鷺沢萠『葉桜の日』
~新潮文庫、 1993
年~
表題作を含む2編の中編が収録された中編集です。
「葉桜の日」
は、両親を知らず、幼いころから志賀さん(3つのレストランを経営する社長)に育てられている 19
歳のジョージさんの視点で語られます。知人が倒れたことで、志賀さんに少し動揺が入り、懇意にしている「おじい」から、しばらく訪問していないある人物を訪ねるよう言われたあたりから、物語は急展開します。そして、「おじい」のお願いをかなえようと奔走するジョージさんがある事実を知り終わるという、このラストも印象的です。
「果実の舟を川に流して」
は、母親に育てられていたものの、大学在学中に母が倒れ、海外を放浪したのちバーにつとめるようになった健次さんが主人公です。パワフルな「ママ」の存在、女たらしの常連客など、いろいろ抱えた人々が集う「パパイヤボート」というそのバーを舞台に、物語は進みます。常連客の失敗、事情を抱えた外国人女性のトラブル、そして「ママ」にとって特別な存在のある人物の意外な現状など、人っていろいろあるよね、と感じました。
山田太一さんによる解説も興味深く読みました。
(2021.09.25 読了 )
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