第20章

最後の階段を駆け上がれ 







フィールドに舞い降りた二人の美女。
ユフィはどこか余裕そうに、不敵な笑みを浮かべている。
ライムは真剣な眼差しでユフィを睨む。
「久しぶりね、ライム。元気だった?」
久しぶりにあった旧友に、軽く話しかけるユフィ。
ライムは綺麗にショートカットで揃えた青の前髪を払いながら、はき捨てるようにユフィにこう言った。
「お生憎様、戦いに入ったら敵とは会話しない主義なの!」
その言葉と共に、ユフィは一瞬だけ光に包まれた。
完璧な不意打ちでやってのけた、完璧な魔法。
だが。
「いい手だったけど、根本的な魔力の差は埋め切れてないの。ゴメンね、貴方程度の魔力じゃ、私には勝てないの」
光の中から現れたユフィの言葉は、同じ魔法使いの彼女に対してあまりにも残酷だった。
魔力の高い者は無意識のうちに魔力で防御壁を展開させている。これが出来ているかいないかが、俗に言うエリートか凡人か、ということである。
「これをくらえば、分かるでしょう?」
その言葉を引き金に、ユフィの手から風が生み出されライムへと突撃する。
その風はライムをフィールドの壁まで吹き飛ばし、あまつさえその壁をも粉砕した。
「ぐぁ……!!」
ライムの身体が悲鳴を上げる。骨が軋み、全身の骨が砕かれたかのような激痛が身体を襲ってきている。実際、何本かの骨は折れているだろう。立つことはおろか、呼吸さえままならない。
「ゴメンね。今、楽にしてあげる」
そのユフィの言葉が、ライムの聞いた最後の言葉だった。

ユフィがゼロたちのところに戻ってきて、Vサインをする。
「圧倒的だな……」
ライダーがボソッと呟く。彼は今、実力の次元の違う3人といるような、疎外感を覚え始めていた。
「じゃ、最後は私が行きますね」
リンが遊びに行くかのように軽く言い、フィールドに進む。
彼女の相手は、セリラ。ゼロとライダーの元同級生である。

―――槍、か……。
セリラの武器を見て、戦略を組み立てる。リーチの長い武器が相手の時は、戦法も変わる。リンの脳内には、その戦略を組み立てるだけの知識が半ば本能的に組み込まれていた。
「準備はいいかしら?」
物腰穏やかに、リンに向かってそう言ってきた。
その風格は、大人びていて、リンと相対していることなど、大人と子供とのはっきりとした区別のようであった。
「どうぞ」
リンが軽く答え、そしてすぐさま戦いの眼にと変わる。
彼女は戦いを決して軽んじない。勝利と敗北ではなく、“生”か“死”か。それしか彼女の戦いに対する意識はない。
セリラが真っ直ぐに接近する。リーチが長い槍。当然リンの剣より早く彼女のもとへ届く。その突きを半身で避け、柄の部分を掻い潜り、その喉元を狙おうとする、だが、その狙いは奇しくも破られた。セリラの槍の柄部分で強打される。
思い切り頭を強打されたものの、なんとか間合いを取る。
数秒間で、これら一連の攻防が繰り広げられたのだ。
―――この人……強い……!
武器は、刃だけが武器なのではない。その全体を十二分に利用し、最大限の方法で用いることに真の武器の強さがあるのだ。
セリラは若くして、その槍を完璧に使いこなすランスマスターであった。

「ちょっと、まずくないか?」
ライダーが怪訝そうにゼロに問う。
「ん?……あぁ、そうだな」
ゼロの答えは、曖昧だった。何か違うことを考えているような。
「ま、信じましょ?」
ユフィがゼロの陰から顔を出し、ライダーに告げる。彼女の表情はリンの勝利を信じて疑っていなかった。
―――リンは、大丈夫だろう……。セリラの武器の扱いは確かに超一級品だが、リンの戦闘能力、潜在能力、戦い方は、まだまだ未知数だし、セリラの比じゃない……。それよりも、この戦い、やはりどこかおかしい……。何だ?この嫌な予感と“違和感”は……?
ゼロは何かに気付いたようだ。それは、ムーンの真意に近いのだろうか。

