④素敵なお店


私はH12年の夏に,病気で手術をして入院していた。
入院していた南病棟から東病棟に行くと産科病棟があって,新生児が見られるように,なっていた。
「みんな可愛いなぁ~」
そんなに,子どもが好きってほどではなかったけれど,入院とかすると,
結婚後も慌しく交代勤務で,働いてたのに,仕事を離れると,(仕事がとにかく好きだったから)
色々考えることが出来たりして,心境の変化や,価値観が変わったりだった。
まぁ,普段看護婦している人が,患者になる訳だからそんな変化があってもいいかも,しれませんね。
で,とある日同じように赤ちゃんを見に行って,見入っていたら,
隣で同じように見入っていた年配のご婦人が,私に声をかけてきた。

「うちの孫なんです。娘になかなか子どもが出来なくて…寂しいから犬飼うって、
買ったんですよ。そしたら,出来てね…環境が変わったからですかね・・」

それは,それはうれしそうに話して来られた。
ふぅ~ん。そういうこともあるんだなぁ…逆の話って聞いたことあるけど…
でも,腹帯って,戌の日に巻くしねぇ…
なんにしたって,おめでたいなぁと思った。ホントに嬉しそうだったもん。

そんな入院生活も終わって,H12.8.4に退院した。そしたら始まるのが通院。
でも,総合病院なので,駐車場はいつも満車,待ち時間が長い。第二駐車場は10分ぐらい先の所だけど,病み上がりの私にとって,炎天下の中を歩くのは、かなりきつい。
そして、駐車場料金がもちろん取られるのだけど、待ち時間が長く、特に脳外科に受診する私はよりいっそうの待ち時間を覚悟してなければならない。

そんな病院のほど近くに、大きなホテルがある。結婚式なんかもある、大きなホテル。
そのホテルの裏玄関からは、アーケードがあって、
花屋・洋服屋・呉服屋・エステ・絵画店・他国の物まで揃っているスーパーマーケットが軒を連ねている。
アーケードだから、もちろん屋根もついていて、日陰。そしてそのアーケードを出て50mぐらい先が、病院の正面玄関なのだ。
もちろんホテルの駐車場は、ただ…☆

それはもう、ここに停めるしかない!!
退院後の初通院の日に、早速実行した。ホテルの裏玄関を出て、お店が見えてきだした時、見たことない新しいお店が出来ていたので、気になった。

すると、窓越しに子犬達が数匹遊んでいた。3畳ぐらいのスペースは、犬専用のフロアーだった。そして、店の中は犬のグッズがきれいにディスプレイされていて、今まで見た事がないペットショップが出来ていたのだ。

それからの通院は、必ずホテルに駐車して、そのペットショップを窓越しに覗いて、診察に行って、帰りもまた覗いて…それがとても楽しみだった。ホントに、子犬達は楽しそうに転げまわって、遊んでいて可愛い。

職場復帰にはもう少し時間がある。子どもはいないで、たった一人の時間…
だんなクンは、仕事だし…かといって、出歩くほど元気はない。
ヒマで、退屈だった。ずっと仕事ばかりしてたから、どう過ごしていいのやら?
あぁ、そういえば、赤ちゃん見てた時のおばさんあんなこと言っていたなぁ…

実家では犬も猫も飼っていて、ある意味退屈しないし、寂しいときや、辛い時の慰めにはもってこいの癒し系。

「犬、ほしいなぁ・・・」

そんな風に、思うようになっていた。ただし、だんなクンの実家は、動物を飼った事のある家ではない。だから、だんなクンが、同じように思うかはわからなかった。

でも、どうしてもその店に興味があった私は、ある診察の帰り、ついにそのペットショップのドアを開けてみた。
中には、私より年上の目が大きな女性とそのお母さんらしき方がいた。
私は、決めていた。売ることばかり言うような店なら、すぐ帰ろう・・・と。
じっくり話を、聞いてくれるかどうか…なんてったって、動物を飼ったことないだんなクンを、連れてきたいと思っていたからだ。


中に入って、私はほしいと思っているけれど・・・とだんなクンは飼ったことない家の人であることなどを説明した。
構えていたわりに、予測に反した…
説明をした私に、
「こっちにどうぞ」
と、店の中のダイニングテーブルに来るように進めてきた。
そして、珈琲を出して下さった。
私の話を聞いた二人は、他のお客様も私が話すような状況で、でも飼われたらご主人の方が,べたぼれしている人が多い事など話してくれた。
そのほか,共働きだけどどうか,などの相談にも丁寧に答えてくれた。
そしてなにより、
「ご主人と一緒に来て見て下さい。」
と,買うことはさて置き,そういってその日は店を後にした。

