あめつちたゐに

永井荷風とまではいきませんが

朝食の時、夫が「今日から」と言った。子どもたちも私も一斉に夫の顔を見つめると、夫は「今日から12月だよ」と言ってテレビの横に置いてある電波時計を見遣った。私もそちらを見ると、確かにデジタル時計に「12月1日」とでかでかとした字が鎮座ましましていた。子どもたちは「もう12月〜？早いね〜」と驚いていた。昨日が11月最後だと言って床に入ったのだから、今日が12月なのは当たり前なのだ　が、私も新しい発見をしたかのような心持ちだった。　師走、早いね。早すぎだね。ということは引っ越ししておよそひと月たったのだ。それなのに段ボールパレス。親も配偶者も転勤族。自分自身も働いているときは転居を伴う転勤があった。ゆえに手慣れていると思っていたのに。今回はなかなかはかどらない。残り10箱を目の前にして本棚に本やプリントがあふれている。押し入れももうこれ以上入りそうもない。前の住まいよりも少し広いのに。売るか捨てるか選択を迫られる。記憶は軽々と捨て去って生きているのに（今日が何日なのかも覚束ない朝があるように）、本や紙、文字の書いてあるものに執着してしまう。さりとて繰り返し見るわけではない紙類といよよ対峙し、今こそ訣別しなくてはならない。理想はいらないものは全て捨てるだけれども、やはり決断を先延ばしにしてしまう。永井荷風や中崎タツヤさんのように生きられなくとも、少しは暮らしやすいように身軽になろうじゃないか。　と決心した途端、黄砂がひどい。車は真っ白、咳と鼻閉。やる気というものはこんなにも早くしぼんでしまうのかしらん、と鼻をすすっていたら、あっという間に今日もカーナビで子どもの習い事の周りに点々をつけるお仕事に勤しむ時間となってしまった。日々の積み重ねはすごい。決まった道しか通らないから、特定の道だけ点ではなくもはや線になっている。数学の授業で点の集合が線であると教わったが、今ならよく分かる。点が線になるようなこと、この年からできるかな。明日やろうはなんとやらなので、今年中にはなんとか家だけでも整えてしまいたいと考えている。　今日見たい動画。先日、レーベルとの契約が終了したジェニーハイ。才能にあふれた人でもこういう気持ちになるのかなというちょっとした安堵と、それを凌駕する楽曲の素晴らしさ。これからもこの音楽が末永く続くように陰徳を積もう。ジェニーハイ「ランデブーに逃避行」https://youtu.be/PycRXQtJU0s?si=2vXifeZqdXb3uDFD