましょう。ああ、左手が下がっていますよ」

 ダンスの講習をなんとか終えると、はぁ~と大きなため息をついて二人を笑わせるヒカルだった。

「お疲れ様でした。王女様、初めて来られた時よりずいぶん上達していますよ。それに、まだ背丈も伸びるでしょう。そうすれば、より踊り易くなるはずです」
「では、王女様。お部屋までお送りしましょう」

 講師に見送られてハワードがドアを開けると、慌てた様子の侍女たちが恥ずかしそうに笑いながら去っていった。あとにはあきれ顔のリッキーが残されていた。

「どうかしたのですか?」
「ああ、さっきの連中はハワードさんを一目見ようとやってきたんだ。元々シルベスタ様のファンだったはずなのに、最近はハワードさんに鞍替えしたみたいだ。まったく…。俺なんか、邪魔だって言われたし」

 リッキーがふてくされて言うと、「仕方ないよ」とヒカルも苦笑していた。

「でも、リッキーには素敵なお嬢様がいるでしょ?」
「えっ、あ、うん」

 軽く茶化すつもりだったが、否定しないどころかわずかに頬を赤らめて照れた様子のリッキーにヒカルとハワードはピンときたようだ。

「ねぇ、ハワードさん。また4人でお茶会しなくちゃいけない気がしてきたけど、どうかなぁ」
「ああ、そうですね。私はこの歳までドキドキするような恋をしたことがないので、どんな感じなのかぜひご享受願いたいものです」

 そう言えば、とハワードは思い立ってヒカルに耳打ちしてきた。

「先日のお茶会の帰り、ジーク殿が二人を呼び止めていたのですが、なにかあったのでしょうか?」

 さぁ、と答えつつ、ヒカルには心当たりがある。パーティーの控室での出来事はすでにジークの耳に入っていると聞いている。何事もなければいいのだけれど。


つづく





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最終更新日  April 7, 2022 08:16:56 PM
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