おもちゃ・こども・のはら・うた

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金子みすゞ



「星とたんぽぽ」


 青いお空の底ふかく、
 海の小石のそのやうに、
 夜がくるまで沈んでる、
 畫(ヒル)のお星は目にみえぬ。

   見えぬけれどもあるんだよ、
   見えぬものでもあるんだよ。


 散つてすがれたたんぽぽの、
 瓦のすきに、だァまつて、
 春のくるまでかくれてる、
 つよいその根は眼に見えぬ。

   見えぬけれどもあるんだよ、
   見えぬものでもあるんだよ。   


             (金子みすゞ 『星とたんぽぽ』より)








  蜂はお花のなかに、

  お花はお庭のなかに、

  お庭は土塀のなかに、

  土塀は町の中に、

  町は日本の中に

  日本は世界の中に

  世界は神さまの中に。


  さうして、さうして、神さまは、
  小ちやな蜂の中に。

              (金子みすゞ 『蜂と神さま』)







 母さん知らぬ 草の子を、
 なん千萬の 草の子を、
 土はひとりで
 育てます。

 草があをあを 茂つたら、
 土はかくれて しまふのに。


              (『土と草』 金子みすゞ)







 こッつん こッつん 打たれる土は
 よい畠になつて よい麦生むよ。

 朝から晩まで 踏まれる土は
 よい路になつて 車を通すよ。

 打たれぬ土は
 踏まれぬ土は
 要らない土か。

 いえいえそれは
 名のない草の お宿をするよ。


       (金子みすゞ 『土』)






『わたしと小鳥とすずと』 

    わたしが両手をひろげても
    お空はちっともとべないが、
    とべる小鳥はわたしのように、
    地べたをはやくは走れない。

    わたしがからだをゆすっても、
    きれいな音はでないけど、
    あの鳴るすずはわたしのように
    たくさんなうたは知らないよ。

    すずと、小鳥と、それからわたし、
    みんなちがって、みんないい。 




                  (金子みすゞ)






 『草の名』

  人の知つてる草の名は、
  私はちつとも知らないの。

  人の知らない草の名を、
  私はいくつも知つてるの。

  それは私がつけたのよ、
  好きな草には好きな名を。

  人の知つてる草の名も、
  どうせ誰かがつけたのよ。

  ほんとの名まへを知つてるは、
  空のお日さまばかりなの。

  だから私はよんでるの、
  私ばかりでよんでるの。


                        (金子みすゞ)





『雀のかあさん』

 子供が
 子雀
 つかまえた。

 その子の
 かあさん
 笑ってた。

 雀の
 かあさん
 それみてた。

 お屋根で
 鳴かずに
 それ見てた。


  (金子みすゞ 「金子みすゞ名詩集」より 彩図社)




久しぶりに、本当に何十年かぶりに、
詩を読んで、私は泣きました。

過去に、つぶされてぺしゃんこに死んだ雀を見たことがある。
昨年、公園の鳩を殺して笑っていた酔っ払いを見た。

鳴かない雀のかあさんに、
人間のような感情があったとしたら・・・






『こだまでしょうか』 [ ことば・本 ]
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。

「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。

「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。

そうして、あとで
さみしくなって、

「ごめんね」っていいうと
「ごめんね」っていう。

こだまでしょうか。
いいえ、誰でも。


(金子みすゞ 「金子みすゞ名詩集」より 彩図社)






この詩のCM,
昨年の震災時を思い出しますね。














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