帰宅しただんなクンに,一生懸命そのペットショップでの話をした。
最初は,とても乗り気ではなかった。2人とも働いているのにどうする?自分の帰りが遅くて,(私が)夜勤の日はどうする?唯一の楽しみである旅行の時はどうする?
でも,とにかく一緒にペットショップを見に行ってほしかった。だけど、9月からは職場に復帰し、忙しくなっていた。でも、気持ちは変わらなかった。

頃合いを見ながら口説いて,やっといいよと言ってくれたのは,11月ぐらい…その店を見つけて4ヶ月,お店の方と話して3ヶ月ぐらい過ぎた時だった。

だんなクンと2人でペットショップを尋ねた時も,目の大きなお姉さんとそのお母さんの2人がいた。私が一人で尋ねた時と同じ様に,ダイニングテーブルに通され,珈琲を勧められた。
特別に犬を抱かせて頂いたが,だんなクンは恐々、すぐ代わってといった。
やっぱり、犬を飼うことはムリかなぁ…?

でもそんな私たちに、やっぱり売りつける素振りはなく、初めて飼うなら…と、飼育しやすい犬種など教えてくれた。そして、帰り際に

「いろいろな店を見てきて、それから決めた方がいいよ」

と、話してくれた。すごい店だと思った。普通は言わないセリフだろう…
だって、目の前に飼おうかどうしようか?と悩んでいるお客がいるんだから…
その後、もう一度だんなクンと、行ってみたがやはり、同様な感じだった。

それからは、私達の住んでいる所から近くにあるペットショップに、色々足を運んでみた。そして、犬もだけど、値段、店の様子、店員の様子、犬小屋の中…色々と、注意深く2人で観察した。
ここの犬はあそこより安い、犬の服はきれいに並べてない、犬小屋の中は犬が寝ている頭の上にフンがあったりする店も…
何より、店員に子犬の事を尋ねても、アルバイトだからなのか
「ちょっと、待ってください」と、知らない人ばかりだった。

でも、価格は明らかに、あのペットショップに比べて安かった。

12月の病院受診の時、窓越しに覗くと、可愛いチワワがいた。
家に帰ってだんなクンに話したが、値段を聞いて「高いから」と、見に行くこともしなかった。
でも、少し私も、主婦の端くれ。値段が高いから…やすい店ので、いいかな~っ思っていた。

年が明けて、H13年1月の終り頃、やっぱり病院受診の時店を覗いた。
今度は、小さなミニチュアダックスフントがいた。値段…?チワワと同じ…
だけれど、以前だんなクンと店を訪ねた際、特別に抱かせて頂いたミニチュアミニチュアダックスフントが少しプライスダウンになっていた。

だんなクンに、可愛い子犬がいたことと、あの時抱いた犬が少し安くなっていることを話した。
だんなくんに、他の店の方が安いし、見るだけでいいと話したら、

「飼うんなら、あの店がいいとおもう」

といった。高いのに~でも、他よりきれいだしなぁ…そりゃぁ、私だってあの店がいい!けど、目先の金額には…

2月に入って、だんなクンとペットショップに行った。店内は、お客さんが沢山いた。私が可愛いと言っていた子犬も、少しプライスダウンされた犬も、まだワンちゃんスペースで、遊んでいた。

いつものお姉さんは奥の方で、犬のシャンプーをしてあり、私と同じくらいの女性が2人接客に携わっていた。小さな子犬が見たいことを話すと、いつものお姉さんに、相談して、まだ、ワクチンをしてないので見せるしか出来ませんが…と、店員が抱いて連れてきてくれた。

かなり、可愛い…

その店員は、その子犬の様子など色々と説明してくれた。他の店なら、わからないって言われるかも知れないような事も…

また、ちょっとしてから来ます、と一旦店を出た。
どうする?やっぱ、高くない?色々な話を、だんなクンとした。

再び店に行ったのは夕方だった。店にはいつもの、目の大きなお姉さんとお母さんの2人がいた。いつものように、ダイニングテーブルに座り珈琲を勧められ、
今日は、先日見たとき可愛い犬が入っていたから、そして前に抱かせてもらった犬が少し安くなっているから来た事を話した。

お姉さんは、奥のワンちゃんスペースから、子犬を連れてきて特別に抱かせてくれた。しかも、だんなクンにまず渡した。
少し、前抱いた時のだんなクンと違う気がした。そして、私も抱いてみたが、こりゃまたかわいかった。
でも、飼うかわからないし、大切な売り物だから、早々お姉さんに返した。
飼いたい…けど、やっぱり決定権はだんなクンだと思った。
すると、耳元でだんなクンが言った。