―――さて、どう攻めるかなぁ……。
不用意に近づけば、また先ほどのように強打されるだろう。下手に打撲するのは、槍で貫かれるよりも性質が悪い。だが、接近しないことにはリンの剣は届かない。
―――難しいなぁ……。
そこでリンはふと気付いた。セリラが、先ほどから自分を牽制するように、微動だにせず自分に矛先を向けている。全身に隙がない。
―――あ……なるほどね……。
だが、リンは、セリラのその構えから彼女の戦術を察した。
当然のことだが、槍は剣よりも重い。故に、リンよりも早く動くことはできない筈だ。だからこそ彼女はリンの動きを目で追い、必要最低限の動きで彼女を捉えるつもりなのだろう。それに気付くリンの洞察力も一級品だが、セリラの動体視力はまぎれもなく超一流だ。
―――……一か八か、賭けてみよっと。
リンの考えた作戦とは、むやみやたらに動き回り、その素早さで彼女の思考を混乱させるという、まるで幼い作戦。だがそれが彼女らしいともいえよう。
リンが動いた。セリラの槍の攻撃範囲のギリギリ外をひたすらに動き回り、隙をうかがい続ける。そして、リンは一瞬のタイミングで切りかかった。その剣は、確かにセリラに届いた。左肩から一直線に腰まで一線したはずだったが、その剣はセリラの左肩に浅く食い込んだだけであった。
「――この手ごたえは……!」
「用意周到でしょ?」
対刃性の薄い鎧を、着込んでいたようである。それに加え、リンは激しい動きのあとであり、ただでさえその剣撃の威力は減少しているのだ。
油断したリンは、セリラの蹴りを鳩尾に食らい、後方に飛ばされながら、激痛を味わった。逆流してくる胃液を、ぐっと飲み込み、リンは立ち上がりふらつく足で再びセリラに向かい合った。明らかに彼女は劣勢で、セリラに分があるというのに、敵さんは油断や隙の一つも見せてはくれていない。
軽くステップを踏む。幸いどこも骨折などはしていないようだ。痣はできているだろうが。
―――大丈夫。いける。……落ち着いて、神経を、研ぎ澄まして。
自分にそう言い聞かせ、リンは呼吸を整える。乱れた呼吸が静まり、心臓の動きが平常時に戻っていく。
―――後手に回ってくれる戦法で、助かったなぁ。
敵が攻めてこないのだから、この間に休むことができる。リンは肩の力を抜き、臨戦態勢のように見せつつ、身体を休めていた。
改めて現状を確認する。自分のダメージは大きく、相手のダメージは極わずか。その上、敵は優位からくる余裕も油断もない。はっきり言って、打つ手なしの状態だ。
一瞬、チラッとゼロの方を見た。だが彼は彼女を見てはいなかった。
だがリンはそれで満足だった。
―――先輩は、私が勝つと信じて次を見てる……!その気持ちに、応えなきゃ!
心の底から力がみなぎって来る。大好きなゼロは、自分を信じてくれている。そう思えたのだから、勇気百倍である。
不思議な自信を胸に、リンは無謀な突撃をした。だが今回は剣を構えていない。
流石のセリラも、この行動は理解できず、まず近づけさせまいと槍を振るった。
「かかったぁ!!」
だが、それこそがリンの仕掛けた罠だった。抜刀し、剣を振るう。その剣先は、セリラの槍の柄。
彼女の振るう剣は、音速の振りで鉄をも容易く斬り裂く。そして、槍という武器の基本的な重さから、女のセリラならばその中でも耐久性は低いが、軽い槍を好むと判断し、武器の破壊を狙ったのだ。
そしてその判断に狂いはなかった。彼女の槍は中ほどで、綺麗にスパッと斬れた。
「な?!」
驚きのあまり、言葉を失ったセリラ。
「ついに油断しましたね」
その隙をリンは見逃さなかった。彼女の剣が、セリラの胸を貫いた。

