寂症状

灰色の空-6-



 でも最後まで期待を裏切られて、「もう諦めなさい」と、清美の親にも言われた。

 そしてその日世界で一番大切なものを無くした僕は、狂ってしまった。

家に帰りたい。人は醜い。誰にも会いたくない。清美に会えないのに、何で他に人と会わなきゃいけないの?

僕は家に帰る途中、何人もの人を突き飛ばし、とにかく家に走った。

そして僕は引き蘢った。友達からの電話は無視し、時々家に様子を見に来た人たちの事も無視した。

独りにさせてくれ。独りにしてくれよ。。。






隣に居た彩を見た。

「どっ。。。どうしたの!?」

彩は泣いていた。

「な。。。何にも。。。知らなくて。。。あんな事聞いちゃってごめんなさい。。。」

僕は彩を見た。まだなんで泣いてるのかが分からなくて。僕は慌てた。「い、良いよ、別に!もう前の話だし。」

「前の話でも…。」

「それにさぁ、」彩から目をそらす。そして空を見上げた。その先には、真っ青な空。久しぶりに直で見た、何時かは『綺麗』だと思っていた空。全部心の奥に大切に仕舞い込めるように、と、目を瞑った。「こうやって外に出て来れたんだから。」

目を閉じてても見える灯り。僕がいつの間にか忘れててしまってた、暖かい灯り。目を開けたら隣りにいつもみたいに清美が居そうで。でも目を開けると、未だ泪目の彩が、下を見ながら小さくブランコを揺らしていた。

僕の所為で、気を害してしまったのだろうと思うと、胸が痛んだ。こんな、見ず知らずの少女に、あんな話はやっぱり、間違ってたのだろうか。僕は酷く後悔した。「あの、彩ちゃん、ごめんなさい、あんな話しちゃって。」

彩は僕の事を見上げた。「良いの、別に。話したらちょっとは楽になったでしょう?」

確かに、胸の重みが少し引いた気がした。

それは嬉しい事であると同時に、少し怖い事でもあった。このまま清美を忘れてしまうんじゃないか、と。怖くて、怖くて。僕は小さく身震いをした。






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