その７
テーブルの上で鳴りつづける携帯。
着信画面なんて見なくたって判る・・剛や・・・
なぁ・・剛・・・・
もうええよ、ほっといたってや・・出たらまたオマエに甘えてしまうやん
辛抱強く呼出しを続けてると、
「もう、終わりや・・・終わりにしよ・・なぁ・・・」
突然繋がった携帯に驚き、掛ける言葉も出ないうちに一方的に切れる。
「えっ、なっなん・・・
なに！終わりやて？なんやん、もう一度ゆうたんかい！
終わりやて、終わりになんてさせへんで、
なっ、光一終わりになんて絶対させへんで」
切れた携帯に向かってすごい剣幕で捲し立ててると、タイミング良く呼び出し音が鳴る。
それは、一昨日光一の居所を尋ねたTOKIOの城島からだった。
「もしもし・・」
「あっ、剛、おはようさん。城島やけど、起こしてもうたか？この前電話貰ったやん、
あれからちょっと仕事で時間取れなくてな、こんな時間になってもうたけど、光一どう したかと思ってな。」
「茂君、すんません、お手数かけまして。あの・・・」
「ん、どないした？光一・・なんかあったんか？」
「あの・・茂君、仕事は・・」
「いや～今さっき終わったトコや、この年になると徹夜はしんどいわ。」
「すんません、あの・・・ちょっと、お願い聞いてもらっていいですか？」
「おお、いいで。ゆうてみ」
さっきから何処となく歯切れの悪い剛の物言いに何かしらの不安を感じ取る。
「あの・・光一・・具合悪いみたいなんですけど、ちょっと様子見たってもらえますか？」
「えっ・・具合悪いて？剛はいかへんのか？相方やん？」
「・・・いや・・ちょっと・・申し訳ないんですけどカギ渡しますんで宜しくお願します。」
「何があったんか知らんけど、寄ってみるわ。剛、今どこにおるん？」
「あの、光一のマンションの前なんですけど、分かります？・・・・ じゃ、待ってますんで、お願いします。」
「おぉ、わかった、今行くわ。じゃ」
「すんません、茂君。こんなん頼んでもうて・・」
暫くして剛の待つマンションの前に着いた城島に謝ると、握り締めた鍵を渡して頭を下げる。
「ん、まかしとき。行って来るわ。・・あっ・・剛はどうする？ココで待っとくか？」
問いかけに、
「家に帰っときますわ。なんかあったら電話もらえます？」
と、もう一度頭を下げて車を出す。
「まっ、何があったかよう知らんけど、病人ほっとくわけにもいかんわな」
一人呟き、預かった鍵を見やるとマンションの中へと入って行く。
ドアの前まで来ると、まずはチャイムを鳴らしてみる。
仕事は一緒にする事もあるが、初めて行く他人の家。相手には聞こえちゃいないが 一応礼儀として、２，３度鳴らす。
ドアはよそよそしい雰囲気を漂わせている。
「剛に頼まれたんかんなぁ、お邪魔させてもろうたるで。」
鍵を差し込み、ドアを開ける。
「光一おらんのか？城島やけど、上がらせてもらうわ。」
闇に包まれた部屋に小さく声を掛けると、リビングらしき部屋へと向かう。
朝の６時。少しずつ空も明るくなって来てるというのに、遮光カーテンを引いた部屋は闇の中。
ようやく暗さにも目が慣れてくると、ソファの上に丸くなってる人影が見える。
「光一？？」
キレイに片付けられた部屋、多少足元が見えなくても物にぶつかったり踏んだりすることは無い。
傍まで来ると、ひどく苦しそうな呼吸が聞こえる。
「そうや、具合悪いってゆうてたな。光一、光一、大丈夫か？」
起こすのは忍びないと思いながら声を掛ける。
「・・ん・つよ・・し・・？」
「光一？城島やで、な、ベッド行こか？こんなんトコいてもようならんて」
光一には悪いがリビングの電気を点け、いくつかあるドアを開けて寝室を確かめると連れて行く。
抱えあげた光一の躯は熱く、そして軽い。
ベッドに寝かしつけるとリビングに戻り、さっき鍵と一緒に渡された薬と水を持って光一の元へと戻る。
ホンマは何か食べてからのがいいんやけどな・・まっしゃぁないか・・
「剛か？なんやむっちゃ具合悪いで。薬飲ましたんやけど、仕事あかんのとちゃうか？」
「あっ・・いや、アイツの事だから休むっちゅう事はせえへんと思うんですけども・・。 マネージャーが来るまで見たっといてくれませんか？」
「いや、それはかまわんけど・・」
「すんません、そろそろ出ないとアカン時間なんで、よろしくたのんます。」
剛がオレに光一の事頼むなんて・・おかしいで。光一は光一で・・・ すっかり細うなってもうて・・・
その日は二人別の場所での仕事だったが・・
一方は相方のボロボロになってる様子が気になり、
もう一方は動かない躯に高熱の為ぼんやりとしたまま一日が過ぎた。
次の日はラジオの収録
フラフラな躯で無理を承知でやってきた光一は、キャップを目深に被り、 俯いているのでその表情は見えないが、 わずかに見える口元は熱の為赤くぽってりとしている
「おはようさん。大丈夫なんか？無理せえへんかていいんやで。 ラジオくらい一人でやったるし・・」
殆ど喋らずというか、声の出ない光一を前に置いて収録は終わった。
「なっ、ファンの子も心配するねん、はよ治せや、なっ」
肩を一つ叩くと剛はブースを出ていった。
ひとり残されたスタジオ。
相方の居なくなったブース。
今のオレには似合いやな・・・
こんなオレじゃな・・・
いつもは前向きな思考が方向を変え闇の淵へと落ちて行く・・・。
すいません、続きます（汗）
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