勝利をもってゼロたちのところへとリンが戻ってくる。戦闘こそ見ていなかったものの、リンに向かって一番に賞賛したのはゼロだった。
「俺がお前でも、同じ戦法だったよ」
ゼロに頭を撫でられ、上機嫌なリン。ちゃんと見ていてくれていたようだ。
ユフィとライダーも、彼女を褒めた。
ひと時の、和やかな空間。
そして、開くであろうと思っていた最後の扉が開いた。
「この先に、ムーンがいるってのか……」
ライダーが呟く。
「いや、たぶんいるのはライト様だろうぜ」
ゼロ以外にとって、聞き慣れない声がした。
「ヴァルク!」
彼の言う準備が出来たらしい。ゼロは最大のライバルであり、自分と同じく“運命の楔”に選ばれたという同志を歓迎した。
「遅くなってすまなかったな。さぁ、進もうぜ」
ヴァルクが歩き出し、扉の方へ向かう。
その後ろ姿を見つめながら。
「ねぇ、ゼロ。あの人は……?」
ユフィはゼロの袖を引きながらそう尋ねた。
「昨日の敵は今日の友……いや、さっきの敵は今の友、かな。ヴァルク・ジェネラル。頼れる男さ」
ゼロが笑いながらそう答える。たしかに彼からは、ただならぬオーラが感じられる。
「アノンちゃんと似たオーラを、あの人周辺から感じるんだけど……?」
最初の質問が形だけなら、この質問こそがユフィの最も知りたかったことだった。
「あいつは、アシモフの楔、ユンティだかに選ばれた戦士だよ」
ゼロとユフィの会話は、ライダーとリンには理解できなかった。

