ね、君が行きたいところへ行こうよ

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第九話 すべては自分が招き入れたこと



「なぁに?」


「うん。

さっき森に行ったら、馬さんがすごく怒ってるの。
でね、周りのみんなに鹿さんの悪口を言い回ってるの。」

「どうして怒ってたの?」


「なんだかね。

鹿さんが、馬さんのそばでずっとずっとうるさくしてて、

馬さんは、ご飯が食べられなかったんだって。」


「うるさく?」


「うん。何か新しい走り方を発見したとかで。

それが、鹿さんの仲間たちの間で大流行なんだって。
で、それを森の色々な仲間たちに広めようってことで、鹿さんの妹が馬さんに話を聞いて欲しいって言ってきたのが始まりみたい。」


「そうなんだ。

でも、それじゃ、馬さんは話を聞くことにまず承諾してたんじゃなかったの?」

「うん。

そんなに話が長くなるとは思わなかったみたい。」


「そうか。

まぁ、あんまり自分勝手な話を長々されると嫌だよね。」


「そうなんだけどね。

なんだか、周りのみんなに鹿さんの悪口を言い回ってる馬さんを見てると・・・

なんていうのかなぁ。

すごく嫌な気持ちになったの。」


「そうだね。

誰かの悪口は、聞いてて嬉しいものじゃないしね。


特に、怒りに任せての悪口は、

パワーが大きい分、周りにまき散らすマイナスのパワーも大きい。」



「うん。

そうなのかもね。」



「それにね、きっとコトリさんは気づいたんじゃない?」

「え?何を?」


「馬さんが怒ってるのは、自分が招き入れた原因に対する結果なんだよね。

『話を聞く』と、まず承諾したのは他ならない馬さんなんだから。」


「そっかぁ。そうだよね。」



「そう。

確かに鹿さんは自分勝手な話の仕方をしたかもしれない。
でも、それを招き入れたきっかけをつくったのは、他ならぬ馬さんなんだから。

そこを忘れちゃ、なんとなくかっこ悪く見えても当然かもしれないね。」



「うん。そうなの。


私だったら、反省すると思う。

自分が招き入れてしまったことで、結局みんな嫌な思いをしたって思う。


誰のことも憎みたくないし、嫌いたくないもの。

相手をそんなふうにしたのは、その相手が自分だったからって考える。


だって、、

鹿さんの妹が話しを聞いてって言ってきたとき、

ちゃんと断ればよかったんだし。

もっと始めに、自分にその気がないことを伝えることはできなかったのか・・・って。


きっと、私なら反省しちゃう。

自分の責任だって。」




「そうだろうね。

みんな、それぞれだから。

コトリさんのような考え方もあるよね。



でも、馬さんのような生き方もある。」



「うん。

馬さんを否定しちゃいけないって思う。


ただ、私とは合わないんだなって。

なんだか、しみじみ再確認しちゃったの。」



「それでいいんじゃないかな。

ボクは、いつだってコトリさんの味方だし。



馬さんにも、馬さんの味方がいる。



それは、とても大事なことだからね。」





「うん。

ありがとう。」





「同じ気持ちや、価値観を共有できること。

それは、何よりも暖かいことかもしれないね。


ボクはいつでもコトリさんの味方だから。

たとえ、誰かがコトリさんを間違ってるって言っても。



コトリさんが、ボクの正解だからね。」









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