※あなたの大切な人は 誰ですか? こちらはお気楽極楽発信所※

第1話


家に帰ると見知らぬおっきい靴が玄関に転がっていた。
「誰?」
なんとなくはわかっていたが、悪夢を見る以上に
想像するのも嫌な気分。
「お帰りぃ♪最近遅いんだねー」
私のスリッパを履き、私のターバンをして
私のお気に入りのスプーンを使って、
ミントゼリーを食べて満面の笑みをうかべているバカがいた。

元彼のクロ。苦労が多そうだから、昔、クロと名づけた。(--;
疲れがどっとでる。なんでそんなのがここにいるのよっ!!
そして体の中で、アドレナリンがふつふつと・・・
極めつけにもうひとつ。
そのゼリーは、帰ってきたら食べようと、大事に大事に
楽しみにとってあった最後の一個だったということも
付け加えてみよう。

これで火の付かないわけがない。

にこやかな怒り笑顔で、静かに告げる。
「警察呼ぶから、ちょっと待っててね♪クロ」

「ちょっと待った!だって鍵変えてなかったんだモー」
ええ、確かに別れた後、
合鍵を返せなんて私のプライドが許さない、
でもその前にそんなモノ普通捨てるでしょ??

ふわふわのクセ毛が、扇風機の風で揺れている。
あいかわらず容姿は変わらなく、ぶかぶかが心地良い
私の綿セーターもそつなく着こなしていた。

そして
嫌いになってわかれたわけじゃないのは、
きっともう気付かれていると思われる。

ある理由で別れなくてはいけなかった。
天秤をかけたとか、ただ飽きたからとかそんな
簡単な理由ではなかった。
それは今、口にしても時効なことくらいわかってる。

「何しに来たの?」散らかったクッションを片付けながら
赤い顔を悟られないように、ますます言葉にトゲをつけよう。
「今、アルバイトしてるんだ。」
「それとどういう関係があるのよっ?!」
シロはぽりりと頭をかきながら、真剣モードに入った。
「一泊2食男付き」
「はあ?あんた、風の噂でアメリカへ行ったって聞いてたけど
あっちはそういうジョークが流行ってるのね?」
「違うヨー!カナダだよカナダ」
最後の一匙を口にいれながら、おお真面目に否定。
「・・・・・・・・・・・。いらない、私間に合ってるから」
ゼリーの匂いで余計に腹が立つ。
もう私のテリトリーに入ってこないで。
あの時の私の決心は一体なんだったの?

「嘘つき!全然匂いがしないよっ!?
 1週間だけでいいから、雇ってくれないかな?」
「・・・・・・・・・。」
「今回は無料ってことで・・・」
じっとクロの目を見る。奴もこちらを見てる。
クロの大きい瞳は昔から苦手だった、だってなんでも
見透かされそうな感じなんだもの。

クロは言い出したらきかない
私は百も承知している。
仕方ない、そのうち飽きて出ていくだろう。

「無料なのよね?わかった・・・・。
でも私の生活をぶち壊すような真似はやめてよね、
じゃ1週間、2食とか言うくらいだからしっかり働きなさいよ!」

「ははー、当たり前でしょ♪」

なんとも腐れ縁。ああ、あの日で私達の関係は
終わったと思ったのに。

泣き虫弱虫、頑固者のクロが、何を思ったのか
性格をちょっと変えてひょっこり現れた。
カナダで流行り病にでもかかったのかしらん?



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