そこは一際大きな部屋で、今までの部屋に比べて薄暗かった。部屋の奥のほうに玉座があり、誰か居るようである。
その玉座に座る人物、東の王にして、ムーンの実の兄。ライト・クールフォルト。
物腰は穏やかで、その優しさはエルフ一とまで言われたほどの柔和な人物、とゼロは聞いていた。今も、薄暗い玉座の上で柔らかい笑みを浮かべ、ゼロたちを見ている。どこか、意志の弱そうな顔。
「ようこそ、と言ってもそんな雰囲気じゃないね」
苦笑交じりにライトがゼロたちに話しかける。その声は柔らかく、聞く者を落ち着かせるような声。
「悪いが、世間話をしている暇はないんだ。あんたの妹はどこにいる?」
ゼロが感情を押し殺して問う。ライトは呆気に取られた顔をしてゼロを見た。
「屋上だけど、それを聞いてどうするんだい?」
すぐまた微笑を浮かべる。だが、その笑顔の裏に冷たさを感じた。
「あんたには悪いが、平和のために生かしてはおけない」
ゼロが少し震えた声で言った。だが、そのことに誰も気付かない。ライトの発するオーラが、彼らに何かしらの恐怖を与えているようだ。
「そうか……。でも、ムーンは僕の大切な妹だ。そう易々と、殺させたりしない」
ライトは立ち上がった。ゆっくりと近づいてくる。
「5対1だぞ?」
彼はとても戦闘が出来るようには見えないが、何故か膨大な殺気を感じる。ゼロ自身、その殺気に気圧され、声を出すのも精一杯である。他のメンバーたちは、声さえも出せないようだ。
「構わないよ」
ライトの姿が視界から消える。考えられないほど、速い動き。
キィィィィィィィィン!!
甲高い音を立てて、ゼロの刀とライトのレイピアがぶつかった。一瞬の間を置いて、他のメンバーも戦闘体勢に入る。リンとライダーとヴァルクが、3方向からの同時奇襲攻撃をかける。その攻撃に対し、ライトはゼロと交えていた武器を引き、素早く横に飛び退き避けた。その避ける動作までを読んでいたユフィが、そのポイントに光の矢を撃ち込む。
だが彼はまた一瞬の判断で高くジャンプし、避けた。
「ライト王子は、戦闘に関しての才能はないって噂だったんじゃねぇのか?!」
ヴァルクが彼の凄まじい動きを目の当たりにし、そうはき捨てた。正直に、俄かには信じがたい動きである。
「そんなことを言ってもしょうがないだろ。今は、先入観を捨てて、目の前の敵を倒すことだけを考えろ!」
ゼロが冷静になれないヴァルクに活を入れた。ゼロ自身、驚いている。今一瞬の動きは、とても常人とは思えなかった。そして、先ほど剣を合わせた時の彼の力も凄まじく、痺れがまだ残っている。
―――予想外だったな……。この人だけは、戦いにその身を置かないと思っていたが……。
ゼロは正直に焦っていた。彼がどういう人物かは、詳しくは知らないが、昔グレイから聞いた話では、東西南北で一番に善政を敷くであろうと思われる人物らしい。そんな人が、今自分を殺さんとしている。その事実は、まだ受け入れられない。
ライトが動く。その動きは、一流の剣士でも、何とか対応できるかできないかという動き。だが、彼の矛先のユフィは魔法使いである。やはり完璧には対応できていなかった。
突き出されたレイピアを辛うじて避ける。だが、少し頬をかすったようだ。ツーっと彼女の頬を血が伝う。
この攻撃に、ユフィ自身は大してなんとも思わなかったが、ある男がキレた。
―――……アノン、力を貸せ。
唐突にゼロがアノンに命ずる。
―――分かった。
大して疑問にも思わず、アノンはゼロに憑依した。
「……許さん」
愛する女性に、かすり傷一つでも負わせた罪は重い。ゼロにスイッチが入った。
ライトの倍以上の速さで、彼に迫る。
その姿は誰の目にも止まらなかった。背後に回りこみ、斬りつけようとする攻撃を、ライトはギリギリで止めた。だが、先ほどまでは力で押せたはずなのに、今は逆転されている。ゼロが押し切り、ライトは後方に押し倒された。
一同は、二人の戦いを唖然として見つめていた。ユフィ自身、照れくさいような、馬鹿くさいような、いまいち判断がつかない。
―――凄い……さすが先輩……。こんな力をまだ秘めていたなんて……。
―――コイツ……アホみたいだな……。
―――さっさと憑依しちまえば良かったものを……。
―――嬉しいような……嬉しくないような……。
それぞれがそれぞれの思いを胸に、もうこの戦いに入り込む余地はないと判断し、臨戦状態のまま観戦を決め込んだ。
倒れたライトの顔に、刀の先を突きつけて、ゼロは見下していた。その眼光は、見たものを石化させるというメデューサよりも鋭い。
「彼女を殺せば、君の気が動転すると思ったんだけど、生憎中途半端すぎたようだね……。結局君を怒らせて、力を解放させる結果になっちゃったよ」
変わらずライトの声はマイペース。緊迫感が感じられない。
「さぁ、その刀で僕の首を刎ねるといい。それで、君の勝ちだ」
ライトの目は近づいてくる死に対して、絶望していなかった。その絶望の先を見つめているような、そんな目。
ゼロは何故か動けなかった。この男を斬っていいものか、突如不安になる。
―――くっ……!この手を少し突き出すだけで、それだけで倒せるというのに……!
ゼロの頬を冷や汗が伝う。
ライトはゼロの同様を見逃さず、素早くゼロの刀を払い立ち上がった。
だが。
「なにっ?!」
立ち上がった所を、光の矢が直撃する。ライトの左下腹部を直撃した。鮮血が溢れ、服が赤く染まる。
それでもライトの表情は激痛に歪むでもなく、驚いているようでもなかった。
「今のは、なかなかよかったよ」
どういう原理かは分からないが、傷跡が瞬く間にふさがっていく。
休ませる間もなく、間髪いれずにヴァルクとライダーとリンが波状攻撃をかける。
その攻撃を先ほどまでよりも速い反応でライトが捌く。
そしてそのまま攻撃へと転じ、ライダーは剣で防いだものの大きく後方へと弾かれた。
ライトの猛攻が始まった。



