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April 20, 2022
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カテゴリ: REALIZE
第7章 乗り越えるべき課題

 アイスフォレスト王国では、ソフィア指導の下、春の宴の準備が刻々と進められていた。街中もいよいよお祭りムードだ。アイスフォレスト王国では、王族主催の春の宴に合わせて、一般庶民も街を上げてお祭りをする。
 そんな賑わいの中、王の執務室にはガウェイン、ソフィアをはじめとした7人がそれぞれの成果を共有していた。

「ルクセン伯爵令嬢は、あの帰還パーティー以来姿を見せていないようです。噂では、暴走して馬車ごと湖に落ちたとも言われていますが、遺体はあがっていないそうです」

 リオンは気まずい思いを隠そうともせずそっぽを向いた。

「王子、それはあなたの責任ではないでしょう。レイナ嬢にあれだけの失礼を働いたのですし、誰かが馬車に罠を仕掛けたわけでもない」

 きっぱりと言い放つウィリアムだが、どうにも後味の悪い結果だ。ソフィアはウェリントン公爵夫人に依頼してライオネル子爵令嬢について調べてもらったという。ライオネル家の令嬢は、相変わらず思い込んだら突っ走る性格のままだそうだが、最近小さいころから世話をしていた乳母が自殺して、思うところがあったのか、少しはおとなしくなってきたとのことだった。

「それにしても、アランはどうしているのかしら」
「リカルドからは、何度か中間報告が入っています。異世界日本のご自宅には、王太子殿下が到着されたと思われる痕跡がいくつかあったと。しかし、先日は、殿下が殺人の罪に問われているうえ、どうやら怪我をされたらしいと報告がありました。ヒカル王女様が大変ショックを受けられていて、翌日には収容されいてる病院に向かうとのことでした」



「いい加減にしなさいよ!婦女暴行の次は殺人なの?そんなわけないでしょう。女の子に追い掛け回されて半泣きになっていた子が人を殺めたりするものですか!」
「しかしだなぁ…」

 ガウェインが宥めにかかろうとしたとき、急にジークの水晶玉が光り出した。

「団長!大変です。ハワードさんが大けがをしてしまって、すぐにヒカル王女と一緒にそちらに転移させてシルベスタ様の治癒魔術を依頼しろと王太子殿下のご命令です!」
「分かった!すぐに手配する!」

 ジークが素早く部下に指図すると、すぐさま担架が用意された。そして、目の前には息も絶え絶えのハワードと懸命に名前を呼ぶヒカルが現れた。

「ヒカル、少し離れて! 私に任せなさい」

 シルベスタが両手の平をハワードにむけて魔力を送り込む。不安に震えるヒカルはソフィアに抱きとめられた。

「大丈夫よ。シルベスタならきっと助けてくれる」
「何があったんだ!」

 慌てたガウェインが叫ぶが、「そんなことは後よ!」と一括された。ソフィアはヒカルの肩をそっと抱きしめて、大丈夫を繰り返す。そうこうしている間もシルベスタの魔力はどんどんハワードを包み、出血を止め、傷口を癒していく。


 やがてシルベスタは、ハワードの容体が落ち着いたので近くの客室に寝かせて引き続き治癒魔術を施すと言う。痛々しい姿から離れられないヒカルはシルベスタに説得され、自室に戻ってきた。
ほんの2,3日留守にしていただけなのに、まるで自分の部屋のような気がしない。ソファに突っ伏して不安に駆られるヒカルに、ベスが香りのよい紅茶を運んできた。

「王女様、以前の爆発の時、王女様やリッキーは今のハワードさんのような状態だったのですよ。だから、王女様のご心痛、理解しております。だけど、シルベスタ様がこんなにきれいに傷一つなく治してくださったじゃないですか。今は、あの偉大なる大魔術師さんの腕を信じてみましょう。」

 優しく微笑んでいるベスが、少し無理をしているように感じたヒカルは、はたと気が付いた。まだ終わっていない。アランもリッキーも帰ってきていないのだ。

「ごめんね、ベス。私、自分のことばかり考えてた。今から陛下のところに行ってくるわ。日本で起こったこと、きちんと報告しなくちゃ!」



「デビリアーノがボーグさんに成りすまして、父上を襲ってきたのです!そこで私の事を出来損ないといい、教育しなおすと言って拉致しようとしたのです。ハワードさんは私を助けようとして…」
「ヒカル、よく頑張りましたね。では、アランの疑いは晴れているのですね。」

