ぬるま湯雑記帳

平幹二朗編

【平幹二朗編】
 ワタシがミッキーという場合、浦安で大活躍のネズミではありません。平幹二朗であります。そういえばこの頃テレビではあまりお見かけしませんね。舞台がお忙しいのでしょうか、お元気ですかあ?

<きっかけ>
 ケーブルテレビの「ファミリー劇場」で「まひる野」(渡辺淳一原作)をみて、「おっ」と思う。大人のおぢさまの雰囲気がいいなと。


ぬるま湯感想INDEXミッキー用

あ行
『天城越え』
か行
『獣の剣』
さ行
『三匹の侍』
た行
『大殺陣』
『天保水滸伝 大原幽学』
ま行
『樅の木は残った』



『獣の剣』   1965年  監督:五社英雄
 私の貧相な時代劇ライブラリの中で、今のところ最もかっこいいと思っている映画。オープニングでタイトルがばあんと出る際に、葦原からがばっと起きあがるミッキーからして素敵。藩政を変えるためにと老中を殺し逃亡中の浪人と、藩からの命を受けて掟破りの砂金の採掘をつづける侍とその妻が、滅私奉公の末に裏切られる姿を通して、忠義の意味を考えさせられる作品であります。 
 ミッキーは逃亡浪人の役で、彼を仇として追ってきた老中派の一党たちとわたりあいつつも正々堂々とは戦おうとしない。ちゃんばらシーンで藁束は飛ぶし、皆転げて逃げ惑うし、めためた。ミッキーは名せりふ「これで武士らしく死ねるかッ、これでは屠殺だ、虐殺だ」を残して猛ダッシュをかけて逃げるが、その逃げっぷりがまた見事。カメラワークのことはさっぱりわからんちんだが、気持ち早まわしになっているのかしら、逃げるミッキーの「目」に映る追手や風景の映像が、飛ぶように後ろに流れてゆくシーンが好き。型の決まった殺陣も嫌いじゃないけど、ばたばたしていて主人公がどこにいるのかすら分からない殺陣はリアルで、わくわくするう。かっこいいぞ、コノヤロウ。
 志麻姐さん、加藤GO、青大将田中、黄門東野等々、画面に映える人々が出て、これまたいい感じ。五社監督万歳。

『大殺陣』   1964年  監督:工藤栄一
 殺陣で大爆笑した一品。内容はシリアスなんだけど、クライマックス20分に及ぶ殺陣が逃げ惑う庶民も入れたら総勢200人近くはいるのじゃないか、とにかく大規模で、皆ふらふらになってゆくのがモーレツに可笑しい(不謹慎)。次期将軍の座を狙い二派が対立を深めるなか、思いがけず内ゲバ粛清騒ぎ(?)に巻き込まれた里見浩太朗演ずるノンポリ侍が、次第に革命側に共鳴し、敵対する一派の推すおカタの大名行列切り込んでゆくという話。
 切り込まれたおカタ、堤防を行列中のターゲットのお殿様は、駕籠からでることなくだあっと土手を下られ、川の中を右往左往、とうとう川にはまって駕籠が横転したところで「なにごとっ」と出てくるのだけど、そのころには屋根ははがれてぼんぼろになって、何事どころの話じゃない。そのあとはお付きのものに守られて逃げて逃げて逃げて。一方切り込み隊のおヒトリ河原崎長一郎は川の中でめためたに斬られ「ぼくドザえもん」に。みんな次々斬られてしまって、ねばったコータローもざくざくに斬られて砂まみれで絶命。最後は誰もが槍や刀を支えにようやく立っている感じで、吉本新喜劇の寛平じいさんになっていた。
 結局逃げまくったお殿様は傍観を決めていたミッキーに斬られて死んでしまう。その武士らしくない、前のめりで片足をカタカナの「レ」にして斃れた姿に乾杯。
 ミッキーの役はおいしい。なんか、いいヒトも悪いヒトも死ぬときゃ死ぬっていう作りがこの時代あったのか。逆に今の時代劇の方が勧善懲悪色が強い気がする。あ、テレビだからか!耳をすますと「安保反対」の声が入っているらしいです。うっすら聞こえた気が…。ミッキーとコータローが布団を並べて寝る場面はちょっとどきっとしました。こういう映画、好き。ちゃんとした名場面、もっといっぱいありますよ。でもこの乱闘場面が一番好き。監督はこの場面を撮るために映画を作ったんだなあ。