「さっきのチャンスを逃したから、こうなるのさ」
五人はどこかしら傷つき、傷口を押さえながらライトを睨んでいた。
攻撃しても攻撃しても、そのダメージはどこにいったのか、すぐさま傷がふさがっていくのだ。その上、攻撃の鋭さは段々と増している。
―――これ以上やられるのは、まずいな……。
ゼロが焦り始める。ムーンとの戦いの前に、ここまで消耗するとは思わなかった。
ゼロは、身体の所々に傷を負っていた。致命傷はないが、痛々しい。愛刀を杖代わりに立ち上がる。そのゼロの手が、ふと握られた。
「焦っちゃダメだよ。必ず何か仕掛けがあるはず。落ち着いて。ゼロ一人じゃ無理でも、私がいる。一人じゃないよ」
彼女も最初に負った頬の傷だけでなく、所々に傷を負っている。だが、その目にともった炎は依然として消えることなく、煌々と燃えている。彼女はまだ焦りも、絶望もしていない。
その姿がゼロには悔しかった。自分の傷など痛くはない。だが、彼女の負った傷を見るのは、何倍も痛い。
「ユフィ……。ゴメンな……」
唇をかみ締めながら、ゼロが絞り出した声で言う。
その二人の会話を、アノンは聞いていた。
―――そうだゼロ。貴方一人ではない。私だっている。何もかもを一人で背負うことはない。
そしてゼロに語りかける。ゼロに対し、淡い恋心を持っている彼女にとって出来る限りの、余りに健気な強がり。
周りを見れば、ライダーもヴァルクもリンもボロボロだが、立ち上がり武器を構えている。こんなにも頼もしい仲間がいることを、自分は忘れかけていた。ゼロは一回大きく深呼吸をして、改めてライトと向かい合った。意を決したのだ。
「いい目だね。その信念を持って、その剣で道を拓いてみせてごらんよ!」
ライトがゼロに攻撃を仕掛ける。その攻撃をゼロはじっと凝視し、見切る。ゆったりと、ゼロの刀が残光を残し、弧を描いた。
「……そうだよ、それでいいのさ……」
ライトが玉座の前までゆっくりと歩く。ゼロの刀は、彼の戦意を根本から消し去った。途中で倒れたが、玉座の前までなんとか這うように移動し、そこで力尽き身体が動かなくなる。
―――ムーン……僕は、ここまでだったようだよ……。不甲斐無い兄を、許しておくれ……。
「はぁはぁ……」
どっと汗が噴出す。心労も、ピークに達しているようだ。
「殺したのか……?」
そんなゼロにヴァルクが静かな声音で尋ねる。
「いや……。アイツには、統一後の東を治めてもらう予定なんだ……。死なれちゃ困る」
ゼロがニッと笑って答える。その表情は、とても頼もしかった。
そのゼロを見て、改めて“勝った”という自覚が生まれる。
「残す敵は、あと一人ですね」
リンがそう言う。
そう、次の相手こそ、最強にして最悪。そしてこの戦いの元凶である最大の敵、ムーンなのだ。

ライダーにライトをシスカの所まで運ぶように頼んだ後、ゼロたちは少しばかりの休息を取っていた。
ライダーがこのメンバーの中での自分の実力の低さを痛感し、自らライトを運ぶのに志願してくれたことには感謝の念でいっぱいだ。
ユフィの治癒魔法をもらい、メンバーの状態もかなりよくなった。
ゼロは改めて今一緒にいる仲間たちを見回した。
ユフィ、リン、ヴァルク。今自分を支えてくれるこの一騎当千の三人。ゼロは心の中でこの三人に心から感謝した。
「今更だが、この先何が起こるのかは俺にも全く見当がつかない。もしかしたら、命を落とすかもしれない……。でも、何が起ころうと、“平和のため”に戦っていること。ここにくるまでに“散っていった命”があること。そして、“絶対に勝つ”っていうことを忘れないでくれ。俺は、この戦いに命をかける。だから、みんなも命をかけて戦ってくれ」
ゼロが深く頭を下げた。
「そんな、先輩、やめてくださいよ」
リンが照れくさそうにそう言う。
「そうだぜ。何今更当たり前のこと言ってんだか」
ヴァルクが皮肉気に言う。
「私たちは、絶対に勝つんだからね」
ユフィが笑顔でそう言う。
ゼロは胸が熱くなってきた。そして、気を引き締めて、屋上へと、歩を進める。
“西王”と呼ばれ、“死神”と呼ばれる青年、ゼロ・アリオーシュ。
彼と、彼をとりまく者たちの、最後の戦いの舞台はもうすぐそこに迫っている。










数多くの敵を撃破し、ついにここまでたどり着いた。
全ては平和のために。
散っていった多くの命を無駄にさせないために。
彼らは今、最後の敵へと挑む。
そして彼らに、ムーンが牙を向く。



最後の聖戦に、最後の時が近付いている。











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