 頷くヒカルを見て、その場のみんなはほっと息をついた。そんなヒカルを部屋に戻して、ソフィアは微笑んでいた。

「ソフィア、ご機嫌だな」

 なにがそんなに嬉しいのかと不思議そうに様子をうかがうガウェインに、「分からないの?」と返す。

「ガウェインは相変わらず鈍感だなぁ」

 ハワードの治療を終えて戻ってきたシルベスタがにんまりと笑った。

「いじらしいじゃないか。あれは初恋だね。しかもハワードもまんざらでもないみたいだし」
「ええっ?そうなのか。う~ん…」
「あら、浮かない顔ね」

 複雑な表情のガウェインの顔を覗き込んで、ソフィアが言う。

「あいつがな。ちゃんと受け入れることが出来るかどうか…」
「そうね。一人で必死に育ててきたんですものね。だけど、手を離さなくちゃだめよ。アランにはアランの立場と責任があるもの。いい機会かもしれませんわ」

 ドアがノックされ、ジークがやってきた。

「もうすぐ王太子殿下とリカルドが帰還するとのことです」

 言うが早いか、目の前にアランとリッキーが姿を現した。

「お、おい、リカルド。食事中に転移するとはどういう了見だ」
「え?あ、いや、違うんです。すぐ食べ終わりますから」

 ジークに注意されて、リッキーは慌てて手元のプリンを掻き込んで食べ終わった。

「ヒカルは無事ですか?」

 それどころではないアランは、早速娘の居所を確認する。ガウェインとソフィアは思わず顔を見合わせた。

「心配ないよ。ハワードも治癒魔術が終わって、落ち着いている。ヒカルには自室に戻ってもらっている。それどころか、さっきまで日本での詳細を説明してくれていたんだよ」
「そう、でしたか。それなら良かった」

 ソフィアは呆れた様子で心配性な息子をたしなめる。

「12歳の少女が国のためにと懸命に事情を説明してくれているのに、王太子たるあなたは自分の気持ち優先ですか?」
「まあ、仕方がないな。男親とはそういうもん…」

 ガウェインの言葉はソフィアのするどい視線によってさえぎられた。

「今回の春の宴でも、何人もの貴族の令嬢が出席するわ。あなたもいい加減に相手を決めなければね」

 ソフィアにくぎを刺されて、アランは言葉も出ない。

「あのそれで…。ヒカルの乳母の件ですが、…」

 気を取り直してアランが状況を説明する。リッキーから、偽物のボーグに接近されたことを聞いたガウェインは沈痛な面持ちでリッキーを労った。
 シルベスタから受け継いだ召喚器具をうまく装着させることができたと聞いて、ガウェインは早速召喚しようと言い出した。

「いえ、今はまだいいでしょう。」
「そうだね。あれは嘘をついたらどんどん縮まっていく器具だから、こちらに危害を与えないと約束させたならしばらくは大丈夫だろう。それよりも、帰らない父親を心配し、次には殺人犯にされそうな父親を心配し、けがをした父親を心配し、最後にはデビリアーノと対峙したんだよ。少しはあの子にほっとできる時間をあげたいじゃないか」

 アランの言葉を引き継いだ割には、この魔術師、なかなかに厳しい現実を突き付けてくる。

「ふふふ、シルベスタもすっかりヒカルのファンになったのね。」

 楽し気なソフィアに、ちらっと片眉をあげ反論する。

「いいえ、あの子はきっと私の後継者になる。王太子殿下のお相手が決まったら、子離れできない父親から離れて、手に職をつけないかと、誘ってみようと思っているんだよ。」
「ほお、それは名案だな」
「そうね。あの子には魔術師の素質が十分にあるわ。シルベスタが後継に選ぶのなら、その地位も確立されるでしょうし。あとは、優柔不断な父親次第ね」

 両親の視線を浴びて、アランは大きなため息をついた。どんなに言われようとも、この世界の女性たちにはちやほやされすぎてしまったのだ。この外見や地位ではなく、自分自身を見てくれる女性など、あったこともない。


つづく





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最終更新日  April 20, 2022 06:47:30 PM
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