『樅の木は残った』   1971年  NHK大河ドラマ総集編
 「しまった、原作を読んでから見りゃよかった」作品。原作をよく知らないうえに、総集編で短くされていて話が分かったような分からないようなでやや消化不良。しかし最後は不覚にも涙。
 伊達家の御家騒動のお話。歌舞伎や芝居では悪人の原田甲斐を主人公に据えて、実は藩を救うために敢えて罪をかぶったというお話で報われない忠臣蔵みたい。岡田英次ファン(←注:このころはまだ「軽い」ファンであったのでミッキー編に入ってます)なので、ミッキーにつられて借りたものの、老中役のそちらに気がいった。
 栗原小巻って若いころは藤原紀香そっくりだわ。きれい。しかし、ミッキーのうっすら白塗りは妙になまめかしいのう。当時37歳の彼の、若衆姿はかなりきびしかったが、老け役はまったく違和感なし。今の俳優さんとは逆だわな。

『三匹の侍』   1964年  監督:五社英雄
 「霊界丹波はかっこよかった」ことを教えられた作品。トシを重ねるとよくも悪くもアクがぬけてしまうものなのね。これは丹波さんに限ったことではないけれど。テレビでも人気の作品だったようですね。
 映画は風来坊の浪人がたまたまとおりかかった村民の危機を救うべく独りで立ち向かってゆくが、当初は悪代官側に雇われていた2人も心動かされて仲間に加わる、というお話。時代劇でいうところのいわゆる「先生」役(用心棒ですな)のミッキーが女郎を押したおす場面より、代官側に捕まり拷問を受ける丹波さんを物陰からみつめる場面のほうが熱っぽく色っぽいと思うのは私だけではあるまい。
 あとどうでもよいがミッキーはちょいと村野武範に似てると思った。上唇と額のホクロのせいか?上唇はおっぱいを吸うあかちゃんのクチビルだ。ちょっと永ちゃんも入ってる。

『天保水滸伝 大原幽学』   1976年  監督:山本薩夫
時代劇初「青春熱血農協金八赤ひげ任侠千昌夫歌謡ショー」映画。ホントだってば。世界初の組合、農協の前身を作った男ミッキーは、弱きを助け強きを挫く。ぐれかけた農民とは相撲をとって心を通わせる。なんか、なんていうのかな、気持ちは分かるがビミョーな作り。きっと農協が券をさばいて、農家の人たちが見にいったんだろうなあ。合掌。しかしミッキーはたいそう楽しそうに演技をしているぞ。そういう役なんだけどね。

『天城越え』   1983年  監督:三村晴彦
ミッキーは小さい印刷会社の経営者、少年時代に殺人を犯した(時効成立)過去を持つという役どころ。そんな彼を探し出して心理的においつめる刑事が渡瀬恒彦。ワタクシとしては、逆のキャスティングのほうが面白かったのかな、なんて思ったです。中小企業の社長さんにしては品がありすぎるというのか、物腰がやわらかすぎるというのか。医者とか学者役タイプのヒトと思われる。刑事役はしたことあるのかな、まだ見たことないけど、そっちのほうが興味ありますな。特に渡瀬さんがやった刑事はやや暴力的なので、紳士(?)ミッキーだったらどう演技したのかなあとつくづく思います。原作は松本清張。


ええっ、ミッキーの映画はこれしか見てなかったっけ?ああ、この後に『白い巨塔』を見て、エイジ人生が始まったのだな。


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