「飼おう!もう、次来た時はいないかも知れない」

正直、驚いた。   たまげたと言う言葉が、ふさわしいかも知れない。
だって、前に同じ値段のチワワの話をしたときは、「高い」って言ったのに…

で、飼う事が決まった。少し、内金を払った。何でも、1回目のワクチンが済むまで待ってほしいとのこと。でも、私たち3月末から、5日間ではあるが旅行に行くことになっていた。だから、引取るのは旅行から帰った4月にして貰えるか?と尋ねてみた。すると、せっかくのかわいい時期、この子犬の時期はすぐ大きくなるし、もったいない、旅行の時はうちで預かるから・・・と話してくれた。何でも、その店から出た犬は預かれるシステムにしているらしい…(店の犬の状況にもよるが…)

で、連れて帰る事に決めたが、今度はいつ連れて帰るか?と言う話になった。
何でも、日取りのよい日がいいとの事。子犬を迎えるまでに、準備しなければならないものもある。
暦は、大安ではなかったが、かわいいメスの犬だから…と言うことで、3月3日に引渡しをする事にに決定した。あと、名前・・・

良い犬の名前・・・などという本を、新しく買ったのがあるからとお姉さんが貸して下さった。9画、10画は短命になるからそれだけは避けてほしいことの説明もしてくれた。

名前は、男の子、女の子と、人間の名前なみに、色々とあった。
ちょうどお正月頃車を中古で購入した。その車は「ボ○ゴフレンディー」
フレンディー、字画は13画…悪くない。
呼んだ感じ…友達っていう雰囲気で悪くはない。響きもいいかな。
本には、似たような名前で、載ってなかったけど・・・

      命名:フレンディー

と決定した。必要など道具も買い揃えた。あとはその、フレンディーが来るだけ。

H13.3.3、実に初めて店を訪れた時から約半年目にして、ついにこの日がやってきた。だんなクンと2人してお迎えに行った。とりあえず、いつものように珈琲を頂いて、名前を発表した。似合うねぇなんて、みんなで話した。

お金も払い、フレンディーを譲り受けた。買い方の手引きと、かかりつけ病院・・・といっても、ワクチンにいっただけの病院だが…そのショップのかかりつけとの事で、紹介してもらった。

好きなおもちゃも持たせてくれ、帰り際見送ってくれた。
そうして、我が家にたどり着いた。だんなクンに聞いた。
何で、急に買うことにしたのか…?

「俺の目を見て、飼って…っていう顔をした。ひとめぼれかな・・・」

ちょっとぉ、私は、情に絆されて結婚に至ったって言うのに、ひとめぼれ?
まったく、わからなかった。けど、私も可愛いって思った子犬だから、よかった。

後日、ショップのお姉さんとお母さんにその話をすると、やっぱり人と同じで、犬にも縁があるらしい。だから、フレンディーとは縁があったのだろう。

そんな風に、フレンディーは素敵な店から、我が家にやってきた。お店で愛情いっぱいに育てられてきた…その分しっかり飼育しようと誓った。

あれから、今日まで…フレンディーと一緒に、私一人で、だんなクンだけで、だんなクンと2人で、もちろん!フレンディー一匹で…って事はないが、事あるごとにお店に足を運んでいる。
心配なこと、困ったこと、家での様子、フレンディーが来てからのだんなクンのこと、動物を飼ったことがなかっただんなクンの両親の変化、他よろず相談まで…色々と話をするようになった。

考えてみれば、ペット同伴のお店って少ない…九州の私のいる町には、ないに等しい。そんな中、まさにお茶を飲みながら、犬と一緒にくつろげるスペースがあるのが、このショップ。いつ行っても、温かく迎えてくれて、ついつい長居してしまう場所…なのだ。

お姉さんやお母さん、他のスタッフの方みんな「フレンディーも来たの」って、可愛がってくれる。名前を忘れる…とんでもない!他のお客さんのワンちゃんの名前も、しっかり覚えてある。
ちゃんと、購入するまでじゃなくて、購入した後のフォローができる店。ほかに、どのくらいあるだろうか・・・?

でも、「もっといいお店が増えてほしい、ワンちゃんのために…」ってライバルが増えるかもしれないのに、そうやって話すお姉さんは素敵だと思う。そして、従業員も、きちんと一匹一匹の犬のことを把握しているのは、すごいと思う。
何より、母娘で、働いているのはすごいと思った。
何でかって?生き物の商売だから、休みってお客さんが来ない日があっても、従業員に休みはないに等しい。よって、一年中、365日、四六時中、母娘ずっと一緒というのは、ある意味忍耐力がいると思う。店では、喧嘩して口聞かない訳には、行かないからだ。

それと、そのショップで、私たちは「フレンディーの飼い主」という名目だけだった。
いつも、看護師の私…そうじゃないでいられるところがある・・・というのは、気楽だということも、重要なひとつだ。オアシス…っていうのかなぁ

とにかく私達にとって、そして何よりフレンディーにとって、必要なすてきな店なのである。




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