寂症状

灰色の空-1-(オリジナル小説)



頭から大量の血を流し、僕の愛しい君が足元で死んでいるんだ。本当は僕が君の立場のはずなのに。。。僕はその日から、自分を恨んだ。この生きている自分を。この、命を絶つことも出来ない自分を。愛する君がいない世界なんて僕は未だ、信じることが出来ない。

ああ神様。。。この無様な僕をここで殺してください。




灰色の空



君の声を聞くことなく生きてきて一ヶ月目。僕はほとんど何も食べることが出来ないんだ。食べるものは全部帰ってきてしまって、食べる意味すらも分からない。ただ壁によっかかってボーっとしている毎日だ。ねえ清美。なぜ君はあの時、死んでしまったの?なぜ君は僕をここに置いてけぼりにしたの?それが分からなくて。

横を見ると、そこにはかみそりが。それは、この一ヶ月、僕を死へと招いていた。本当は死なんか怖くないんだ。どうせ君のいない世界なんて死んでいるのと同じことだから。でもただ、手がひどく震える。また僕は、そのかみそりを拾った。そしてゆっくりと、左手の手首に当てた。しびれている手を動かそうとしているようだ。そしてついに、少しそのかみそりを手首に押してみる。けど、切るどころか、かみそりが滑って落ちてしまう。

「はぁー。。。」こんな自分が情けなくてしょうがない。僕の心の中では早く君のところに行きたいんだ。すごく。でも僕の身体はそれを許してはくれない。清美、僕に力をくれないかい?こんな非力な僕に。。。

僕はね、君が死んで初めて気づいたんだよ。君がいないと僕はただの人形だ。誰も僕を動かすことのない人形さ。どんなに頑張っても、自力で動くことなんて不可能。

お腹の上に乗っているかみそりにもう一度目をやる。ピンクのメタルのハンドル、そして鋭い刃。またそれを拾う。でも今度は、手首じゃなくて、手首とひじのちょうど真ん中に、乗せた。そして、少し押しながら、それをゆっくり引いた。細長く咲く小さな赤い花。

「痛っ。。」後から来る痛みに、目がかすんだ。「くっそー。。くそっ!!」

そして、涙をこぼすまいと、上を見た。暗い天井。それはまるで、天界にある地獄みたいで。

「清美ぃ。。。助けてくれよぉ。。お。。俺一人じゃあ何も出来やしないんだ。。。清美ぃ。。。清美。。。清美。。。」愛しい貴女の名前を呼ぶと、あの時以来始めての涙が流れ出る。「清美。。。清っ。。くっ。。うっ。。。清美。。。愛してるよ、清美。。。」

止まらない涙とともに、横になったとき、眠ることをすごく懐かしく感じた。


_______
続け


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